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月魔の外見は一言で言うとゴーストみたいなイメージです。表現が難しかったので前書きで説明させて頂きました。
この世界には3つの大陸がある、その中でも最も大きい大陸をグラン大陸と言った。
そしてグラン大陸の中でもサン帝国は他を圧倒するほどの力を有していた。
200年前に突如現れた月魔と呼ばれた異形の魔物達はすぐさま人類の敵と認識され今日まで数多くの歴戦が行われてきた、そして月魔を討伐する組織を人類は結成した。その中の一つがブレイカー協会と呼ばれる組織である。
この組織は各、国の資金援助を元にしている為、月魔を討伐する組織としては一番、規模が大きく、実績もあった。
ブレイカー協会には実績によりランクがあり、それによって強さのパロメーターとしていた。
そしてブレイカー協会において最も最高位であるランク、第一位部隊の隊長に就いているのがヒュウガ マサムネであった。
第一位部隊の隊長はすべての部隊に命令する権限を持っており、総長と呼ばれていた。
ブレイカー協会、会議室
「ヒュウガ総長、今回、あなたの部隊は大部分の人が亡くなりました、申し開きがあれば効きましょう!」
そう答えたのはブレイカー協会の中にある組織の一つで真偽官と呼ばれる役職の男、マート
このマートも貴族出身であり、ヨーダの手が掛かった者であった。
「今回、今までの月魔達とは違い、強敵でした、数もさることながら、意志を持って、連携攻撃などを仕掛けてきました、多勢に無勢と言う所もありますが、あまりにも、奇襲攻撃が多すぎました、その為、大半が一気にやられてしまいました」
ヒュウガは何を言っても駄目だろうな、と諦めつつも、説明をした。
「そうですか、とりあえず、細かい概要はわかりました、あとは追って連絡します」
真偽官とのやり取りを終えたヒュウガはブレイカー協会をあとにした。
サン帝国 南西部にある工業都市 イーラ
その都市はありとあらゆる産業が盛んで大規模な工場が建てられていた。
そんな都市の居住区にヨーダ隊長の自宅はあった。
正式な名はヨーダ ヒロ ブロード キューレ
金髪の髪に狐のような顔、スラッとした体系で背も高い。
端から見ればモテる部類に入るだろう、そして中年と言われる年齢なのに、そうは感じさせない外見でもあった。
「ふうー、で、今回は大丈夫何だろうな?、あまりにも、見え見えだと足がついてバレる、それでは意味がない」
「今回は問題ないかと、真偽官に多少、多めに積み増したので、結構、金にうるさい真偽官だったので苦労しましたが」
呆れたような顔で言ったのは、ヨーダに幼少期から付き従っている従者である。
この従者もヨーダがあの手この手で策謀する様を見てきて、呆れを通り過ぎて情けなさをヨーダに対して持っていた。
それもそのはず、ヨーダが細かい作戦を指示したり、行動したりする事は一切ない、全部、従者にまる投げ、失敗すれば叱責の嵐、だが従者が今の仕事を辞めないのは、単純にお金がいいのだ。
このヨーダ家にはとにかくお金がある、なのでなかなか辞められないのだ。
「まあ、真偽官に結構な金を積ませれば問題ないだろう!、今回はだいぶ死人が出てるし、その事で叩けるだろう!」
ヨーダは野心、そしてその強い上昇志向で、何でもトップでなければ気がすまないのだ。
今までヨーダはその莫大な資金力でありとあらゆる物を手に入れてきた、自身が欲してきた物はすべて手に入れてきた、だがブレイカー協会の総長と言う立場だけはお金の力だけでは手に入れられなかった。
そもそも総長になるにはどうすればなれるのかと言うと、
まず、総長が死亡
そして、総長自らが辞する意志を表明した場合
このどちらかがあった場合、全隊長、全部隊員、協会関係者、すべての投票で七割を獲得した場合のみ、晴れて総長となれる。
ヨーダは現在、第四位部隊の隊長である、総長に立候補できるのは隊長以上か、それと同等の役職を持つ者のみ。
だからヨーダは現総長のヒュウガをあの手この手で辞めさせようと必死なのである。
「最悪、闇灰を使うか!」
「ヨーダ様、それはあまりにも、、、」
従者はその言葉を聞いて戦慄を感じた、闇灰
それは裏の人間からすれば誰もが知っている組織の名だ。
「ですが、ヨーダ様、闇灰に依頼すれば資産の大半を失う事になりますが、よろしいのですか?」
「まあ、あくまでも最後の手段だ、私とて、資産が無くなるのは痛いしな、まずはその金を積んだ真偽官の手腕次第だな」
サン帝国の中心部にある都市、サンサーラ
その中に、ブレイカー協会の本部はあった。
そしてブレイカー協会の本部から少し離れた場所にヒュウガの自宅があった。
およそ総長と言う立場の者が住むとは思えないほどのみすぼらしい外観の平屋がポツンと佇んでいた。
ヒュウガは自宅に戻ると、ソファーに座りながら、タバコに火を付けた。
「ふうー、協会の中じゃあ、吸えないから苦労するな」
そう呟くとヒュウガは周りにある物を見た。
実を言うとこの家には家具と呼べる物はソファーと平テーブルしか無い、客をもてなす気も無ければ、自身が寝るのもソファー、だが風呂とトイレは付いている。
ハッキリ言うとこの男、生活感が全然無いのだ。
「相変わらず、何も無い所ね!、それにホコリがたまってるわよ」
そう声をかけてきたのは、第三位部隊の隊長をしている、エリィ アラガネ
真っ赤なロングストレートな髪、線が整った綺麗な顔筋、出る所は出ている肉感的なボディー、非の打ち所がない美人だ。
「エリィか、ここに来るなんて珍しいね!、君に会うのも久し振りだね!」
「なにが、久し振り!、よ、あなた総長のクセに全然、本部にいないじゃない、どこで、何してるか、よくわからないし」
エリィは呆れながらも久し振りにヒュウガと話しをしている事に心が弾んでいた。
エリィがヒュウガと会うのは一年振りなのだ。
「エリィが直接来たって事は、何か報告があるのかな?」
「ヒュウガ、気をつけなさい、今、協会全体があなたを辞めさせようと動いているわ、この一年、あなたが不在だった間に、ヨーダが足場を色々と固める為に、お金をバラまいたみたいね!」
げんなりした表情をしながらヒュウガは言葉を発した。
「まあ、いつ辞めてもいいんだけどね!、というか今すぐ辞めたいわ!」
「そういう訳にはいかないでしょう、その変はあなたもわかっているでしょう!、まあ、そういう事だから、一応、伝えたわよ!、じゃあね!」
そう言うとエリィはそそくさと帰って行った。
エリィがいなくなったのを確認して、またタバコに火を付けた。
「ふうー、どうしたもんかね!」
タバコの煙で充満している部屋の中で、ヒュウガの眼孔は鋭くなっていくのであった。