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「さあ、聖気とはこのようにイメージを具体的に持つようにするのだよ。」
そう父は教えてくれた。
あれはまだ8歳の時だったか、父は聖騎士の上位、聖術剣聖という片手しかいない称号を持っていた。
いわゆる才能の塊だったそうで戦闘も強く、国民の憧れの存在であったが当時の隣国のアルバスに一兵団を率いて支援に向かったそうだ。
しかし父達は現れることはなくアルバスの近くの森で父の剣が折れて発見された。
周りには兵団達の遺体もあり
かろうじで息をしていた兵士に何が起きたのかをかくにしたが、闇が襲ってきたと言い残し息絶えた。
僕は父が剣を折られて消えるなんて信じられなかった。
みなは、闇に呑み込まれたのだなど言うが
あの強い父が負けるとは思いたくなかった。
父しか知らない術を僕にいくつか教えてくれた。
「術を得るには、冷静さと本質を理解することだ。」
小さい頃からそう教えられてきた僕は、本をたくさん読んだ。言葉の意味にはたくさんの解釈があり、イメージする時に知っているのと知らないとでは成功率が違う。
僕はあまり剣術が得意ではなかったが術は周りよりは、習得していった。
ただ、僕には隠さないといけないことがある。
魔力を使えるのだ。
当然に父も使えたので魔力が煙たがられているなんて思いもしなかった。
父は聖気と魔力をミックスして使っていたが誰にもバレずに闘っていたを今になってめちゃくちゃな人だったんだなあと思う。
そして僕も父に教えられてきた術はミックスなわけで
困っている。
明日は術披露のイベントがあるのだが、人が大勢いる前でしなければならない。
詠唱中に視線が集まるので誰も知らない術を唱えようものなら問い詰められる。
兵団入隊試験の時は、剣に聖気を纏わせ剣と聖気の時間差攻撃をみせ模擬戦を乗り切った。
しかし、今回は聖気のみ詠唱の披露だ。
聖気のみはできるはずがない。
どうしたものか。
そう考えていると。
「あの~その本ってもう読まれましたか?。」
可愛いらしい声に僕はハッと我にかえる。
「あっ、はい!この本は今から返却しようかと。」
声が上ずってしまった。
恥ずかしい····
「そうでしたか、なら私がお借りしたいので一緒にカウンターまでいいでしょうか?」
こんな可愛いらしい女の子が闇の声なんて本を読むのか。
「今、こんな本を読む変人って思いましたね」
しまった!声にでてたか。
「違うんです!あなたみたいな可愛いらしい人が悪魔の本を読むなんてと思っただけです!」
「あんまり意味違わないですよ、それに私が可愛いなんて……」
しまった。軽いと思われてしまったか。
確かに慌てたとはいえ、いきなり容姿について言うのは
良くない。謝ろう。
「申し訳」
「私は!」
彼女の声と被ってしまいちょっと気まずい。
「私は、悪魔がいるのは人間のせいでもあると思っています。」
次に彼女から出た言葉は考えさせられるものだった。
「悪魔は何故生まれたと思います?」
「そうですね、僕の考えは人間よりも先に悪魔が存在していたと考えています。」
そう思っている。本には術師が悪魔のようにいわれていて
そのあとに、悪魔の国ができたと書いてあるがそうではない気がするのだ。
「なるほどです。確かにその考え面白いと思います。」
彼女は真剣な顔で、
「悪魔が生まれた理由、それは聖気です。」
そう言い切った。
「聖気!?まさか、」
思わずそんな言葉がでてしまう。
「あっ今こいつバカとか思いましたね。」
ほっぺたを膨らませながら言う。
「違うよ!?そんなこと思ってないよ!」
必死に弁解する。
キーンコーン。
閉館の時間をつげるチャイムが鳴る。
「いいところなのに閉館ですね」
残念そうな彼女。
「あの!良かったら今日お話の続きをしませんか?」