俺、バイトがあったけど、勇者に会えた
今、町はお祭りのように騒がしくなっている。
なんでも、魔王討伐のために旅をする勇者様達がこの国にやって来たらしい。
今回の勇者達は全員で30人近く喚ばれ、何グループかに別れて旅をしているそうだ。
勇者を一目見たいけど今日はギルドのバイトだ。
勇者達ってどんな人たちなんだろう?見てみたかったな。
「すいません。この依頼を受けたいのですが。」
「…あっ、かしこまりました。」
黒髪、黒目の4人組もしかして。
「あっ、ついでに来る途中に倒したモンスターの素材の換金もお願いできますか?」
「大丈夫ですよ。ではギルドカードを預かりますね。」
やっぱり勇者だ!
すごい。全員S級冒険者だ。
依頼の受付履歴数も、モンスターの討伐数も、こんな凄い数字は見たことがない。
今から受ける依頼も先伸ばしにしたら危険になるものだ。正直に言ってこれはありがたい。
この町にいる冒険者でこれを達成するとなるとギルドマスターが認めた者だけで行って、3日はかかる依頼だ。
「優秀な方がこの町を訪れてくれるなんて、なんとお礼をしたらいいか。ありがとうございます。」
「いっ、いえ、当然のことをしてるだけですよ!
こんな素晴らしい町の平和のためなら僕たちは力を貸します!」
いい人だな。きっとこんな人が主人公になるんだろうな。さっきから後ろの2人の女の子が睨んでくるし、圧力が…。
もう1人の男の勇者に関しては受付嬢のスカート見すぎだよ。男同士は友達っぽいけど、女の子2人はどう見ても、片方は好きだけどもう片方は眼中にない。って感じだな。モテないのはしょうがないけど、他の女の子のスカートをガン見すんなよ。
「ねぇねぇ、受付嬢ちゃん!名前は何て言うの?今度一緒に温泉行かない?」
「おい、下心。今すぐ土下座して謝らないと友達ではなく勇者としてお前を粛清するぞ。」
「ちょっ、待てよ正義!冗談だから!冗談だからその剣をしまってくれ!土下座するから!」
「そうか、じゃあ勇者ではなく友達としてお前を粛清しよう。 すいません、受付嬢さん、こんなところで騒いでしまって。」
「いえ、えっと、頑張ってくださいね!」
すごい。かなりのスピードで首に手刀で一撃を入れてノックダウンさせ、意識のない友達の体を引きずって帰っていく。
これが勇者か。
それにしても、正義に下心か。
確か喚ばれた勇者の2群にいる人たちの名前だった気がする。あの2人の女の子の名前は確か、亜純と佳奈だったか。剣士、格闘家、僧侶、魔法使いのバランスのとれたパーティー。
いったいどんなチートを持ってるんだろうな。
「ミリーさん!なんか勇者にナンパされてたって聞いたんですけど!大丈夫でしたか!」
「はい、大丈夫でしたよ、アルフェルさん。お気遣いありがとうございます。」
「ミ、ミリーさんは勇者様みたいな人がタイプですか?」
「そうですね、どちらかといえば好感がもてる方ですね。片方はともかく、もう片方は素晴らしい方だと思いますよ。」
とは言っても僕はホモでもゲイでもない。
あくまでも友達になるなら正義さんの方ってだけだ。
「そうですか。」
「もちろん、アルフェルさんみたいに一生懸命な人も好きですよ、ただ頑張り過ぎて怪我はしないでくださいね。」
「えっ!は、はい!ありがとうございます!
今日は調子がいいので依頼を受けて来ます!」
「気をつけてくださいね。」




