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潮風の歌
最終話です。短いです。
打ち寄せる波音に耳を澄ませる君に、いったい私は何を言えばいいのだろう。
頼りない月の光の下で、深い闇色をした海と、色彩を失った彼女。そして私。誰かの落としていったビー玉は不満そうに波に揺られている。
だけど本当は、何も言う必要はないのだ。
私は目を閉じた。
あなたにも聞こえるだろうか。
この、潮風の歌が。
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設楽 岬様
素敵な便りをありがとう。私も海のみえる街にやって来ました。
あの頃は本当に楽しかったです。またあなたに会いたいな。話したいことがたくさんあります。
――次に会うときは、二人でまたサイダーを飲みましょう。
久賀 夏海より。
最後まで読んでくださりありがとうございます。