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第21話:予選

 翌朝。


 わたくしたちは予選会場の闘技場へやってまいりました。


 いくつかのグループに分かれて試合を行うのでしょう。4本の支柱に囲まれたリングがそこらじゅうに設けられております。


「うわぁっ、めっちゃ賑わってるっすね! これ全部選手っすか!?」


「みなさんとても強そうですし……わたくし、わくわくしてきましたわ!」


 この会場のどこかに未来の結婚相手がいるかもしれないと思うと、胸の高鳴りが止まりません。


 あぁっ、早く婚活したいですわっ!


「ふたりともすごく元気ね。私なんて昨日は緊張であまり眠れなかったのに……」


 スウスさんはため息まじりにそう言って、あくびをもらします。


「だいじょうぶっす! 試合が始まれば嫌でも集中できるっすよ!」


「そうね。励ましてくれてありがと。私、頑張るわ!」


「その意気っす!」


 シエルさんのテンションは最高潮に達しております。わたくしと同じく、早く戦いたくて仕方がないといったご様子です。


 そのときでした。



『ご静粛に願います!』



 魔法で声を大きくしているのでしょう。闘技場に運営さんのものと思しき声が響き渡ったのです。


 賑々しかった会場が、しんと静まりかえります。


『本日は御前試合にお集まりいただき、まことにありがとうございます! 4大会連続で高次元な試合が行われたのが原因でしょうか? 今回の参加者は392名と、前回に比べて50名ほど少なくなっておりますが、それだけに今回出場された方々はかなりの実力者だとお見受けできます!』


 4大会連続でハイレベルな戦いが行われたのですね。


 強者を求める身としては、その大会に参加したかった気持ちはありますが……運営さんのおっしゃる通り、この場に集まった選手は腕に自信のある方ばかりなのでしょう。


 この会場に未来の結婚相手がいると信じ、全力で婚活に取り組みましょう!


『さっそくではございますが、簡単なルール説明を行わせていただきます!』


 ルールは至ってシンプルでした。


 8人1ブロックに分かれてトーナメント戦を行い、各ブロックを1位で通過した選手が明日行われる2次予選に参加できるのです。


「選手は全部で392人だから、ええと……49ブロックあるってことっすよね?」


「つまり2次予選に進出できるのは49人ってことね」


「それだけの人数が通過できるなら、今日のところはなんとかなりそうっすね」


「問題は、そのブロックにフェリシアさんやアルザスみたいな強者がいるかどうかだけどね」


「どうせ勝ち進めばいつかは戦うことになるんす! 強者と戦うのは勉強になるっすからね! むしろ強者揃いのブロックに参加したいくらいっすよ!」


「わたくしもシエルさんと同じ気持ちですわ」


「ふたりともすごいわね……」


 などと会話をしている間にも、ルール説明は続きます。


『選手がリングに上がりましたら、支柱から特殊な結界が張られますので、死に至ることはありません! 降参するか失神したら試合終了となります! 以上でルール説明を終了とさせていただきます! さて、それではおひとりずつ番号札を引きに来てください!』


 あっという間にルール説明が終わり、わたくしたちは番号札を引きに向かいます。


 そして小一時間ほどで、全員が番号札を引き終わりました。


『1~8番の方は1ブロックへ! 9~16番の方は2ブロックへ! 17~24番の方は3ブロックへ――』


 運営さんの案内に従い、選手の方々は指定されたブロックのリングへと向かいます。


「あたしは35番だから5ブロックっすね!」


「わたくしは2番でしたので、1ブロックですわね」


「私は40ブロックね。フェリシアさんと同じブロックじゃなくて安心したわ。まあ、明日フェリシアさんと戦うことになるかもしれないんだけどね」


「とにかく2次予選に進出できるよう頑張るっす!」


「おふたりの健闘をお祈りしますわ」


 そうして別れを済ませたわたくしは、1ブロックへ向かいます。



 そこでアルザスさんと出くわしました。



「もしかしてアルザスさんも1ブロックなのですか?」


「違う。俺は9番だったのでな。2ブロックだ」


「お隣のリングですわね。お互い頑張りましょう」


「ふん。貴様に言われるまでもない。俺は必ず勝ち上がり、決勝戦で貴様を倒す! ……貴様には無用の心配だろうが、この俺に無様な試合は見せるなよ」


 アルザスさんの不器用なエールに、わたくしは微笑で応えます。


『さて、移動が落ち着いたようですので、これより予選を開始したいと思います! 選手の方々は各ブロックの審判に従い、試合を始めてください!』


 運営さんの声が響くのと同時に、若い女性が手を鳴らしました。


 どうやら彼女が1ブロックの審判のようです。


「これから1ブロックの予選を始めます。まずは1番と2番の方、リングのほうにお上がりください」


 わたくしはリングに上がります。


 対戦相手の1番さんは白髪に眼鏡をかけた、落ち着いた雰囲気の男性でした。


 わたくしが懐から扇子を取り出すと、彼は杖を手に取ります。



 ブゥン!!



 お互いが武器を手にした瞬間、ふいに空気が振動しました。


 透明なのでわかりませんが、支柱から結界が展開されたのでしょう。


 これでもう、試合が終わるまではリングの外に出られません。


「さあ、準備はいいですね? この結界はあらゆるものを防ぎますので、おふたりの攻撃が外へ被害をもたらすことはありません! ですので悔いのないよう、存分に戦ってください!」


 審判さんはこほんと咳払いをします。



「それでは――試合開始です!!」




 パァァァァァン!!!!




「……試合終了です?」



 戸惑いつつもジャッジをこなす審判さん。


 扇子を一振りした瞬間、1番さんは結界にぶつかり、その衝撃で気を失ってしまったのです。


 これが会場外での出来事であれば1番さんはミンチになっていたでしょうが、結界の効力によって彼は無傷を保っております。


 実力を測るために1番さんの攻撃を受けてみようかとも思いましたが、わたくしの目的は勝負を楽しむことではなく、理想の結婚相手と巡り会うことなのです。


 1番さんには申し訳ありませんけれど、わたくしが戦いたいのは強者のみ。ですので、優勝候補との試合以外は一撃で終わらせると決めたのです。


「しょ、勝者は2番です!」


 さておき、まずは1勝です。


 わたくしがリングから下りると、ギャラリーの方々がざわめきます。



「バカな!? あのマルシュが瞬殺だと!?」

「マルシュは前回の準優勝者なんだぞ!? それが一撃で……!」

「あの女は何者なんだ!?」

「お、俺、棄権しようかな……」

「あんな化け物が同じブロックにいたんじゃ、勝ち目なんてないよな……」



 どうやら1番さんは正真正銘の優勝候補だったみたいです。


 とはいえ今大会の出場選手はレベルが高いそうですし、マルシュさんより強い方も大勢いらっしゃるはず!


 次の試合までは時間がありますし、観戦して強者を探すとしましょうかね。


 なんて、わたくしが気を取りなおしたそのときです。



「「「「「ぅおおッ!?」」」」」



 すぐそばのリングからどよめきが起こったのです。


 大番狂わせでもあったのでしょうか? 



 駆けつけてみると、アルザスさんが大の字になって倒れておりました。



 失神しているご様子です。


「まあっ、アルザスさんがやられるなんて……!」


 アルザスさんは街一番の強者でした。


 そんなアルザスさんを倒すなんて……これはもう強者のしわざに決まっています!


 いったいどなたがアルザスさんを倒したのでしょう。


 わくわくしながら対戦相手を見てみます。



 リングに立っていたのは、破廉恥な格好をした女性でした。


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