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あゝ、我が家  作者: t.kazuko
9/38

九話


「そのお兄ちゃんは、どこにいるの?」


「ここにいるよ」


「ここにいるって、まさか、この俺のこと?」


「そうだよ」


幸雄は笑っている。


(冗談じゃないぜ、雪子の食べ物さえないのに、ただ、お隣というだけで、俺の方にかかってくるなんて)


そう思いながら、幸雄を見ると


「お兄ちゃん」


と、胸にしっかりしがみついて来ます。


こんな手を、どうして振り払う事が出来るだろう。


先は先だ。


なんとかなるさ。


三人で缶詰を食べていると、誰かが戸を叩きます。


悟が戸を開けると、幸雄の母さんそっくりの人が立っています。


悟は見た瞬間、幽霊が出たと思いました。


幸雄に逢いたいばかりに霊が出た、こんな昼間から出るわけない!?


「あのー、お尋ねしたいのですが、、、」


その幽霊が話しかけます。


「私は、隣のホンダの妹ですが、姉や義兄をご存じないでしょうか?」


「お隣の本田さんの妹さんですか、あまりによく似ていらしたので、びっくりしました。幸雄ちゃんがここに、、、」


「あら、ゆきおなの、こんなに大きくなって、赤ちゃんの時に見ただけで、こちらが大変だと聞いて、駆けつけたのですが、姉たちをご存知ありませんか?」


「本当にお気の毒ですが」


「亡くなったのですか?」


「はい」


「二人とも?」


「はあ、お気の毒ですが、この辺りは、被害がひどくて、私たちの両親も亡くなりました」


「そうですか、本当にお気の毒です。何といってお慰めしたらいいか言葉がありません。本当に大変だったのですね」


と、慰めの言葉を言ってからあ、焼け野原に目を移しました。


悟もその方を見ながら、


「気が付いた時には火の海でした」


「そうですか」


しばらく、誰もが、物思いに沈んでいました。


その静けさを破るように


「私は、姉より早く結婚しましたが、いまだに子宝に恵まれません。幸雄ちゃんを、我が子として、また、姉の形見として、大切に育てていきたいと思いますが」


本田さんの姉妹は、双子の姉妹だけあって、本当によく似ていましたので、幸雄を渡すにしても、悟は安心して渡す事ができました。


幸雄にとっても、母さんそっくりの人に育てられれば、きっと幸せになれるとも、思いました。


幸雄はこのようにして引き取られていきました。

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