三話
血生臭く、どす黒い夜にも、朝を迎えようとしていました。
敵機は暴れられるだけ暴れ、夜明けと共に去って行きました。
夜が明けると、今まで暗くて、よく見えなかった、母の死に顔がはっきり見えます。
母は本当に死んだのだ、幻覚ではなかったのだ、嫌というほど、見せつけられる朝でした。
雪子が
「お兄ちゃん、お父さんが早く来てくれるといいのにね」
と、言います。
「うん」
雪子が言うまでもなく、悟は
(父さん、早く来て)
心で泣き、胸で叫んで、お父さんを待っていました。
いつまで待っても、何時間経っても、父の姿は見えません。
(父さんまで、母さんと同じようになった?まさか、まさか、そんな、、、)
一抹の不安が、胸の中を痛く突き刺して通り過ぎます。
(いや、父さんは、きっとやって来る。そして、僕たちを捜しているかもしれない。父さんを捜しに行こうか)
と、悟は思うのですが、母の側を離れることはできませんでした。
足は母の遺体の側にくぎずけになっていました。
その時、誰かが
「遺体を集めにきたぞ」
と、大きな声で叫ぶ声がしました。
悟と雪子は、顔を見合わせました。
「雪子は、母さんの遺体は、家の焼け跡に埋めよう。母さんを渡してはいかん。早く山に隠そう。」
二人は、一生懸命だったのでしょう。
母の遺体が重いとは思いませんでした。
遺体を木の陰におき、小枝をたくさん集めてかぶせました。
遺体集めの人たちも、遺体が多いのにはびっくりしていますので、必要以上の詮索はしませんでした。
母の遺体は無事でした。




