二十七話
同じ職場の松尾加代は雪子の親友です。
三年先輩の加代は、最初に会った時から、雪子が気に入りました。
少し控えめで、優しい雪子は虐められタイプでしたので、支えてあげたい、気持ちにさせられるのです。
支えられれば支えられるほど、雪子にとって、お姉さんみたいに思え、つい甘えるのです。
甘えられれば甘えられるほど、加代は、雪子が愛おしく思えるのです。
雪子は、両親に早く死に別れているので、このような愛に飢えていました。
二人の友情は急速に進み、お互い居なくてはならない、間柄になっていました。
雪子がちょっとでも、他の看護婦に意地悪を言われれば、盾になってかばいました。
そんな加代に
「松尾さんは、雪子ばかりかばうけど、雪子より、雪子の兄さんに気があるのと違う?」
と、冷たく罵るのは、三十五歳に近い里中由美です。
由美から侮辱を受けた加代は、由美の頬をぶちたいと思いましたが、はしたない事だと、手を握りしめて我慢しながら言い返します。
「私は、雪子の兄さんに一度だって会ったことはないわ。どんな顔かさえ知らないわ。だから、そんなの関係ないの」
「でも、休みの日雪子の家へ行くのでしょう。兄さんに会いたいから、行っているのでしょう。そんな魂胆があるから、いつも雪子雪子って可愛がっているのと違う?可愛がり方が普通じゃないわ。何か裏があって、やっているように見えるけど」
由美は言いたいだけ言って、ふうん、と鼻を天井に向けます。
その仕草が、加代にとっては断腸の思いがするのですが、喧嘩するのは馬鹿らしくなり、堪えることにしました。
雪子は、じいっと聞いていましたが
「加代さんは、腹の中に逸物持てるような人ではないわ。私は、私の本当の姉のように思っているのよ。私がしっかりしていないから、加代さんに迷惑かけて、、、」
「お互いかばい合っているけど、あんた達レズじゃないの」
加代は、カアーッと頭にきました。
その気持ちをじいっと、又、おさえました。
そして、静かに言いました。
「お友達が愛し合い、誠の愛で結ばれる。そんな事が、貴女には解らないのよ」
「解らないわ。お友達なんてね、裏切られるのが落ちよ。私は、私の親友に、私の最愛の彼を紹介したのよ。そしたら、その親友は、私の最愛の彼を取ったわ。私から奪って、平気で二人で暮らしているわ。親友なんて、綺麗事言うけど、この地球上にそのような綺麗事はないのよ」
雪子も、加代も、この由美は可哀想な人なんだ、と思いました。




