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あゝ、我が家  作者: t.kazuko
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二十四話

その時、決心したように、雪子は立派な看護婦になりました。


才智にたけ、患者にも優しく、清潔な美しさを持つ雪子は、人々に愛されました。


悟も、一生懸命で任務に勤め、勉強もしましたが、もともと頭の良い悟は、一尉の中隊長まで昇進していました。


そのようなある日、二人は日曜日を楽しんでいました。


勤務の都合でなかなか一緒に休む事ができないのですが、久し振りに二人とも、ゆっくり休日を楽しんでいました。


「お兄ちゃん、昨日ね老夫婦が病院に担ぎ込まれたのよ」


「何の病気で」


「いや、病気でないの、怪我なの」


「ガスでも爆発したのか」


「それがね、鉈でめった打なの、見るのもぞおっとしたわ。顔を背けたくなるような傷なのよ。指なんか皮でつながっているようなもので、骨までズターっと切られているのよ。全身の筋肉があちらもこちらも、大きく割れていて、足なんか骨まで切られているのよ。その老夫婦には子供がいないので、若夫婦を養子にもらったのね。そして、老夫婦が若夫婦をいじめたの、それで辛抱できなくなって、若夫婦が家を飛び出したの。養家を出たものの、夜、床についても悔しさで眠れなかったんだって、色々と考えれば考えるほど、いじめられた事が悔しくなって、どうにも我慢できなくなって、若旦那の方が、鉈を持って老夫婦の家へ押し入り、老夫婦を鉈でめった打に打ったのね、それで、病院に運ばれてきたときには、すでに二人とも死んでいたわ」


「そんな事があったのか、若旦那の気持ちはよくわかるけど、自分がますます惨めになるのにね、僕たちはそのような事だけはするまいな。考えれば腹が立つ事も多いが、大きな気持ちで前進しようね」


「そうよね、その若旦那の腹の虫は、治るかもしれないけど、奥さんや子供さんが可哀想だわ。人殺しの子供って言われるのよね。本当にそんな事だけはしたくないわ。それがね、どんな巡り合わせか、その日に止吉ちゃんを連れて、あの叔母さん病院へ来たの。『雪子ちゃんがここに勤めていると聞いたので、良い先生を紹介して欲しい』って。心臓強いな、とも思ったのよ、でも、止吉ちゃんは、私がいつもお守りしていたでしょう、だから可愛くて。それに叔母さんからも頼られると、満更悪い気しないのね。内科の医長先生を紹介したの、ただの虫らしいの。虫下しを飲んでいると良くなる、とおっしゃっていらしたわ。私も本当に大した事でなくて良かったって言ったの、そしたら、エリも、夏子も、加代も、『あんた、馬鹿じゃない』って笑うのよ。でもやはりその方が、胸が明るくなって素敵だわ。やはり、あの若旦那さんだって、今は後悔していらっしゃるわ。むしろ、今まで以上に苦しんでいらっしゃるような気がするわ」


「そうだよ、後味はよくないだろうな。それにしても雪子は優しいよ。内科の医長先生を紹介したりして、良い妹を持って良かったよ」


「私も、頼り甲斐のある兄貴を持って良かったわ」


「こら、大人をからかうなよ」


「お兄ちゃんが、あの若旦那のように鉈振り回していたら、私は人殺しの妹になるでしょう。到底人の命を救う看護婦にはなれなかったわ。そんなふうに思うとぞおっとするわ。本当に良い兄貴を持って良かったわ」


悟は、満足そうに笑っています。


雪子の頭に去来するものは


(人間は時として、殺したくなるような人間に出会う場合がある。そのような場合、どのように処置するかによって、その人の人生が大きく変わると言っても過言ではない。⭐︎を振り回すか、神に祈り、祈る事で怒りの心を決め涙に変える。涙は太陽の光に依って乾く。どちらの道を選ぶかで、幸福にも不幸にもなる。神に頼っていれば、必ず幸せが訪れ、神の愛の光が輝くのでは)


と、雪子は思いました。


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