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あゝ、我が家  作者: t.kazuko
21/38

二十一話

苦しみや、悲しみは


避けて通って


ゆけばよいものを


直撃くらった幼い二人は


世間の荒波に揉まれていく


幼い二人が乗った船は


小さな葉っぱの船だけど


兄弟の愛で支え合い


二人で漕いで行こう


枯葉の小舟で


ちょっとの風でも


砕けて、壊れそうな


船だけど



悟は、カッとなって飛び出したものの、今から先どうやって生きていこうか、と不安になりだしました。


北風は容赦なく二人を襲います。


小屋においていたものは、みんな盗まれたので何一つありません。


「雪子、ヤミ市へいこう。そして、色々なものを買おう」


「お金はまだあるの?」


「あるから、雪子は心配せんでもいいよ」


と、言ったものの、不安は募るばかりでした。


ヤミ市の品物は、目が飛び出すほど高いので何も買えない。


二人がとぼとぼと歩いていると、人の視線を感じました。


悟と雪子の前に誰かが立ち止まります。


びっくりして前を見ると、アメリカの軍人さんでした。


二人は生まれて初めて外国人を見ました。


悟も雪子も、異様な者に出会った時のように、きょとんとなりました。


そのような二人に、その軍人さんは、優しく微笑みかけます。


悟も雪子も、その軍人さんの微笑みに引き寄せられて微笑み返しました。


その軍人さんは、沈み込んでいる二人を心配して、声をかけてくださったのです。


「初めまして、心配しないでください。私、悪い人間と違います。あなたがた、困ったことがあるように思いましたので、お父さん、お母さんは?」


と、立派な日本語で話しかけます。


悟が


「死にました」


と、答えると


「お父さん、お母さん、二人ともにですか?」


「はい」


「どうして、二人一緒にですか?」


「B二十九の爆撃機で、、、」


と、悟が言いますと、そのアメリカの軍人さんは、気の毒そうな顔をして、自分が殺しでもしたかのように、苦しそうに下の方を見ました。


悟は、アメリカの軍人さんの気持ちを察して


「戦争だから、仕方ありません」


と、微笑みました。


「そうですね、僕の兄も、この戦争で亡くなりました。でも、僕も日本人を恨んだりしていません。戦争だから仕方ありません」


と、にっこり笑って、悟に握手を求めました。


悟もにっこり笑って、強い握手をしました。


「あなたたちのお家は何処ですか?」


悟は、小屋にアメリカの軍人さんを連れて行きました。


「可愛いハウスね、とってもお気の毒です。今日は冷えますね、夜はどうしますか」


「ワラを買います」


「わら?それ何ですか?」


「米の枝」


「米の枝ね」


その軍人さんは、しばらく考えていましたが


「おお、ワラね。わかります。わかります。でも、それ駄目、私毛布を持ってきます。ちょっと、待っていてください」


そう言い残して、アメリカさんは、何処かへ姿を消しました。


「お兄ちゃん、今の人、アメリカさんでしょう。どうしてツノがないの?」


「雪子、アメリカさんは良い人だよ。ツノなんかありゃしないさ」


「だって、絵本には、牛か鬼のように、ツノが付いていたよ」


「戦争中は、日本人のほとんどの人が、そのように思っていたんだよ。アメリカ人は、悪い人間だ、鬼のような人間だと、軍部の者たちが教え込んだのだよ。鬼のような人間だ、と思わないと、殺したり、爆弾を打ち込んだり、出来ないからね。戦争するには色々と複雑な事情があって、戦争になったけど、とにかく戦争が終わって本当によかった」


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