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あゝ、我が家  作者: t.kazuko
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十五話

4ヶ月半前、焼け跡の我が家を後にした時には、焼け残りの板や柱が散乱していました。


しかし、一本の木切れすらありません。


誰かがまきの代わりに使ったのでしょう。


いかに人々の生活が貧窮に飛んでいるかを物語っていました。


町の生活も大変なんだ。


辛くくとも叔父の家にいなければ、骨になると思わされるのです。


小屋の戸を開けると、もぬけの空でした。


まだ、色々な物があったのですが、何も無いのです。


誰か持って行ったのでしょう。


小屋が倒されずに残っているのが不思議なくらいです。


小屋の横に母の遺体を埋めたので、そこの土を少し掘ると、母の洋服が見えました。


母の変わり果てた姿を、雪子に見せるのは、あまりにも残酷すぎる、雪子には見せないようにしよう、と思いました。


「雪子、山田さんの家は焼けずに残っているから、顔を出しなさい、春子ちゃんにも会っておいで、にいちゃんも後から行くから」


悟は、雪子を避けさせました。


山田さんの家までは一キロの道のりがありますが、春子ちゃん(元クラスメイト)に会いたい一心で、雪子は飛んで行きました。


母の肉体の半分は、もう、土に返っていました。


後の半分は臭気とともに残っていました。


しかし、悟は、懐かしさで臭いとは思いませんでした。


母の遺体をお棺に移すとき、コトン、コトンと音がします。


母のモンペがポケットの中に、何かが入っています。


ポケットを見ると、父が生前大切に持っていた懐中時計が、入っていました。


父の形見として、大切に持っておこう、と悟は自分のズボンのポケットの中に、大切に直しました。


母は、父の大切なものを肌身離さず持っている事によって、父の愛と存在を信じ、自分自身を勇気づけていたのかもしれない。


そして、この大切な物が、母にとって最高のお守りだったのでは、と悟は、両親の夫婦としてのあり方を、そのように想像しました。


(ひょっとしたら、父も母の大切な、何かを持っていたのでは)


と思い


(残念なことをした)


と、悟は、悔しく思いました。


しかし、あの場合、それに気付くには、あまりにも精神的打撃が大き過ぎました。


悟は、半分くらい朽ち果てた母の遺体を大切に、お棺に納め、雪子を迎えに、山田さんの家を訪ねました。


雪子は焼き饅頭をご馳走になっていました。


山田さんの奥さんは、悟と雪子を心から歓迎してくれました。


「雪子ちゃんが来てくれて、本当に嬉しく思います。春子がチブスで亡くなって、本当に寂しくって、、、」


山田さんの奥さんは、涙を流されます。


悟は、本当に気の毒になり、心からお悔やみを言いました。


「私は、大切な子供を失い、あなた方は大切なご両親を、一夜にして失い、本当に戦争は嫌いです」


と、言って、涙を流されます。


悟も雪子も目を熱くしました。


空襲を受けたころ、佐世保ではチブスが大流行しました。


どうしたわけか、チブスにかかった人の家は、家が焼けなかったそうです。


(神様は、二つの不幸を一緒に与えられないのかな)


などと、悟は思いました。


(雪子も僕もチブスにかからずに良かった。この上、病気にでもなれば大変なことだった)


健康であることを感謝しました。


山田さんは、雪子に春子ちゃんの洋服を着せて、ニコニコ笑っています。


悟も雪子も、山田さんの家にもっと居たかったのですが、母を火葬しなければならないので、おいとますることにしました。


山田さんも、名残惜しそうに


「また、ぜひ遊びに来てね」


と、何度も言ってくださり、そして、春子ちゃんの洋服を雪子に沢山くださいました。


悟は、山田さんに優しくされると、叔父たちの仕打ちを話したいような気持ちになりましたが、よしました。


(話して何になる。そのようなことは吹き飛ばせ)


と、思い直しました。



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