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「あ、ほら。麗紀!急がないと!」
「あ~ごめん、ごめん!」
美歌は行動が早い。
あたしは急ぎながらバリトンのケースを立てて、準備室にしまった。
「麗ー紀!いっそげ!いっそげ!!」
音楽室の扉で、美歌が言う。
「はーーい!今行くー!」
あたしは、美歌のもとへ走った。
「いっそげー!」と言いながら、ピョンピョン階段を駆け上る美歌。
そんな美歌とは間逆で、あたしはすぐ疲れてしまう。
「はぁ……美歌、早すぎ」
あたし、体力ないなぁ。
やっとの思いで階段を上り、教室へ向かった。
教室に入ると、真ん中に人だかりが出来ていた。
そして、その人だかりの中心にいるのは……
緒川 和也
緒川くんはこの学校の人気者。
いっつも大人数に囲まれていて、女子からもモッテモテ。
他校の子からもモテてるって、聞いた事あるな……。