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あたしと美歌は吹奏楽部。
あたしは、バリトンサックス。美歌はフルート。
小さくてふわふわしている美歌には、あの綺麗な高音がぴったり。
あたしは、ぴったりかどうか分かんないけど……バリトンサックスが大好き。
学校の廊下に、あたし達の騒がしい足音が響く。
そのまま突っ込むように、音楽室の扉を開けた。
「「失礼しまーす!」」
中に入った瞬間、冷たい風が肌をさす。
「さ、寒!!」
あたしは寒くて、腕を摩る。
「ヤバ!昨日、窓あけっぱだったわ」
焦ったように言って、美歌は急いで開いていた窓を閉めた。
「先生にバレる前に気づいてよかったわ~~」
ふぅ、と胸に手をあてて安心する美歌。
「だからね!バレたら……長い長い説教だーー。」
あたし達、吹奏楽部の顧問、山井先生。
通称、山ちゃん。
山ちゃんは、怖い。
音楽に対しての情熱は、もの凄い。
部活の時も合奏の時は鬼のようだし、規則をちゃんと守らないとすごく怒る。
だから、今みたいに窓を閉め忘れたりしたら……
想像するだけで、ゾッとする