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コブシの魔術師  作者: お目汚し
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モンスター街に出る

ウイルス性腸炎にやられています・・・

「というわけで、衛兵頭と魔狼王、一緒に来てくれ」


転移でゴブリンの村に戻ってきたオレは、早速みんなからの歓待を受け、そのまま主だったものを集めると、そういった。


「え、私が人間の街に行くのですか?」


「我に群れから離れろと?!」


言葉と思念でそれぞれに伝えてきたが、どちらも不服とは言わないものの、不安そうな感じがした。


「大丈夫。安全は保証するし、2・3日で終わるから」


オレがそう請け負うと。


「大魔王さまを疑うことなどありません。ですが、私達が人間の街に入って、果たして・・・」


「ルキノさま、我は小さくはなれませんぞ・・・」


と、伝えてきた。


「いや、いきなり街に出ようとか言わないし、転移で飛ぶから主要な人とだけまずは会って欲しいんだ。ちゃんと意思疎通ができる相手だと人間たちに、わかってほしいだけなんだよ」


と辛抱強く説明すると。


「分かりました。ルキノさまに救っていただいたこの生命、いかようにもお使いください」


そう言うと魔狼王が頭を下げ。


「無論、私も大魔王さまと共にあります」


と衛兵頭も敬礼をした。


なんか、無理に連れて行くようで少し心苦しいが、まあ、交渉が終わればすぐ帰れるからとなだめて、迎えに来る時期をまた伝えに来ることを約束すると、再び転移で飛ぶ。


ちなみにゴブリンの村には常に魔狼が2体、常駐するようになり、逆に魔狼の拠点にもゴブリンが2体、魔狼には出来ない作業ができるようにお手伝いに行くことになっているようで、共生が一つ進んだ状況で動き始めていた。


魔狼の機動力と、ゴブリンの多様な攻撃能力が活かせるといいかも・・・なんて話を飲み会の時にしたのだが、それを聞いたゴブリンと魔狼のコンビが、複数連携しながら、狩りをするようになっているらしい。具体的にどうなっているのかは、また聞いてみたいものだ。


転移で塾に帰ると、マーリンも領主から色好い返事をもらったと報告がある。


そこからは急ピッチで会見の日取りを決め、3日後にマーリン私塾にて会見を行うことを決めた。

仕切りはマーベリックが一手に引き受けてくれたため、食事から会見場のしつらえ、おみやげから食事会場での給仕まで、ぬかりなく手配された。


領主とゴブリン魔狼連合共に、日程を伝え、ゴブリン達はこちらの空気に慣れる意味もあって、前日に招待することにした。魔素濃度が全く違うため、体調に問題があると困るということも有ったのだが、実際外部で活動しているモンスターも多いため、そこは余り気にしては居なかった。


会見日前日。


「無論、我も行くのじゃ!!」


魔狼王の頭から降りない魔狼神の姿があった。


「主様、ルキノ様も困っておりますゆえ・・・」


「お前たちだけルキノのところに行くのは許さんと言って居るのだ。我も連れて行かないのなら、行くことを禁ずる!!」


要するにわがままだ。だが、こいつ、魔狼神ということで、行ってはダメだ言われれば、魔狼王は動けない。言いつけを守るとか守らないとか、それ以上の命令に成ってしまうのだ。


「主様、それでは我ら魔狼族の今後が危ういものと成ってしまいます」


「ならば、我を連れて行けば良いであろう」


と、水掛け論が展開されている。


連れて行ってもいいかな?と思うところもあるのだが、なんとなく、子供のわがままに付き合うのもね・・・という気がしているわけで、そこは大人の対応をするしか無いのかなと、結論が出た。


「分かった。じゃあ魔狼神、オレの言うことをきちんと聞けるか?」


「なんでルキノの言うことを聞かないといけないんだ?」


「聞けないなら、連れていくことは出来ないな」


「何だと!それなら魔狼王も行くことを禁ずる!!」


「わかった。じゃあ、今回はゴブリンだけで行こう」


「え?!」


「というわけで残念だが魔狼王、次の機会があれば一緒に頼む」


「心得ました、ルキノ様」


「え、ちょっと、まっ・・・」


「あ~あ、いうこと聞くって言えば連れて行ったのにな~」


そう言いながら白々しく踵を返す。


「わ、分かった、聞く、聞くから連れてってよ!!」


「あ?なんか言いましたか?魔狼神様」


「だ、だから連れて行けと言っているのだ!!」


「それがお願いする態度かな?」


「う・・・」


子供の躾と一緒だな。内心そう思いながら返事を待つ。


「・・・・」


辛抱強く待つことも時には大事なのだ。横でハラハラしたように見守る魔狼王がチョット可愛い。


「き、きちんとルキノの言うことを聞くから、連れて行って下さい・・・」


少しむくれているが、はっきりとそう言った。


「はい、よく出来ました。でも、なんでオレの言うことを聞かないと行けないか、分かるかい?」


これが大事なのだ。


「え?」


「だって、ここで約束したって、魔狼神が守れない時もあるかもしれないだろ?」


「我は約束は守る!!」


「それは信じるさ。そうじゃなくて、例えばオレが居ない時はどうするんだ?」


子供は操縦するものではない。子供だって一人の人格を持って行動している。その全てを命令で動かすことは出来ないのだ。だから、何故言うことを聞いて欲しいのか、きちんと説明しておく必要がある。


「例えば、人から食べ物をもらってはいけない、って言われたら、どうする?」


「貰わない!!」


「じゃあ、飲み物は?」


「う!?、いいの?」


「オレが勝手に食べ物をもらうなっていうのは、悪いやつがいるかもしれないからさ、毒や良くないまじないがかかっていると困るからだ。魔狼神が大事だからだ」


「う、うん」


「言うことを聞いて欲しいというのも同じ。騒ぎ立てて、人間たちの不興を買ってしまったら、魔狼全体がそう思われてしまう。でも、それ以上に、魔狼神が駄目な奴だと思われるのが嫌なんだ」


「うん」


「だから、本当はオレの言うことを聞け。というよりも、魔狼の代表として、恥じない、責任ある行動を取って欲しいということと、それを考えて行動して欲しいということなんだ。そして、それを外れているとオレが思ったら、すぐに止めるから、その言うことを聞いて欲しいってことだ、分かるか?」


「うん!わかった!」


「良し、いいぞ。でも、返事は・・・」


「はい!わかりました!」


「元気でよろしい!!というわけで、魔狼神も行くことになりました」


と告げると、何故か魔狼王やゴブリンたちまで涙ぐんでいる。


「あの、何か変なことが・・・」


ありましたかと聞きたかったが。


「ルキノ様が、魔狼神様に真剣にお話をされているお姿を見て・・・」


「感動したのでございます、大魔王さま」


と、言われた。そんな感動することか?


そんなこんなで、とりあえず魔狼側から2体、ゴブリンから衛兵頭1体、合計3体がバイオリアに向かうことに成った。


「準備はいいかな?」


まあ、準備と言っても、大したものではないが、ゴブリンも魔狼も一応贈り物をと考えて、何か準備したようだ。

それらの包みを抱えながら、首肯してくるので、村長達に手を振ると、転移した。


塾の自分の部屋に転移すると、まず、荷物をおいてもらい、それからマーリンのところに向かう。途中、塾生たちに合うのも面倒だったので、授業中を選んで移動した。


「どうぞ」


ドアのノックに続けて、すぐに入室の許可が出た。


「失礼します。お客様をお連れしました」


そう言って、ゴブリン衛兵頭、魔狼王、そして、魔狼神はオレの腕の中の定位置に収まっている。


「こちらが、ゴブリンの衛兵頭さん、大きな魔狼が魔狼王さん、そして、こちらが魔狼神様です」


オレが紹介すると、端からペコっと頭を下げていく。


「で、こちらが当塾の塾長、マーリン校長です」


「ようこそおいでくださいました、早速明日にでも領主との会談を行いたく存じます、つきましては、本日は、当塾にておくつろぎ下さい」


と、ここまで問題もなく話しが進んでいるようだが、実際はオレが通訳して話をつけている。魔狼王や魔狼神も特に何も発言しないので、紹介は終わってしまう。


「ところでルキノくん、お願いがあるんだけど」


と、マーリンが含みのある言い方をする。


「お客様たちだけど、決して他の人達に会わせたりしないで欲しいの」


顔はにこやかに笑っているが、目が笑っていない。そもそも、こちらの言葉は衛兵頭や魔狼達にはわからないはずなので、マーリンの発言の内容はわからないはずだ。


「それは、どういうわけで・・・」


「今後のことが問題なの」


とマーリンは言う。


「ダンジョンの中で共生はできると思うの。むしろ、コチラにとってもありがたい申し出だわ。でも、外の魔狼やゴブリン達はいわゆる魔物だということよね?」


なるほど。


「いざ戦わないといけなく成った時に、彼らとダンジョンの方たちの区別が私たちにできるとは思わないの」


いざというときに、行動が鈍るということか・・・


「私はあなたの後に彼らが入ってきたのを見て、すぐに知性があることが理解できました。でも、次に会った時にもし敵対していれば、遠慮無く魔法を撃てます。そういう生活をずっと送ってきたから。でも、この塾の子たちは違う。これから世界に出て行く子達だわ、だとすれば、危険度を計るという行為自体が、寿命を縮めることになる」


「分かりました。ただ、ミツクーニ達には会わせる約束をしてしまったのですが・・・」


「あ、ああ、そこは仕方ないわね。どちらにしても会談の手伝いを頼むつもりだったし」


と、そこは許可が出た。


「では、そういうことで頼むわね」]


オレは頷くと、校長室を後にした。


そのまま、夕食の時間まで退屈だと言いながら、オレの部屋で時間をつぶすと、

ミッツ達3人衆とジョセフくんを訓練場にこっそり呼び出した。


「というわけで、ゴブリン村の衛兵頭さんと、魔狼の村の長である魔狼王。それと、魔狼神さんです」


ミッツ達が訓練場に来たのを確認し、その上で訓練場自体を各種結界で覆い、誰も入って来られない状態にしたうえで、紹介をした。


「よ、よろしくお願い致します」


ジョセフくんは見事に震えながら、それでも必死に堪えるように声を出した。


「私はミトン国のミツクーニである。よろしく頼む!!」


ミッツは虚勢なのか、堂々とした振る舞いを心がけて、傍目からはめちゃくちゃ腰が引けた状態で挨拶した。


「我らはミツクーニ様に使える者たちでござる。お見知り置きを・・・」


既に助さんは固まっており、仕方ないという感じで、格さんが挨拶した。

この中では格さんが一番落ち着いている。


「大魔王さま、彼らは何故こんなに怖がっているのでしょう?」


と衛兵頭が聞いてきたが、


「そりゃ、お前だって魔物だと思っていた人間といきなり引き合わされたらこうならないか?」


と聞くと、


「いえ、大魔王さまが紹介される方ならば、問題はないかと・・・」


と、全面信頼発言をし、それに魔狼王や魔狼神も頷いている。


「と、とにかく。ここにいる全員が、僕にとって大切な仲間なので、紹介しておくからね」


そう言って締めくくると、


「そういうことで有れば、街で食事でもどうか?」


とミツクーニが言い始める。


「いやいや、目立つから」


「変装すれば問題は無いのではないか?」


「骨格的にどうなのよ?」


「いや、ならば・・・」


「・!!・・・!?・・?・・!!」


喧々諤々と、ゴブリンや魔狼たちを置き去りにして議論が進むが、

次第に落ち着いてきて。


「よし!これなら大丈夫だ!!」


と、途中から部屋に戻って服を持ってきては衛兵頭に着せるなどを繰り返した結果、

酷く珍妙な格好をした木こり?顔に怪我をしたので包帯だらけ風な衛兵隊長が立っていた。


「ほ、ほんとに?大丈夫なのか?」


「ルキノ!お前はせっかく来ていただいた方たちに、失礼だとは思わないのか!?少しは楽しみもないと!」


とミッツは張り切っているが、この衛兵頭の姿は、それだけで十分に失礼な気が・・・


「大魔王さま。彼らは我らに食事を振る舞ってくれようと言うのですな?!」


と、妙に理解の早いところを見せている。


「我らは留守番でしょうか?」


と、魔狼王がいうので、


「あ、魔狼王はこれを」


と、首輪を示した。


「嫌なら、無理強いはしないけど」


「誇り高き魔狼族にそのような隷属的な代物をつけろというのか!!」


とか、揉めるのかと思ったが、


「おお、それだけで良いのですか?」


と首を差し出した。流石に大型なので、ケルベロス用の首輪で調度良かった。

ちなみに、この世界にはモンスターテイマーという職もあり、彼らが街にモンスターを引き入れる場合は、

こういった首輪をしていることがその証明になるのだ。ちなみに、魔狼神は、小さいため何の細工もいらないということで、外出の準備が出来た。出来てしまった・・・


「よし、では出発だ!!」


と、ミツクーニが張り切って仕切っている。

みんなと打ち解けるように成ってから、ちょくちょく外出していると聞いていたが、

どうやら、街の食堂に塾生を連れて行っては食事を取ることを最近の楽しみにしているらしい。

今まで、みんなと打ち解けることもなく、殻にこもっていた反動なのかもしれない。


「すでに、いつものところに予約を済ませてございます」


と助さんがすかさず伝える。


「うむ、ついてまいれ!」


そう言うと、お食事会大好き貴族とモンスターたちが街に解き放たれた!!


更新が遅くてスミマセン


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