仲間
随分と間が開いてしまいました
前日に森で2回も戦闘があり、王子の来訪から、マーベリックとの話まで、盛り沢山な一日を終え、朝の日差しに目をこすりながら起床すると、早速、琴ちゃんの呼び出しに有った。
呼び出しと言っても、いつも一緒なので、話しかけられるだけなのだが・・・
”昨日の操られた魔物たちとの戦闘の折、マスターは大変な称号を手に入れられました。それについて、すみやかに確認をしたいのですが、ステータスウインドウをきちんと拝見してもよろしいですか?”
ということである。まあ、勝手に見てもらっても構わないのだが、こういうところが律儀である。
オレは、快諾すると、そういえば最近ステータス見てないな・・・程度に考えて、開いてみた。
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種族:人間
名前:ルキノ
性別:男
年齢:11歳
職業:マーリン私塾塾生
称号:真拳神 大賢人 覇者 魔神 ドラゴンスレイヤー 大魔術師 時空の操者 大魔導師 剣神 神槍 拳神 神杖 斧神 スキルマニア 治癒神 破壊神 創世神 理を継ぐもの 簒奪者 鍛冶神 ゴブリンキングの友 双剣皇
レベル128
HP:3080(×1000)
MP:0(×10000)
力(攻撃力):2090(+12000)
頑丈(防御力):2070(+14000)
体力(抵抗力):3120(+20000)
精神力(魔法抵抗力):0(キャンセル)
素早さ(瞬発力):4190(30000)
スキル:「スキル一式」
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”やっぱり!!世界の声が聞こえて、あらたな称号を得ましたと言われたので、もしやと思いましたが、友の称号と、双剣皇まで取得されたのですね!!”
「いや、琴ちゃん、そこじゃなくて、オレのレベルが大変なことになってるんですが・・・」
”そこは全く問題ありません。昨日の戦闘で、上位種から変異種まで、多様な魔物を複数粉砕されていますので、真拳神の称号スキルの効果も考えれば、順当なレベルアップです”
そうはいうが、以前見せてもらったハンスのレベルが300後半だったことからしても、今のこの世界で三桁のレベルは目立つのではないだろうか・・・それ以上に、攻撃力の数値などが、元々おかしかったのに、地力も随分上がっているのですが・・・
「一応、琴ちゃんの方で、これ目立たないように調整しておいてください。新しい称号も、隠しておいてね・・・ちなみに、この称号はおまけ付きなの?、称号だけだよね?」
”魔物の友の称号は、今後、この種族に対して友好的に接すれば、仲間にすることも可能になりますが、実際に称号持ちになれた人間は、過去にも数人しか確認できていません。取得条件もわからないため、幻の称号です!!”
称号マニアが大興奮している・・・
”双剣皇の称号は、剣神称号に統一されている二刀王とは違い、刃物であれば、どんなものであっても、左右の手で同じように使うことができるスキルが付与されます。両手剣でも片手で扱えるようになるスキルだと思っていただければ、結構ですが、このスキルを人類が手に入れたことは、かつてなかったはずです”
「謎称号ってこと?」
”取得要件は分かっています。分類が両手剣である剣を二刀流スキルで装備して、連続でレベルを5上げれば、双大剣士の称号が得られ、その上で、スキルレベルを上げて、双大剣スキルが90を超えると、双剣聖の称号が得られ、その状態で、スキルレベルが100を超えると、双剣王になり、他の双剣王を2人倒すことで、双剣皇になります。ただし、剣士を取得してしまうと、双大剣士は選べないため、よほどのことがなければ双大剣士自体が存在していません”
随分と厳しい条件だ・・・そもそもほとんど居ない職業の、マスタークラス二人を倒して、王から皇になるということか・・・しかも、剣士を経験しないで・・・人間世界なら、ありえないか。ていうか、そもそも二刀流スキル自体が、剣術スキルだと思うのだが・・・
”マスターも、既に剣士を取得していましたので、得られない称号だと思っていましたが、他にも方法がありそうですね!”
と、琴ちゃんは大興奮と言った状態で、そのまま、森羅万象にアクセスしてくると言い残して、呼びかけても返事をしなくなってしまった・・・
せめて、ステータスの隠蔽だけはしておいて欲しいのだが・・・
一応、自前の能力を使って、レベルアップと底上げの関係を調べてみたが、どうやら、剣神や神槍などの称号に付加されているボーナスステータスが、レベルアップの時にもボーナスとして働き、通常のレベルアップ時よりも、地力を底上げしてくれているようだった。しかも、レベルアップが早いと思ったら、魔素認識をすることで、効率的に経験値となる魔素を取り込むらしく、通常の3倍ほどの経験値を本来の値よりも余分にもらえているらしい。こうなると、俄然、レベルの上限が気になってくるが、生前も、RPGなどでステータスはカンストを目指さない人だったので、今のままでも十分な気もしている。それ以前に、怪我をしない、回復し放題、魔法使い放題な上に、パンチスキルの異常さを考えると、この世界に存在して良いのかも疑問に思えてしまうのだが・・・自殺する気にはとてもならないので、とりあえず、できることをするしか無いのである。
そう、結論を出すと、自分が空腹であったことを思い出し、朝食の時間までまだ余裕が有ることを確認すると、朝飯前の鍛錬でも・・・と思い、訓練場に向かった。
訓練場には先客が居た。
どのくらい前から練習をしていたのか、汗を滝のように流しながら、スキル発動を織り交ぜて、鬼気迫る片手剣でのシャドウを、ものすごい速さでこなしている人影が有った。
いつもは整っている金髪を振り乱し、一心不乱に剣を振るミツクーニの姿だった。
入り口から入ってきたオレに全く気が付かない様子で、自分自身の中にいる仮想の敵を相手に、苛烈に剣を振る。その動きは、やがて見ている側にも、その仮想敵が見えてくるような、鬼気迫るものであった。
数分見入っていただろうか、急にミツクーニの動きが乱れ、そこに仮想敵の一撃が打ち込まれる。
「あ!」
思わず上げた声に、ミツクーニの動きが止まった。
「誰だ!!」
咄嗟にこちらに意識を向けたミツクーニは、オレの姿を見つけると、バツの悪そうな顔で、
「しょ、食前の運動だ。大したことはない・・・」
そう言うと、そそくさと片付け始めた。
「あのさ、さっきの動きなんだけど」
思わずオレはそう声をかけていた。
「何だ、平民が私に何を言おうと言うのだ」
「平民とかそんなことはどうでもいいんだけど、さっきの練習について、気になったことがあるんだけど」
オレがそう言うと、ミツクーニは気になったようで
「参考にはならんと思うが、一応聞いておこう、なんだ?」
と、片付けの手を止めてこちらを向いた。
「まあ、そうかもしれないけどさ、その、ミツクーニ君の見ていた相手が、こちらにも見えるような凄い剣戟だったけど・・・」
「なんだ?」
「相手が、ほとんど動いてないんだ、それに、一対多数の想定だったと思うけど、倒しきれていない敵も多かったよ」
オレがそう言うと、ミツクーニは怒ったように聞いてきた。
「では、どうすれば良いのだ!?実戦など経験できぬ、綺麗な剣術だけでは使えぬことは身にしみてわかったが、マジックアイテムも無ければ、中途半端なスキルだけでは何もできぬではないか!」
そう言って詰め寄ってきた。
「そうだね、でも、ミツクーニ君の剣技、特に初級の技は、使い込んでいるみたいで、ものすごく早かったよ。だから、もっと踏み込んでから使うほうが、スムーズだと思う」
と、見ていて気になった事を伝える。
「それと、相手の攻撃を全く想定していないから、それに対する動きが見えなかった。体勢を崩した状態からでも、発動できるスキルは多いから、それを練習すれば、もっと幅が出るんじゃないかな?」
「わかったようなことを・・・」
そう言いながらも何かを感じ取ったようで、手にした木剣を小刻みに動かしている。どうやら早速試したいようだが、オレが邪魔なようだ。
思わず、含み笑いをしてしまってから
「もし、ミツクーニ君が良いなら、僕が相手になるけど、どうする?」
そう提案してみた。
「なに?お前が!!前に打ちのめしただけでは飽き足らんのか?!」
そう言って、明らかに恐怖の表情でオレを見た。
そういえばそうでしたね。
「ああ、それはもう終わったことだから、単純に剣技の稽古として相手をして欲しいんだ」
そう言って、基本中の基本、スラッシュを空撃ちしてみせた。
「ね、僕最近までスキルが使えなかったから、ミツクーニ君みたいにスムーズに打てないんだ。それも教えてほしいなと思って」
そう言って、さらにスラッシュを重ねて打つ。実際、剣術も剣技もレベルはMAXなのだが、自分自身、剣を持ってみて感じるのは、技としてまとまらないということだった。明らかにチート的に身についたスキルのため、全く身体に馴染んでいない。それでも、パンチスキルの異常な反応速度や、認識能力で戦闘で困ったことは無いが、それは、現段階の敵を相手にした場合の話であって、例えばハンスクラスの相手が現れたら、何とかできる気がしない。
「そういうことか・・・そういえば、先日の立会の時も、お前は格闘スキルを使っていたのだったな」
そういうと、思い出したくもないであろう事を、必死に思い出しているようだった。
「マジックアイテムを素手で打ち砕く奴を相手にする気はなかったが、稽古ということならば、教えてやらんこともない・・・」
そう言って、片付けかけていた荷物を再び置くと、木剣を持って訓練場の中央に立つ
「よし、では基本技から見せてみろ!」
オレは、木剣を手にミツクーニの前に立つと、レベル1剣技を一通り見せていった。
一つの技が終わる度に、具体的なダメ出しが行われ、修正が入る。
朝食の時間が来るまでの短い時間だったが、基本技の幾つかが随分と身体に馴染んだ気がした。
「だいぶ良くなったじゃないか」
ミツクーニはそう言うと、木剣で自分の肩を叩きながら満足そうに言った。
「ありがとう、相手をするとか言ったのに、教えてもらってばかりだ」
「いや、気にするな。昨日の礼も言っていなかった。まさか、お前が私のことを友と呼ぶとは思わなかった」
そう言いながら不貞腐れたような顔をして、
「マジックアイテムが無くても立ち回れるようにしないといけないのは、少し大変だが、芯が強くなければ良き王にはなれないからな」
そう言って、改めて片付けを始めた。
「そろそろ朝食の時間だ。もしよければ、今日の講義の時間も顔を出してやってもいいぞ」
「ありがとう、それならその時に、ミツクーニ君の剣の相手をするよ」
「できれば、格闘術以外で頼むぞ」
そんな冗談を言って、一緒に食堂に向かった。
「それから、私のことはミッツと呼んでくれたまえ、友人なら、それで良い」
少し照れたようにそう言うと、そのまま荷物を置いてくると告げて、自室に帰っていった。
正直なところ、最初に練習場で会った時はそのまま回れ右をしそうになったのだが、話してみたら意外に良い奴だった・・・という感じか。それか、オレやシュルツにやられたことで、何かが吹っ切れたのかもしれない。いずれにしても、恨み節にならないのは、すごいやつだと感心した。
その後、食堂にお供を連れてやってきたミツクーニに、皆が緊張していたが(普段は自室で朝食をとっていた)そのままオレの座っている席の向かいに座り、先程の稽古の補足をしながら朝食をとる姿を見て、随分驚いた様子で皆が遠巻きにしていたのが、おかしかった。
気になったのは、助さんと格さんの反応だが、助さんは随分と暗い目でオレの事を見ていたし、格さんはまるで兄のような目でオレとミツクーニを見ていた。
朝食が済み、約束通り練習場で修練をしようということに成ったのだが、オレに校長から呼び出しが掛かった。ミツクーニ達に一言断りを入れてから、校長室に向かった。その際に、3人共いつものように自室に引き上げるのかと思っていたが、そのまま練習場に残って、稽古をしていったようだ。他の塾生との距離も大分近づいたようである。
校長室に入ると、そこには先客が居た。
「ルキノ~!!元気だったか?!会いたかったぞ!」
「今しがた戻った・・・」
ハンスとガリクソンだった。
「で、ダンジョンはどうでしたか?」
ひとしきり、再会を喜んだ後、そう聞いた。
「うん、良くはない。そもそも、あそこのダンジョンは封印のダンジョンと呼ばれていて、何かを封印していることまではわかってるんだが、今回見つかった、地下6階から下の構造が、全く分からん」
ハンスがそう言うと、
「実際6階に降りる階段までは行ってみたのじゃが、降りてすぐのところにゴブリン共が巣を作っておる」
と、ガリクソン
「じゃが、そのお陰で、厄介な魔物どもが上に上がって来ないんじゃ」
「ゴブリンが、さらに下層の強いモンスターを足止めしてくれてるんだ。奴らにしてみたら、自分の巣を護ってるんだろうがな」
「もっとも、そのせいでこちらから手を出せんのじゃ。ワシラが下りていけば、戦闘になる。その時に、ゴブリン共を滅ぼしてしまうと、階段の守りが大変での。探索もできんのじゃ」
なるほどね。ということは、そこの先がどうなってるか分かればいいんだよね・・・
「ちょっと見てみます」
オレはそう言って、魔素認識を広げようとした。
「待て待て、お前そんなこともできるのか?」
とハンスに止められた。
「え、ええ。できますよ。父さんたちには申し訳ないんですが、多分、父さんたちが想像していること以上に、いろいろできます」
そう言った。
「んじゃ、もしかして、戦闘でも俺に勝てるのか?」
「限定条件では難しいと思います。が、全力で一対一なら或いは・・・」
「限定条件?」
「はい、剣術でとか、魔法使用不可とかです。スキルに慣れていないので、戦闘慣れしている父さんや、ガリクソンさんには、まだ勝てないと思います」
先程のミツクーニとの練習で痛感していた。スラッシュ一つとっても、打ち方が多彩であることがわかったし使い方も、攻撃だけでなく防御や牽制など、多岐に渡る。
「能力的には・・・まあ、お前は凄いものを持っていたからな・・・」
「ですがそれをまだ使いこなせていないんです」
そう答える。
「なるほどな。なら、お前は正式にここの塾に入塾して、スキルの使い方を集中的に学べ」
ハンスがそう言ってきた。
「そのつもりでしたが・・・」
「おお、なら話は早い。15歳に成ってギルドの資格も取れるようになったら、一緒に冒険に出よう」
と、何かを決心した表情をした後、
「よし、そうと決まれば、俺も旅に出る」
と。突然言い始めた。
「え、一人で何処に行く気よ!?」
マーリンが慌てた様子で、すがりつくように聞いてくる。
「俺たち、もう一人揃ってないだろ。そいつを探しに行く」
「ミミ・・・」
「そうだ・・・」
「でも、3人はルネッサ様を追って一緒に転移したんでしょ?なのに、10年も見つからないって・・・」
「だが、あいつが死んだとは思えない・・・」
どうやら、ハンスはもう一人のメンバーを探しに行くつもりらしかった。
ハンス達が光の勇者だったということは聞いたが、深いところまではまだ聞いていない。そういえば、大悪党の話もまだだ。そのうち話してくれるとは思うが、待ったほうが良いのか?
3人が、俺も行くとか、行けないとか話しが盛り上がっているので、オレはそっと魔素認識を起動すると、そのまま封印のダンジョンに意識を飛ばした。
ダンジョンの入り口には、見張りを任されて居るのであろう、若い戦士が二人。多分、塾を間もなく卒業する先輩方だ。
そのまま、ダンジョンの中に入って行きたいところだが、今回は索敵と情報収集が必要なので、範囲を広げて、ダンジョンの入口から一番奥まで、一気にマッピングしながら把握する。結構広いダンジョンだ。
そのまま、地下に向かってMRIみたいな感じで水平に魔素を認識してマッピングをしていく。
あれ?結構深いぞ・・・
ダンジョンは、すり鉢状に下に行くに従って狭くなっていく。地下一階は一辺が3000メートル四方の正方形に近い形をしており、四角錐を逆さにしたような感じで地下に降りていく。
最下層までマッピングを終えた時点で、階層を数えてみると・・・
げ、地下53階まである・・・途中、だだっ広い部屋や、小部屋だらけの階層もあったが、階層を移動できる階段は、端から端まで移動しなくてはいけない作りになっているし、40階から41階に降りる階段は無い。どうやら、転移罠を使って降りるようになっている。
そして、最下層のひとつ上。52階に、結構大きな魔素の反応がある。見てみないことには分からないが、かなり強い魔物だと推測された。で、53階に何かが封印されているのだが・・・その横に、もう一つ魔素の反応がある。どうやら、何かと一緒に封印されているようだが・・・人間だ。
そこまで、探索ができたところで、森羅万象とリンクさせる。
ダンジョンの全貌が見えてきたが、何より、封印されている人物が特定できた・・・
「城塞のミミ・・・」
「おい。ルキノ、今なにか言わなかったか?!」
「父さん、ミミさんって言う人を探しに行くんだよね?」
「そうだ!」
オレのつぶやきを耳ざとく聞きつけたハンスが、3人で騒いでいた状況から離脱して聞いてきた。
残る二人も、何事かと聞き耳を立てている。
「ミミさんを見つけた・・・封印のダンジョンに封印されてる」
「何・・だと?!」
ハンスは驚くと、オレの方に駆け寄ってくる。
「詳しく聞かせてくれ」
オレは、魔素認識を使って、ダンジョンを探索したこと、大まかな造り、そして最下層にミミさんを見つけたことを手短に話す。
「ちょっとまて、一辺が3000メートルだと・・・」
「広すぎるのう・・・」
ハンスとガリクソンが揃って絶句する。
オレは改めてマップを呼び出すと、森羅万象に再度アクセス、踏破済みの地区と、未踏破の地区を色分けしてみた・・・
「どうやら、今まで皆が進んできたダンジョンは、一角に過ぎないみたい・・・」
「だな、俺たちの知っている封印のダンジョンは、精々一辺が50メートルだ・・・」
マップの踏破済みの色分けも、そのように示している。
「だが、それじゃ・・・、ミミを助けに行くのは、絶望的じゃないか・・・」
そう言って、頭を抱えてしまう。
「50階層超えだと・・・そんなの、魔王の城よりも魔素溜まりが多いはずだ。30階層レベルのダンジョンのボスだって、俺たちのパーティ全員が揃って何とかなるレベルだぜ。どうすりゃ良いんだ・・・」
改めてミミさんの様子を探ってみるが、何かの中に閉じ込められているらしく、生命反応は感じられない。
流石に距離が遠すぎるようで、詳しい情報までは探れないが、死んでいるとも考えにくい。言うなれば時が止まっている状態だろうか・・・ここで解るのはそこまでだ、だったら・・・
「父さん。言い難いことなんですが・・・」
「なんだ・・・」
ハンスが打ちひしがれたように、頭を抱えたまま声をだす。
「みんなで行ってみますか?ミミさんのところへ」
「「「???」」」」
3人分のクエスチョンマークを頂きました。
「あの、僕転移できるって言いませんでしたっけ?」
「「「・・・」」」
今度は3人分の絶句・・・
「で、でも。転移って行ったことがある場所じゃないと、できないんじゃないの?しかも、初耳だし」
マーリンがもっともなことを聞いてくる、アンド、転移の話はしてなかったらしい。
「ええ、ですが、僕のはちょっとズルくって、魔素認識の範囲内なら、認識さえすれば飛べます」
「え?じゃあ、行ったことがない場所でも行けるの?」
「はい、ルネッサさんもそうだったのでは?」
「そんなの無理よ。そもそも、魔素って魔法学でも最小単位と規定されているだけで、目に見えるもんじゃないし、良くルキノくんは魔素の話をするけど、普通の会話には出てこないわよ」
と、マーリンは嫉妬9割、呆れ1割な表情でまくし立てた。
「まあ、そんなズルいことができてしまうので、いきなり53層にも行けるのですが、行ってみますか?」
と、提案してみた。
「ちょ、ちょっとまってくれ、今ミミの状態は安定しているんだな?」
「ええ、認識だけでは確定ではありませんが、おそらく問題は無いと思います」
「分かった、息子のお前を信じる。なら、2日待ってくれ」
「2日ですか?」
「そういうことなら戦闘も予測される。万全の体勢で望むべきだ。装備を整えてくる」
ハンスはそう言うとガリクソンと頷きあった。
「今回は私も行くわよ。止めないでよ!!」
マーリンがそう言うと。
「あ?なにアタリマエのこと言ってんだ。お前が来なけりゃ始まらん。準備しとけよ!」
そう言うと、ハンスはオレの頭をガシっと一つ撫ぜて。
「ありがとうルキノ、お前のおかげで前が向ける。行ってくる!」
そう言ってガリクソンと飛び出していった。
「ほんと、ルキノくんてわからないわね・・・いろいろ常識外れで・・・」
マーリンはそう言うと諦めたとばかりに、
「なんでも出来るんだから凄いわよ」
そう言うと、自分の椅子に腰掛けた。
「それが、そうでもないので、校長にも教えて欲しいのですが・・・」
「何よ?」
「その、普通の魔法を教えてほしいんです」
「・・・」
「理屈は解るんですが、今ひとつ活用ができなくてですね・・・」
「分かったわ。普通の魔法を教えてあげる・・・」
何故か普通というところを強調して、少し目が据わって見える校長の姿があった。
この後、校長自ら訓練室に出向き、かなりスパルタで5大魔法の基本を叩き込まれることになる。
オレのみならず、訓練場に居た全員がその餌食となったが、この日、塾生の魔法レベルは格段に上昇した。その中には、ミツクーニたちの姿もあった。
正直なところ、書き始めと終わりで書きたかったことが変わっています。
ハンスが出てくると、暴走する傾向を認識し始めました。




