MP0と魔法抵抗0の話
つらつら書いています。
書きながら話しが膨らむので、まとまる気がしなくなってきました。
早く、主人公に戦っていただきたい・・・
家に帰ってから。
ハンスからは、何故家から離れたのかと聞かれ、することもなかったので、野うさぎでも獲ろうと出かけたことを伝えた所、肉を食わせなかったことに対して、謝罪され、ただ、気分が良かったので、外出しただけということを伝えると、
それにも驚かれた。
思い返してみると、オレは、結構引きこもりがちな子供だった・・・
ルキノとして思い出してみると、例の名前も覚えていない(正確に言えば教えてくれない、黒髪野郎には教えない・・・ということらしい)
ガキ大将たちに、散々にいじめられ、惨めな思いをしていた。
そういえば、必殺の呼子笛も、ハンスが作ってくれたもので、
「何か合ったらこれを吹け!父さんがすぐに駆けつける!!」
と、ものすごく良い笑顔で言ったため、それを信じて意気揚々と出かけた時に、やっぱりガキ大将たちに絡まれ、笛を吹いた結果、ハンスが本当にすぐに駆けつけ、ガキ大将たちを相手に、大立ち回りをして、となりの農夫のおじさんに散々に怒られた・・・
以来、必殺の笛は封印していたのだが、今回はものすごく助かった。
というよりも、ハンスの強さを初めて見た気がする。
ゴブリンといえども、3匹以上が群れれば、それなりの脅威になる。
ゴブリンリーダーも、この辺りでは別格に強いはずだが、ハンスなら一撃で叩き伏せると思う。
どうやったら、クワでゴブリンの胴体を輪切りに出来るのか?
全く想像がつかない。
ハンスの話に出てくる冒険譚は、実はハンスが主役ということは無く、
自分の仲間が如何に強かったかとか、偉大な魔術師がどれほど凄い魔法を使うのかとか、知り合った冒険者が伝説級の冒険者で、高価なアイテムを惜しげも無く使って助けてくれたとかで、自分の自慢話的なものは全くしないのだった・・・
自分の冒険譚といえば、
旅先で出会った酒場の踊り子がどれほど綺麗で、如何に派手に振られたかとか、
ダンジョンのトラップにかかって、死にそうな目に合うはずが、笑いガスのトラップで、パーティーでダンジョン内を不気味に笑いながら歩いていたら、他のパーティーが近づいて来なかったとか、失敗話ばかりで、
それなりに強いだろうとは思っていたが、どのくらい強いか、全くわからなかったのだ。
話しがそれたが、
普段オレは、休みと言われれば、ひたすらに本を読んだりして過ごしている。ちなみに、本はこの世界ではかなり貴重だが、街に図書館があって、
ハンスが買い出しにでかけた時に、数冊借りてきてくれる。今のお気に入りは、魔王討伐の話だ。
あれ?そういえば、この魔王って、ひょっとして神様の言ってた、大魔導師ってやつじゃないのか?
まだ、先まで読み進めていないので、定かではないが、もともとの魔王を配下にして、勇者パーティーも一撃で撃滅している。
この世界にも、宗教はあり、いろいろな種族や民族ごとに信仰されているが、転生の神様も信仰されてるのかな?
いかん、またそれている・・・
というわけで、オレの前世のようにネットやゲームがあるわけではないので、家の中に閉じこもってすることといえば本を読むくらいしか無いわけだが、暇があれば本を読んでいるはずのオレが、外にでかけていて、あまつさえ、狩りは釣り以外まともにしたことが無かった(ようだ)オレが、急に野うさぎを獲りに行ったということで、よほど肉が食べたかったと認識されたらしい・・・
その日の晩は、誕生日のごちそうということで、何の肉か(知っているが)大きなステーキと、いつもより具が多い、贅沢な感じのスープ。
食後に、ハンスがニコニコしながら出してきたのが、揚げパン?のようなデザート。ルキノの記憶には無いので、甘いデザート自体が珍しいと思う。
「甘いよ!!凄い!ありがとう父さん!!」
そんな声が自然に出る。
ハンスは満足そうに、うなずいて、そのまま抱き上げてくれた。
やっぱ、力強いな・・・ムキムキマッチョでは無いけど。
そう思いながらも、気持ちは凄く嬉しい・・・
今のオレの状態は、はっきり言って、複雑な感覚だ。
ルキノとして生まれてから、物心がついた後の出来事や記憶は、すべてある。
右膝のかさぶたが、5日前に畑で転んでできたものであることも、
左手の甲の傷跡が、7歳の頃に剣術修行をしていて誤ってつけた傷だということも。
こういったことを、ルキノの記憶を検索して探す・・・のではなく、自分の記憶として思い出している。そして、オレは誰かと聞かれれば・・・やはり、ルキノ!11歳!!と応えるだろう。
2重人格とは少し違うと思う、オレの人格もルキノの人格も、同一人格なのだ。
今回の外出のように、普段はしないことをする・・・ということが人格の交代のせいだとすれば、そのように説明できるのかも知れない。
だが、ルキノの意思を無視して、オレが行動したというよりも、ルキノがふと思いついて、兎狩りに行った。という感覚が一番正しいと思う。
嗜好が急に変わった・・・というのが一番しっくり来る。
もちろん、本も好きだが、見慣れている異世界を、もう一度再発見している。説明しづらいが、そういう感覚なのだ。
そういえば、オレのステータス、記憶にはあるが、あまりしっかりと覚えていない。
記憶に刻み込まれているのは、MP0という衝撃の数値。あとは、HPが25、レベル3。と言った基礎的なものと、埋め尽くされたスキル欄。
スキルについては、いわゆるパッシブにしても、発動を意識しないと常時発動にならないらしく、その発動にはMPはいらない。
が、オレには発動できなかった・・・発動にMPを必要としない、ということと、MP0は意味が違うらしい。結局、最初の1回だけは、MPが必要だと言われた気がする。
というわけで、無用の長物と化したスキル欄については、一切覚えていないのだ・・・
だが、なんだか魔力が見えるようになった(気がする)ので、それを希望に、今一度ステータスを見てみよう!!
ということで、ハンスには自分と向き合いたいからステータスウインドウを見る、と言って今からステータスを見ることを宣言した。
もっとも、この小屋は部屋などと言うものはなく、良く言えばワンルーム、ふつうにどこから見ても山小屋なので、
横から覗かないでね?という宣言に過ぎない。
ちなみに、ステータスウインドウは基本的に、他人には見えない。何やらのぞき見する方法もあるようだが、それにはスキルが必要で、
他人に開示しようとする場合、可視化することになる。この、ステータスウインドウのオープンやクローズは、MPはいらないらしい。
オレに開ける時点で当たり前だが、歩く、しゃべる、オープンウインド、という感じであろうか?
そういうわけで、不可視状態のウィンドウを開く。オレの記憶が付加されたせいで、変な表記になっていたらハンスに何を言われるかわからないからだ。
ハンスは、何か分からないことが有れば聞くように言うと、となりの作業スペースで、農具の手入れを始めている。
オレは、ぎこちない手つきながら、危なげなくウインドウを開いた。
目の前には、ゲームで言うところのステータス画面ぽいものが、展開された。
思ったより、項目が少ないか?数百以上のスキルが有った様に思ったが、意外とすっきりとしている。
っていうか、スキル欄に「スキル一式」と書いてある・・・
腑に落ちないが、とりあえず、使えないスキルよりも、地力の問題だ。
おお。意味としては、わかるな。
種族:人間
名前:ルキノ
性別:男
職業:農夫見習い
称号:神童と呼ばれた子 お留守番 引きこもり 読書家 草むしりマスター お手伝いマスター いじめられっ子
レベル3
HP:25
MP:0
力(攻撃力):13
頑丈(防御力):25
体力(抵抗力):25
精神力(魔法抵抗力):0
スキル:「スキル一式」
以上だ・・・
あらためて見ると、何だこれは??
称号の記憶はあまりなかったが、なんだか増えている気がする。
しかも、あまり名乗りたくないものが多い・・・
MP0もさることながら、精神力?も0じゃないか・・・
ハンスに聞いてみる
「父さん、MP0は仕方ないけど、精神力ってなに?」
「精神力ってのは、魔法抵抗力とも言うんだが、高ければいいってものでもないんだ。魔法による事象改変に対して、どれだけ抵抗出来るかって言う指標さ。一般的に、レベルが上がると数値も上がってくる。例えば、一般的な魔術師のファイヤボルトの魔法を食らった時に、精神力が100も有れば、ほとんどダメージは喰らわないんだ。」
ハンスは手入れの手を動かしながら、きちんと応えてくれた。
「精神力の事を聞くってことは、表示されたのか?」
鎌の切れ味を確かめるように、刃先を触りながら聞いてくる。
「うん、僕のステータス、精神力も0らしいんだけど」
ブシュ!!
「痛って!!何だと!!」
ハンスが指先を壮絶に切った。そして慌てて聞いてくる・・・否、慌てたから切ったのか??
「精神力が0ってどういうことだ??」
生活呪文のライトヒールで切り傷を癒しながら近づいてきた。
ハンスは、魔法を使えないオレに気を使って、最低限の魔法しか使わない。
結構使えるはずだが、あまり見せない。それが、無意識だと思うが、魔法を発動しながら近づいてくるとか、多分、大変なことなのだろう。
吹き出すように血が出ていた傷口がみるみる治っていく。その様子を見つめているうちに、ハンスが目の前ににじり寄っていた。
「本当に精神力が0なのか?間違えじゃないのか?」
ハンスは、随分と心配しているようだが、何かまずいのか??
「いいか、さっきも言ったが、精神力は高ければ良いってもんじゃない。今まで、お前は魔法を使わなかったから、ちゃんと教えていないが、魔法というものは、武器と同じ考え方で構成される。武器の場合は、例えば攻撃力10の剣を装備して、力が10の剣士が全力で攻撃したら、どうなる?」
「攻撃力20の攻撃になる」
ハンスに答えた
「そのとおりだ、同じように、攻撃力10のファイヤボルトだが、魔法の場合はここからがちょっと違う。魔法の場合は、人間の攻撃力が無い。武器の場合も、実際は、加減をして威力の調整をするもんだが、魔法の場合は、込める魔力がモノを言う。」
ハンスが真面目くさった顔で教えてくれる。
実は、その手の話は本で読んで知っていたりもするが、やはり、知識で知っているだけのものより、実体験のある人間からの話のほうがわかりやすい。
「でだ、攻撃力10のファイヤボルトだが、使いこなす魔術師の腕にもよるが、俺が知っている中で最高の魔術師は魔力を300も込めやがった!!」
「え?」
「すげえだろ?」
ハンスは興奮して話しているが、確かに凄い気もするが、攻撃力は310。それなら基本攻撃力の高い魔法を使うほうが良いのでは??
その疑問をぶつけてみると、爆笑しながら訂正する。
「違う違う!魔法の攻撃力の計算は、掛け算だ。攻撃力10×魔力300で、合計3000だ。」
3000!!桁違いだ!
「でだ、物理攻撃に対しては、物理防御力が働く、こいつは防具でも上がるな」
おお、ゲーム的な感じでわかりやすい。
「さっきの20の攻撃力の攻撃に対して、防御が20以上有れば、ほとんどダメージは無い。実際には、誤差があるから、ノーダメージってわけには行かないけどな」
なるほど、防御力だけが高くても、意味が無いと・・・
「問題は、お前の精神力の話だ・・・」
「うん。0だと、どうなるの?」
ハンスは、うつむいてしまった・・・
「父さん、どんな辛いことでも、受け入れないと前に進めないんだよ!僕は知りたいんだ!!」
どこかの小説か映画で言われているようなセリフを、自分が話すことになるとは・・・
「すまん!」
ハンスは顔を起こすと、突然謝る。
「俺の勉強不足だ、って言うか、魔法抵抗値0って人間を見たことがない!」
「え?!」
貴方の目の前に居る子供がそうらしいですが、何か問題でも??
「基本的に魔法抵抗は、防御力と同じ感じだと思うんだが、確か、ちょっと違ったと思うんだ・・・」
ハンスは一生懸命に思い出してくれようとしている。
そういえば、本で読んだ記憶によれば、MP0は、障害みたいなもので、ステータスウインドが開く前に死んでしまうことが多い。
死亡時に鑑定眼を持った医師などが、死亡原因を探る中で、それが原因ではないかと、推測されるらしい。
さらに、MP0の人間の人間には、基本的に治癒系の魔法が効かない。もともと、魔法体質で無いせいなのか、魔法での事象改変、怪我の場合なら怪我をなかったことにする改変や、病気等の場合は、それが無かったことにするという改変が効きにくい。
オレの膝小僧のかさぶたや、左手の傷跡は、自然治癒しか効かないために付いているものである。
左手を切った時は、結構深い傷で、手の筋や腱は問題なかったが、血が止まらなくて、慌ててハンスがライトヒールをかけてくれた。
だが、この時もライトヒールは全く効力を発揮せず、傷が治らなかったのだ。そのため、慌てて街の医者に連れて行かれ、外傷の手当を受けて自然治癒で治療したのだ。それまで治癒魔術が使われなかったのか?という疑問だったが、自然治癒力が落ちてしまうため、基本的に子供には、よほどの大怪我でないかぎり、治癒魔術は使わないのが、この世界の常識だ。ちなみに、この世界にも医者はいる。生活魔法と言っても、幅は広く、ライトヒールまで使いこなすのは、もともと戦闘も日常的に行う戦士が、稀に習得するくらいらしい。というわけで、普通は治癒士に高額な謝礼を払って治癒術を施してもらう。
お金のない一般人は、自然治癒に頼ることになり、その助けとして、治癒術士よりは安価な、医師の治療を受けるのだ。
「試しに、お前の怪我にライトヒールをかけてみていいか?」
ハンスが真剣に聞いてくる。
「良いけど、怪我するのは嫌だよ」
オレは軽く引いた
「ばか、その膝にかけるんだよ」
ハンスは、オレの右膝を指差して言った。
「ああ。そういうことなら、良いよ」
てっきり実験用に新しく傷を作るのかと思っていたオレは、安心してハンスに身を任せる。
「じゃあ、行くぞ」
ハンスはそう言うと、オレの右膝に自分の右手をかざし、軽く精神を集中する。
「あ、」
集中してみていると、ハンスの手から魔力が流れ出るのが分った。その魔力には淡いピンクの色がついていて、それがオレの膝小僧のかさぶたに注ぎ込まれて、そのまま、弾かれて消えていく。
「やっっぱりダメか・・」
時間にして数秒だったが、さっきのハンスの傷が治った速さから考えれば、とっくに完治しなければおかしい。
ハンスはがっかり・・・という感じで、手を離した。
「魔法抵抗力の話だが、実は高ければ良いものでもないと言っただろ」
ハンスはがっかりのままだったが、話を続ける。そういえば、そんなことを言っていた気もするが、なんで急に試すなんて言い出したのか?
「実は、魔法抵抗が高いと、回復系も効きにくいんだ」
とハンスが言う。
「つまり、回復の事象変更にも抵抗してしまうんだ。その結果、攻撃魔法は通りにくいが、ヒールも効きにくい。ポーションの系統も、実際は魔法の道具版みたいなもんだから、魔法抵抗の高い人間は、薬も効きにくい」
オレは、言われたことをそのまま繰り返した。
「魔法抵抗地が0ということは、ヒールが効きやすいはずだ・・・ってこと?」
「そういうことのはずなんだが・・・」
ハンスはさらに悩んでしまったようだ。
「仕方ない、気は進まないが、あいつに相談してみるか」
ハンスは何か決心した感じで、これで話は終わり!!とばかりに立ち上がった。
「さて、俺は日課をこなしてくるから、お前は遅くならないうちに寝ろよ」
そう言うと、愛用の片手剣を手に、外に出かけていく。
ハンスは、元冒険者としてこの辺り一帯の魔物を警戒しているのだ。街から離れて住んでいるが、別に隠者ではない。
農夫という職に付いているが、もともと優秀な戦士だったはずのハンスが、この辺りに住み着いてからは、街も魔物の襲撃を受けたことはないそうだ。
街に住んでいた頃は、周りの大人達から、貴方のお父さんは凄い人だ・・・とよく聞かされていた。それは言外に、お前も街の役に立て、と言われているように感じていた。
オレのMPが0だと分った時の周りの反応は、それは冷たいものだった。まして、伝説・・・というか、この世界では歴史に名だたる、黒髪黒目の大悪党と同じ特徴を持ち、明らかに父親と違う見た目のオレは、大人たちからも気味悪がられていたんだと思う。
ハンスが出かけてしまって、話し相手もいなくなった。
ちなみに小屋の中は、暑くもなければ寒くもない。
この世界は、四季らしい四季も無く、ただ、同じような気候の日々が続いている。そもそも、四季という発想が無いのかもしれない。本の中では、雪の記述があったが、この世界で見たことはない。
地域によって、気候が違うということのようだ。で、今住んでいるこの辺りは、常春?の地域ということか。朝晩は多少冷え込むが、昼間も汗ばむくらいで、それほど大きな気温の変化はない。
曇ったり雨が降ればやはり冷え込むが、その程度。時折嵐が来たりもするが、それも2日続けば長いほうだ。
ぼんやりと、オレの記憶とこの世界の記憶の照合をしているが、知っていることにあらためて気が付くという行為は、なかなかに面白い。
これは、反省というものに似ているのかもしれないな・・・生前の恩師から、「誤りて改めざる、これを過ちという」と聞いたのを思い出した。もともとは、どこかの偉人の言葉だったと思うが、
なかなかに含蓄のある言葉である。
そうこうしているうちに、結構時間が経ってしまったが、ふと、さっきのハンスのライトヒールの魔力に着いていた色のことを思い出す。
魔力が見える人間が居るのか?聞くのを忘れていた。それ以前に、スキル欄の、「スキル一式」てなに?
気になって、ステータスウインドウを開こうとして、閉じていなかったことを思い出す。
意識を向けると、すぐにウインドウが認識できた。結構便利機能なのかな、これって。そう思いながら、スキル覧に目を凝らす。
「スキル一式」と書かれている項目には、それ以外に特に目立ったものはない。
「ん?」
違和感を感じて、スキル覧にもう一度目を凝らす。
よく見ると、「スキル一式」と書いてある項目だけ、パソコンのフォルダみたいに成ってないか??
そう思って、スマホの要領でタップしてみた。
「おお!!」
ブワッという勢いで、スキル一覧が広がった。その数、数えたくないくらい。
その全てに共通していることが、グレーアウトしていること。
お前には使えないよ・・・とでも言うように、やたらと多いスキルの数々が、全く起動している感じが無い。
幼いころから練習していた、剣術や剣技は、いずれもLv2になっているが、発動していない。魔法系スキルも、地・水・火・風・空の5大魔術から、聖・闇・時・特殊と、おそらく知られている魔法体系はすべて網羅されている。ただし、これもグレー。
なるほど、これだけ才能に溢れて見えながら、実際には何もできないということが目の前にさらされる状況は、確かに10歳児には厳しい物がある。エクストラスキルや、ユニークスキルと言ったものも見えるが、これも見えるだけ。すべてグレーアウトだ。
「こりゃ、ひどいな・・・」
独り言を他人事のようにつぶやきながら、一つずつスキルを送って見ていると、一箇所、一つのスキルだけが、他と違う色をしている・・・
「魔力認識?」
たったひとつ、そのスキルだけが、ぼんやりと、ほんの微かだが発光して見える。
これって何が出来るスキルなのか?名前からほぼ正確に予測はできるが、レベルが設定されていないということは、パッシブ系のスキルのはずだ。
タップしてみても、フリックで移動しても、その淡い光は消えることは無かった。間違えなく、このスキルのせいで、魔力が見えるように成ったのだと思うが、どうやって起動するのかがわからない。
魔法系の本は、この小屋に引っ越してきたばかりの時に随分と読み漁った。自分のMP0という状態がどういうものかを認識するために、ひたすらに読み漁った。結果、どうにもならない現実をつきつけられたのだが、そんなことはどうでもいい。今は、スキル起動の方法だ。
記憶の糸をたどり、起動の方法を思い出す。何と書いて有った・・・
確か、スキルの発動には魔力が必要で、スキルを自分のものとするために、そのスキルの事象に魔力を乗せること。火の魔法なら、自らの魔力を火に変換し、形や動きをイメージして解き放つ。それができた時に、スキルが自分のものになる、そして、一度起動に成功したスキルは、起動自体にはMPは必要ない・・・。
そんな感じだったはず。
「よし、詰んだ・・・」
オレ、魔力無いですやん・・・
自らの魔力を変換・・・という時点で、既にお手上げである。
だが、状況によってではあるが、魔力は見えていた。ゴブリンの時も、ライトヒールの時も、何か見えるようになる切っ掛けがあるはずだ。そう思って目を凝らしてみるが、今度は魔力が見えない。
切り替えが早いのがオレの長所だ。そう言い聞かせながら、
「他に何か無いのかよ」
そう思って、スキル覧をさらにフリックして見ることにした。
そこで、オレはさらに困惑することになる・・・