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コブシの魔術師  作者: お目汚し
27/65

コブシの錬金術!!

新しい魔法をつくるぞー

オレは、今、森の中に居る。


時刻は深夜。こっそり部屋を抜けだした・・・訳ではなく、このことは校長にも報告済みである。

鬱蒼とした下生えが足元を覆い隠し、漆黒の闇があたり一面を埋め尽くす・・・なんてこともない。

月明かりが辺りを照らし、随分と明るく感じる。


ここが何処かと言えば、塾の裏山にある雑木林・・・と言うには少々広い小森の奥である。


マーリン校長に、新しい魔法の報告が行われ、早速校長にも理論と使用方法を伝えたのだが、

大魔術師を持ってしても、この魔法を使うことはできなかった。

MPを直接変更するということが、如何に難易度の高いことなのか、あらためて感じた出来事である。


この魔法のみならず、ジョセフのおかげで幾つか新しい魔法のアイデアも浮かんだため、それを試せる場所が無いか相談した所、あまり大規模な魔法は駄目だが、そこまで危険度の高くない魔法ならばと、裏山を紹介された。


この裏山、入ってみてわかったが、上級生の実戦訓練にも使われているようで、そこかしこに、小規模の戦闘の跡が有った。とは言っても、模擬戦等の後なので、血だまりが有ったりなんていうスプラッタな光景は存在していない。


それほど広くもない森だと思っていたが、一番奥まで進むと、高い塀にぶち当たった。


街を守る城壁である。

そう考えると、マーリン私塾の敷地はかなりな広さが有ることが分かった。歩いてきた時間を考えても、野球のグランドなら、軽く3面分くらいは歩いたはずだ。

城壁にそって進んでいくと、今度は、それほど頑丈ではなさそうだが、私有地との境を示す柵が有った。

おそらく反対側にも同じような柵があり、校門につながっているのだと思う。


今度は柵に沿って戻って行くと、途中に明らかに人の手が加わったような柵があった。

手にとって見ると、丁度、大人が一人通り抜けられるくらいの隙間ができるようになっていて、柵の向こうは、街の路地裏につながっていた。

穴からは、良く見ると、何度も人の行き来が有ったように、下生えが踏み潰され、獣道のような跡ができていた・・・?

こんな感想を以前述べた気が・・・


その瞬間に、マーリン校長の裸を思い出し、納得した。

ここから入ってきたんだ。


オレは、もう一度、柵の作りを確認すると、今度は魔素認識を発動させて、柵の成り立ちをもう一度確認する。


ここの柵自体は、普通の鋼を使って作られた棒を、縦横に組み合わせて作られている。

結合箇所は、リベットで止めるというわけにも行かず、針金のような鋼線で結ばれ、その上に飾りのついた目隠しパーツで補強してある感じだ・・・


そのまま柵に沿って魔素認識を広げていくと、思った通り、それが校門を挟んで、反対側まで続き、城壁に到達していた。

個々の他には抜け穴などは無いようで、隙間といえば小動物が出入りしていると思えるものが有るくらい。


あらためて、柵全体を認識してみると、この塾の敷地がかなり広いことが分かる。一辺が約1km程度のほぼ正方形の敷地だった。実際には、となりの家や道の関係で、完全に真っ直ぐなわけではないが、ほぼ直線だ。


構造を魔素レベルで確認すると、早速琴ちゃんを呼び出す。


”お呼びですか?”


意識するだけで、すぐに応答してくれる。有能な秘書


”秘書ではありませんが、お褒めいただき光栄です”


まんざらでもなさそうであるが、質問をする。


「この柵で実験をしたいんだけど、この世界の鉱物で、頑丈だけど、そんなに価値の無い金属って、何かある?」


”それでしたら、緑魔鋼が挙げられます。硬度、靭性、いずれも高く、この世界では厄介者の鉱物です。砕くことも、切ることも困難で、加工はまずできませんし、鉱山などで見つかった場合には、掘り出して、積み上げておくか、邪魔な場合は埋めるしかありません。そのため、現在では価値は全くありません”


おお、それが良さそうだ。けど、そんな鉱物使って大丈夫かな?まあ、価値は無いって言うし、問題はないか。


一人で納得すると、琴ちゃんに頼んで、森羅万象にアクセス。緑魔鋼がどの辺りに有るのか確認する。


意外に近くの鉱山に綠魔鋼を山積みにしてあるところが有った。


そのまま、魔素認識範囲を一気に広げて、鉱山まで意識を広げようとしたが・・・


あら?チョット無理が有る。

結構な範囲までは行けるのだが、情報量が多すぎるようで、把握がしにくい。

ならば、と、範囲だけを極限まで広げて、森羅万象の地形情報と照合すると、ピンポイントで鉱山周辺のみに、認識する範囲を特定する。


おお、上手くいった。


念の為、緑魔鋼の捨てられている辺りに誰かいないか探ってみるが、そもそも廃棄物みたいな鉱石のため、誰も見張りは居ない。それを確認すると、一番大きそうな緑魔鋼の横に、転移する。


「寒!!」


鉱山は結構な高地だったらしく、吹き渡る風が冷たかった。


慌てて、大きな緑魔鋼の横に、張り付くようにして魔鋼の魔素を鑑定する。


なるほど、緑魔鋼とは深緑色をした鉱石だった。どうやら、風の魔素を多く含んでいるようだが、それが地の魔素と強く結びつくせいで、加工もできないような硬さと柔らかさを持つようだ。熱にはどうかとも思ったが、どうやら風の魔素がかなり強く結びついているため、他の魔素の影響を受けにくい特性が有る。確かに加工は難しいだろう。


一通り確認が住むと、ものは試しといろいろな魔法を試してみたが、目立たないように手加減した魔法では、傷一つつかなかった。最後に、パンチスキルを発動し、貫手で大岩に一撃入れてみたところ、普通に砕け散ってしまい、結構大きな音が出てしまったので、慌てて、その破片の一つをポケットに入れると、塾の森に転移した。


戻ってきてわかったが、どうやら、一度行ったことがある場所は、転移が簡単に出来るようだ。


”余計なことかもしれませんが、マスターが行かれたことがある場所は、座標を記憶しております”


琴ちゃんの仕業だったらしい。ありがとう、琴ちゃん。


というわけで、無事に素材を持って帰ってきたのだが、よくよく考えたら、ここからでも魔素の組成って鑑定できたことに気がつく・・・まあ、色んな所に行けば、それだけ簡単に転移出来る先も増えるってことで・・・今後も、行けるときには、いろいろな場所に出向いてみようと決めた。

鉱山が寒いことだって、行かなきゃ分からなかったしね。


気を取り直して、柵に向き直ると、早速新しい魔法を試してみる。


ズバリ、錬金術!!


さて、こちらに長さ3kmにもなる、粗鉄或いは鋼をベースにした柵がございます。

もう一度、この柵の魔素の組成を確認しまして・・・

壊れにくい鉱物を使うので、修理の必要性は無いものと考え、丈夫さのみを追求して接合部も、一体化します。

見た目があまり変わるといけないので、メッキのように表面を鋼で覆うイメージをしてと・・・


「おりゃ!」


呪文とか発声とか、要らないと思うのだが、やはり声は出てしまう。


柵の見た目は全く変わっていないが、中身は緑魔鋼が一体化した柵になっており、表面を薄い鋼のコーティングがメッキのように覆っている。


成功だ!!


試しに近くに落ちていた太めの枝で力いっぱい叩いてみたが、全く歪むこともない。

接合部も、一体化したために、部分的に取り外すことも不可能。

こうして、マーリン校長の純血は守られることになるのだ。うんうん。


しかしやってしまってから、ふと気になって緑魔鋼の成分などをもう一度確認してみる。鉱山の横に野積みになっていたのだから、毒が有るとか放射能的なものは問題ないと思うのだけど・・・

再び鑑定してみると、やはり風と土の性質が極端に強く出ている。風と土と言えば、電流属性とゲームの世界では決まり事があったが果たして・・・


そう思って、試しに手元に持ってきた緑魔鋼の塊に、雷撃呪文をかけてみる。


「サンダー・ボール」


パチっと、大きな火花を一瞬飛ばしたが、それだけ。

なんの変化も無く、そのままの形で存在している。

むしろ、電撃が全く阻まれることもなく、通過していった感じで、風や土の魔素系の魔法は、ほとんど全て素通りすることがわかった。これだけ硬ければ、錬金で装備を作れれば結構な防御力が得られるかとも思ったのだが、魔法に対しては火や水の魔法は殆ど効かないが、風や土属性の魔法の前では、紙装備ということになる。


まあ、いろんな鉱物をこれから研究して、新しい装備も作っていこうか・・・と考えていたが、ふと、思いついてしまった。


これだけ極端な性質なら、触媒に使えるんじゃ・・・


早速、できたばかりの錬金・練成術を使って、緑魔鋼の塊からナックルガードを作り出す。お試しだからそんなに凝る必要もないのだが、なんとなく風と大地をイメージした模様を入れてみたりする。


できたばかりのナックルガードを、右手に装着すると、軽く振ってみる。

やはり、この鉱物は普通の金属より軽い気がする。

存在感はしっかり有るが、取り回しに困るような重さを感じない。そのくせ、固有魔素の密度は実はかなり高く、自由魔素、人間で言うところのMPは、ほとんど無い、実質0だろう。そのため、破壊や加工が難しいのだろうと思われる。

では、そんなものでナックルガードを創ってどうするのかというと・・・


手近な的を探したが、何も見つからない・・・


しかたがないので、星までは届かないだろうということで、


「サンダー・ナックル!!」


数回素振りをした後に、空に向けて拳を突き上げる。


属性は雷、風と土の融合魔法だ。


もちろん本気ではなかったし、今回は実験のつもりだったので、パンチスキルは起動していない。

緑魔鋼の固有魔素が共振するイメージのみで打ったのだが・・・


純白の時間が終わった・・・


拳を振り上げた瞬間に、天と地をつなぐ豪雷が発生し、ものすごい轟音と光が周りに撒き散らされたのだ。

ただ、雷は天から地に落ちてきたわけではなく、その証拠に、オレの周りは何も影響を受けていなかった。

ただ・・・


”戦果を確認しました。夜陰に乗じて作戦行動中であった飛竜部隊を壊滅しました”


琴ちゃんが恐ろしいことを告げた。


「え?」


”どこかの勢力に属して居ると思われる、部隊ですが、現在ラインバック王国にあのような部隊を置いている正規軍はありませんので、問題ありません”


オレは慌ててステータスを確認した。


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種族:人間

名前:ルキノ

性別:男

年齢:11歳

職業:マーリン私塾塾生

称号:真拳神 大賢人 覇者 魔神 ドラゴンスレイヤー 大魔術師 時空の操者 大魔導師 剣神 神槍 拳神 神杖 斧神 スキルマニア 治癒神 破壊神 創世神 理を継ぐもの 簒奪者 鍛冶神 


レベル18

HP:118(×1000)

MP:0(×10000)


力(攻撃力):90(+12000)

頑丈(防御力):70(+14000)

体力(抵抗力):120(+20000)

精神力(魔法抵抗力):0(キャンセル)

素早さ(瞬発力):190(30000)


スキル:「スキル一式」


------------------------------------------------


なんだか、大幅レベルアップしている。

部隊って言ってたけど、飛竜に人が乗ってたとか無いよね?


”仮に乗っていたとしても、問題ありません。むしろ、一騎撃墜で経験値が余分に入る分、好都合です”


いやいや、そういうことではなく、やっぱり、人殺しって良くないじゃないですか。


”???今の世界では、そうなのですか?。200年以上前の世界は、大勢殺したものが英雄でしたが”


それは戦時中でしょ。戦争だと、如何に効率よく勝利するかが一番だから、そういった風潮にもなるんだろうけど、今は違うのよ。


”そうですか。どうやら、このバイオリアの戦力を見極める上での威力偵察を目的とした部隊であったと考えられますので、未然にそれを撃破したマスターは流石だと思っていたのですが。いずれにせよ、モンスターのみの編成の部隊であったため、人的な被害は残念ながら相手側には与えられておりません”


いやいや、残念ながらじゃなくって、怪我の功名だったんだけどね・・・って、威力偵察?

それって、この街を攻撃するつもりで近づいていたってことだよな?


「ルキノくん!!何処に居るの!!チョット来なさーい!!!」


考えていると、明らかに魔法で増幅されたと思われる、マーリン校長の声が響き渡った。


やっべ、派手にやり過ぎた。


オレは慌てて例の獣道に沿って校長の部屋の窓の前に駆けつけ、やっぱり裸で腰に手を当ててこっちを睨みつける校長に出会い、そのまま説教を食らうことに成った。


これは、罰なのか・・・ご褒美なのか・・・どっちでもいいですが、お願いだから服を着てください・・・



何かする度に、怒られている気がするルキノくんです。


じわじわですが、ブックマークが増えています。

何だか、ワクワクもしますが、チョット怖かったりもします。


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