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コブシの魔術師  作者: お目汚し
15/65

転生者なの??

出張から帰ってきました。

ゆっくりですが進めます。

自分の部屋に戻ると、混乱した気持ちを押さえて、ガリクソンに言われたことを考える。

思わぬ単語を口にしたが、ガリクソン自身もハンスやマーリンの前で話はできないと判断したようで、

部屋に来いと言われた。ということは、ガリクソン自身も転生のことについて、あまり公にできない理由があるはずだ。


推論を立ててみる。

1.実はガリクソンも転生者で、過去の記憶を持っている。

2.どこかで転生者と知り合っていて、パソコンなどの概念を知っている。

3.ここはやはり地球で、200年以上の時間が経過しているため、過去の遺産的な意味で知っている。

4.その他


4のその他は論外だと言われそうだが、推論を結論に結びつけると、大抵失敗する。

フラットに事象を考えるには、振り幅が必要だ。そのためのその他である。


4.その他は置いておいて、1のガリクソンも転生者だとした場合、ハンスたちは知っているのだろうか?

そもそも、ガリクソンも転生者だとして、あのステータスウィンドウを見た時点で、何故、パソコンなんて言う単語が出てきたのか?

確かに、ステータスウィンドウの表記はパソコンのDOSの画面に似ているが、それよりは、ゲームのステータスウインドウが現実味を持った感じだ。

ひとまず、疑問点が出てきたので、一旦思考を止める。


次に、2の何処かで転生者と知り合って居た場合。この場合も、パソコンという概念を何らかの方法で教えられていた場合、単語としては知っているだろう。

言われて見れば、オレのスキル一式は、パソコンで言うところのフォルダみたいに見えなくもない。その概念を知っているということは、誰かに聞いたのだろうか?

なんとなく、これが正解に近い気がする。


3のここが実は地球というのは、可能性が0とは言わないが、まず無い。

ルキノとしての経験が、ここが地球であるという可能性を否定している。

それ以前に、知識に関しては万能な存在である、森羅万象に問いかけてみても、現在地が地球で無いことは確かなようだ。

ちなみに、地球に戻る方法も有るのか?と思い、訪ねてみると、あっさりと答えが出た。

可能である。時間と空間を指定して、その時点にピンポイントで移動できるらしい。

ただ、そのためにはハッキリした記憶が必要になるのだが、やはり、地球での記憶がぼやけていて判然としない。

200年も隔離されていたのが、原因かも知れないが名前さえ思い出せないのは、ちょっと意外だ。




思考が流されているので、切り替える。


今のところ、よほどの不確定要素がない限り、1か2の推論が当てはまると思われるが、適当なのは2だろうか?

琴ちゃんに検索してもらった所、この世界に居世界からの転生者であるとされているものは、過去1000年の間で数十人いるらしい。

ただ、転生者だった者という存在もあるため、それを合わせると、現状で転生を経験したと思われる者が、この世界にも10名程度居るらしい。

もちろん、オレも含まれているのだが、元の世界も同じだった・・・となると、かなり限定されて、オレと同郷とされる存在は、今は居ないらしい。


地球からの転生者が、オレ以外に居るか?という問いに対しては、過去に数人。同じ時代からの転生者は2人。さらに、日本からと言うと、オレだけという結果だった。

オレよりも未来からの転生者は、居ない。ここまで確定してくると、同じ時代からの転生者であるという、もう1人がガリクソンの知り合いか?と思ったが、100年ほど前にこの世界での天寿を全うし、異世界に転移したということだ。

わけがわからない???


4.その他は、考えるだけ無駄なため、結論が導き出された。


ガリクソンに直接会って聞く!!


この1択になった。

そうと決まれば話は早いのだが、あれ?ガリクソンて何処に泊まってるんだ?

あのおじさん、はっきり場所を言っていないような・・・


琴ちゃんも森羅万象も、こんな質問には真面目に答えてくれない。探すか、聞くしか無いか・・・



というわけで、再びマーリン校長の部屋に戻ると、相変わらずハンスと一緒に居た。


「大丈夫、休めた?」


マーリンが気にしてくれていたみたいだ。


「ガリに何か言われたのか?何なら俺から文句言ってやるぞ?」


ハンスも心配してくれる。


「大丈夫だよ、それよりガリクソンさんは父さんの仲間なんだよね?やっぱり強いの?」


「ん?ああ、ガリは強いぞ!!。ああ見えて結構な魔法も使いこなす」


ハンスは嬉しそうに、仲間自慢を始めた、本当に友達が好きなようだ。


「何よりあいつは手先も器用で、いろいろな武器を使いこなす。そうだ、あいつの一番得意な武器はなんだと思う?」


さっき見た時には、スチールメイルを着たマッチョなオジサンという感じだったが、武器らしい武器はもってなかった。

ハンスも、武器は今は持っていないので基本的に、校長室に武器は持ち込めないということだろう。まあ、礼儀の問題でも有るが。


「分からないよ。でも、光の英雄の話を聞いて嬉しそうだったとすると、ドワーフ王みたいに秘剣使いとか?」


半分冗談でそういった。魔王討伐の話に出てくるドワーフ王は、秘剣と呼ばれたナイフ使いだ。投擲剣を得意としていて、小さなナイフはもちろん、ナイフと呼ぶには大振りな蛮刀まで、投げられる刃物は全て投擲したという。光の英雄のドラゴンキラーを、魔王の1体であった邪龍にいきなり投げつけたエピソードは、英雄譚の一つである。


「え?!なんでわかった!!あんな変わった奴なのに」


ハンスが驚いて聞いてくる。


「え?本当に秘剣使いなの?!」


逆に驚いて聞き返す。


「んん、あいつは、なんていうか・・・そう!!ドワーフ王に憧れてて、投擲剣を練習したらしい。で、秘剣スキルが使えるようになったそうだ」


ハンスがどう説明したものかと悩みながらも答える。


”ありえません!!”


突然、琴ちゃんが声を上げる


”秘剣スキルはドワーフ王のみが使えたユニークスキルです。それ故に、マスターも持っていません”


「え?どういうこと?」


「ん??な、何がだ?」


思わず声が出たところに、ハンスが重ねて聞いてくる。


「あ、ごめん独り言だよ。でも、ガリクソンさん我流で英雄の技を真似しちゃうって凄いね。僕、お話してみたいんだけど、ガリクソンさんは何処に居るの?」


琴ちゃんの発言は気になるが、確認する術が無い。実際に会って、鑑定スキルで覗かせてもらうしか無いだろう。


「ガリの居場所?あいつは今、街の冒険者ギルドに併設されている、宿屋に泊まっているはずだが、会いに行ってみるか?」


ハンスが教えてくれた・・・が、今の発言、絶対一緒に行くと言う感じだ。


「そうだね、そのうち会いに行きたいな。まだ、しばらく街に居るのかな?」


咄嗟に嘘を言った。


「そうね。出来ればガリクソンにも森の調査を頼みたいと思って、街に帰ってきたと聞いたから呼んだんだけど」


マーリンがそう言うと


「急に用事を思い出したとか言って帰っちまったからな。また、明日にでも頼みに行ってみるが、あいつ急に街から出たりするからな」


ハンスはそう言って一瞬考えた後、ふと思い出したように


「そういえばルキノ、お前何か聞きたいことが有ったんじゃないのか?」


とニヤニヤ笑いながら顔を近づけてくる。


そういえば、そもそもハンスたちにスキルや称号の件で相談するつもりだったことを思い出す。

だが、その矢先にガリクソンに意味深な発言をされ、現在に至っている。どうしよう・・・


「なんだ、好きな子でもできたのか?」


拍子抜けするほど的はずれな質問をしてくるハンス・・・


「もう、父さんには教えないよ!!」


オレは照れたフリを全開でして、失礼しましたと校長室を飛び出した


「えーその話私も聞きたい!!」


そんなマーリンの声も聞こえてきたが、そのまま外に駆け出す。


今日は、自主休講だ。このままギルドに行って、ガリクソンを訪ねてみよう。

塾の門を突き抜けて、そのまま街に向かって走る。


あれ?そういえばギルドって何処にあるのかな?と考えると、目の前に半透明なマップが広がり、光点が2つ示された。

地図の中心の点が自分の位置・・・そしてもう一つが・・・ギルドの場所!!

ナビマップのように、進行方向を上にしたマップが展開されている。琴ちゃんの仕業だろう。


万能な秘書はやはり役に立つ。そう思いながら疾走を開始したが、人気の無い路地裏などをしばらく走って気がついてしまった・・・

しまった、まだ昼過ぎだ。


ガリクソンは今晩部屋に来いと言っていた。だが、今はまだ昼を過ぎて午後に入ったばかり。少なくとも晩という時間ではない。

かと言って、このまま夕方過ぎまで街にいれば、夕食に戻らないオレを心配して、ハンスがどうなるかわからない・・・


「仕方ない戻るか」


そう思って、踵を返す。

何処をどう走ったのか・・・などということはなく、意識すればマップの光点はマーリン私塾に変わっている。

便利だけど、この機能ばかり使っていると、道を覚えなくなりそうだ。

などと考えてテクテク歩いていると。


「よう、坊主。ママとはぐれたのかい?」


おお、この王道的な展開。

そう思って声の方を見ると、身なりのそれほど悪くはない、だが、見た目がずいぶん悪いオジサン達が二人立っている。


「いえ、この先から来たので、すぐに戻れます。父もその先にいるので、問題無いです」


オレはそう言うとスタスタと歩き出す。


「坊主、こっちは行き止まりだぜ」


目の前の路地からさらに二人、先の二人と同じような格好の男が歩いてくる。

後ろを振り向くと、さらに三人。合計七人のオジサンにそれほど広くもない路地で囲まれた。


「坊主、パパは居ないようだぜ」


そう言うと、最初に声をかけてきた男が、オレの肩を掴むと押さえつけてきた。ちょっと痛い。


「坊主は俺達の事覚えてるだろ?」


後ろから来た三人組の、真ん中に立っている男がそう聞いてきた。


「???」


「おいおい、ご挨拶だな。知らない仲じゃないだろう?」


そう言ってもう一歩踏み出した。


「そうだぞルキノ、ご飯をおごってくれたオジサンを忘れちゃダメだろう」


そう言うと、路地に駆け込んできて、オレの肩を掴んでいたオジサンとほか一名をヤクザキックでふっ飛ばし、

三人組の頭に、壮絶なデコピンを三連続で叩きつけたハンスが、やれやれという感じで肩をすくめて立っていた。

デコピンを受けた三人組は、おでこから煙を出しながら気絶している。

ハンスが来た方向を見ると、道をふさいでいた二人組が、両側の壁にめり込むような体制で、気を失っている。


「て、テメエ、なにもんだ!!」


「オレたちに手を出してただで済むと思うなよ!!」


ヤクザキックで吹き飛ばされた二人が、意外にも無事な感じで声を荒げてきた。


「おいおい、勘弁してくれよ、うちの子が優しいオジサンを忘れちゃったみたいだから、教えてあげようと駆けつけたのに」


ハンスが悪そうな笑みを浮かべている。

あ、この三人組、街の入口で絡んできた奴らか・・・


「お、思い出したか?」


ハンスが気がついたようで、オレの頭をガシガシと撫ぜる。


「というわけで、息子もわかったみたいだから、今日のところはこれで失礼するぜ」


そう言うと、オレの手を引いて、この場を立ち去ろうとした。


「チョット待てや兄さん。この状況、どう落とし前付けてくれるんだ!!」


残されたオッサン二人が、一人は短刀をもう一人は両手に魔力の炎を灯して威嚇してきた。


「ったく・・・」


ハンスが舌打ちしたいのを我慢して吐き捨てる。


「一言言っておく、家の子に絡んで、これで済んだことを理解できないようなら。お前ら揃ってこの路地で風邪ひくことになるぜ」


オレからは見えなかったが、ハンスが振り返って男たちを見ると、二人は震え上がったように短刀を取り落とし、炎は消失した。


「わかったら、こいつら連れて、さっさと失せな。今度息子を狙ったら、テメエらの組織ごと潰すぞ・・・」


オレの方を振り返ったハンスは、いつもの人の良さそうな笑顔を浮かべて、行こうか・・・とオレの手を引いて歩き出した。


背後で、仲間たちを助け起こしながら、慌てて逃げていく気配がする。


「ルキノ、この街は決して安全な場所ばかりじゃない。飛び出したりせずに大人と一緒に歩くんだ。一人はダメだぞ!」


そう言うと、ハンスは大きな手でオレの頭をグリグリと撫ぜた。


「でも、人見知りだと思っていたお前が、塾のみんなと仲良くできたり、好きな子ができたりするとは、父さん嬉しいぞ」


後半は相変わらず勘違いだが、何やら涙ぐんでいそうなハンスの姿に、なんとなく手をひかれて塾まで戻ってきた。


ハンスはまだマーリンと打ち合わせがあるとかで、夕食まで自由時間に成ったが、今日の一悶着のせいもあり、問題が発生した。


困った。多分今晩、一人じゃ塾を抜け出せない気がする・・・


ガリクソンまで辿りつけなかった上に、ハンスが暴走しました。

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