ガリクソン登場
会話パートは話しが勝手に進むのでまとまりにくいです。
マーリン校長の部屋の扉をノックする。
「どうぞ」
校長の許可の声を聞いて、扉を開くと部屋に入った。
「どうしましたか?」
部屋の中には、思った通り、ハンスとマーリンが居た、そしてもう一人、
「・・・・」
無口な感じの、頑丈そうなスチールメイルをまとった、筋骨隆々なマッチョが居た。
「はじめまして、ルキノと申します」
すかさず、分離令!!
「・・・」
反応がない。
「こいつはガリクソン、まあ、俺の兄貴分だ。ガリ、こいつはルキノ、俺の息子だ」
ハンスが、それぞれを示しながら紹介してくれた。
ガリクソン、見るからにあの種族なんだろうなと思うが・・・
「ドワーフさんですか?」
「お、ドワーフを知っているのか?」
ガリクソンの口から、錆びたバリトンが響いた。声が渋い・・・
「小さいのに、ものしりだな」
口元に笑みを浮かべながら、といっても、口元はもじゃもじゃとしたヒゲが覆っており、よくは見えないが、笑うと、小さな目がさらに細くなり、無くなってしまったように見えた。
「こいつは、本ばかり読んでたから、知識だけはあるんだ。な、ルキノ」
ハンスが気楽な様子で聞いてくる。
「うん、魔王討伐の話にもドワーフ王の話しが有ったよ。光の勇者の話」
「お。魔王討伐の話も知ってるのか」
ガリクソンが嬉しそうに微笑んでいる。この人、本当はすごく優しそうだけど、見た目で損するタイプだと思う。
「じゃあ、このマーリンがその、光の勇者のパーティに居たことも知ってるか?」
ガリクソンが得意げに言う。
そういえばそうでした。物語の中では、五大魔法を巧みに操り、迫り来る魔物の群れを退け、大型の魔獣も魔法の一撃で仕留めた麗しの大魔術師らしいが・・・
「ん?」
小首をかしげ、こちらを見ているマーリンは、心のなかで褒めて欲しそうにしているのが丸わかりな顔をしている。読心のスキルはなかったはずだが・・・
「マ、マーリン校長は非常にチャーミングなところがあるので、物語の中の勇者と、今ひとつ一致しませんが、尊敬はしています」
と、無難に答えておいた。
「ん、そうか、尊敬か」
そう言いながら目線を明後日の方向にそらすが、明らかに嬉しそうだ。
「お前さんは何か話があって来たのか?もし、ワシがおると話しづらいようなら、席をはずすぞ」
ガリクソンがそう言ってきた。言いながらも既に席を立とうとしている。
「いえ、後でも構いませんので、私が失礼致します」
そう言って、退室しようとしたが。
「ルキノ、ガリクソンに遠慮することはない。父さんの古くからの仲間だから、気にせずに話せばいい」
と、ハンスが言う。
いやいや、それでも個人的に全く面識の無い方の前で、突然スキル全開になりましたとは、言いづらいのだが・・・
「何やら話しづらそうだし、やはりワシは席を外したほうが良いかの?」
と、やけに寂しそうにガリクソンが席を外そうとする。この間、マーリンは居て当然という姿勢を崩さない。
ある意味、大物である。
「いえ、そういうことでしたら、一緒に相談に乗って欲しいです」
意を決して、そう言った。ハンスの知り合いなら、いずれ話も伝わりそうだし、相談相手は多いほうが良い。
くれぐれも、他のみんなには内緒にして欲しいということを伝えてから本題に入る。
「実は、スキルが使えるようになりました」
沈黙。
ハンスは驚きのあまり、ガリクソンは意味が分からず、マーリンは何も考えてなさそうな顔で、それぞれ固まった。
「使えるようになったって、急にどうした?最近レベルが上ったと聞いたが、MPが増えたのか?」
ハンスが半信半疑で、しかし期待を込めて聞いてくる。
「いえ、相変わらずMPは0です。ですが、一部のスキルは使えるようになりました」
ごまかしながら、そしておそらく鑑定スキルでオレのステータスウインドウを見ているであろうマーリンの手前、
ギリギリ信じて貰えそうな嘘をつく。嘘のうまいつき方は、真実を混ぜることだと誰かに聞いた気がする。
「どうなんだ、マーリン」
「確かに、MPは0だけど、それ以外は良くわからないわね」
やっぱりマーリンは見ていた。そして、ステータスについて説明した。
「相変わらず、スキル一式ってのがわからないんだよね」
そう言って、首を傾げる。
「え、そんな項目があるのか?まだ小さかったけど、9歳の頃は山程スキルが見えていたぞ」
ハンスがそう言ってくる。
これまであまり意識したことはなかったが、この表示ってもしかして変なのか?
「一式とな?そんなのは聞いたこと無いな?」
ガリクソンも追従する。
しまった、当たり前だと思って気にもしていなかったが、そういえばミツクーニのステータスも、階層構造じゃなかった気がする。
「開いて父さんたちにも見せてくれないか?」
ハンスが言ってくる。
今更、琴ちゃんに頼んでステータスを変えてもらったところで、多分、マーリンにはバレてしまう。
冷や汗が背中を流れるのを感じながら、ステータスウインドウを開くと、可視化して3人に見えるようにした。
「ホントだ、9歳の時に見た時はもっとこう、スキルがズラーっと並んでて、凄い才能だと思ったけど、一つも起動してなかったんだよな」
ハンスは言い難いことをはっきりと言いながら、こちらの視線に気が付かないまま、首をかしげてステータスを見ている。
「どういうことなんじゃろうな?ワシもいろいろな戦士のスキルを見せてもらったことが有るが、こんなステータスは見たことがないわい」
ガリクソンも不思議なものを見るようにウインドウを眺めている。
「スキルが使えるようになったということは、どこかにそれが示されていると思うのだけど・・・」
マーリンがそう言いながら、あっさりとしたステータスを隅々まで見回している。
「えーと、どうしてですかね?」
いたたまれない気がして、どうしたものかと思案してしまう。
「あなた、本当はどうすればスキルが見えるか、知ってるんじゃないの?」
マーリンがいたずらっぽく微笑みながら聞いてくる。
「図星みたいね。目が泳いだわ」
そう言うと、ハンスに目配せする。
「なるほど、ルキノ、マーリンはこう見えて200年以上も生きている魔女だ。簡単にはごまかせないぞ。もし、スキルを見せてもらえるなら、見せてくれないか?」
ハンスは途中マーリンに叩かれながら、そう言ってきた。
そもそも、相談する気で来たんだから、当たり前か。
そう思えば、隠す意味もない。展開したところで琴ちゃんのいじったステータスだし。
「うん、よくわからないけど、こうすると開くんだ」
そう言うと、スキル一式の覧を展開した。
「お、こんなの初めて見た」
ハンスはそう言いながら、開かれたスキル一覧を見る。
「展開格納が出来るスキル欄て、なんなのそれ?」
マーリンも興味深そうに見ている。
ガリクソンだけは、それに目を見開いて言葉を失った。
「へー。剣術と体術が起動してるじゃない。なるほど、体術が使えたからミツクーニの魔法を殴れたのね」
と、マーリンが言った。
「なんだ、ミツクーニがどうしたって?」
ハンスは初耳だったらしく、マーリンに尋ねる。
「どーしよっかなー、教えてあげようかなー」
変な節をつけながらマーリンがおどけてみせる。
「おいおい、息子の事を隠す教師がどこにいる」
ハンスもマーリンにからかわれながらも、気になるようで詰め寄る。
部屋の中をぐるぐる移動しながら漫才みたいな掛け合いをしている二人を横目に見ていると、
ガリクソンが声を潜めてオレの腕を引いた。
「お前さん、”ぱそこん”とか、”ふぉるだ”という言葉に覚えは無いか?」
なおも周りをぐるぐる廻る脳天気な二人と全く異質な表情でガリクソンがとんでもないことを言った。
「もし、覚えがあるなら、今夜ワシの泊まっている宿屋に来るといい。そうしたら話してやる」
そう言うと、用事を思い出したと、そそくさと部屋を出て行く。
もう少しゆっくりしていけばいいのにと、マーリンは引き止めるが、ハンスの方は気にもせず、
またな、と送り出していた。
オレは、ちょっとつかれたからまた来ますと二人に告げると、ステータスを消して退出した。
ハンスが何か言っていた気がしたが、呆然としながら自分の部屋に戻る。
なんだ?、ぱそこんってパソコンだよな?。ふぉるだってフォルダーのことだよな?。
なぜ、そんな言葉をガリクソンが知っているのか。
その答えは、今晩ガリクソンを尋ねなければ明かされないであろうことを理解しながら、
いきなり聞かされた前世の単語に、頭が上手く回らなかった。
数日出張になりますので、更新できないと思います。
お楽しみいただいている方がいらっしゃれば幸いです。




