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コブシの魔術師  作者: お目汚し
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転生って言えばチートなスキル

初投稿もいいところなので、誤字脱字、表現など、ご意見が有れば、なるべくオブラートに包んで教えていただけると、気がつかない可能性があります。

目覚めると、自分が真っ暗な狭い空間に閉じ込められていることに気がついた。


夜の暗さ・・・と言うには、今までに感じた事がないくらい暗く、

闇・・・というものがどのようなものかを実感させる暗さであった。

息が詰まりそうな暗闇の中で、それでもどこかに電灯のスイッチでも無いものかと、立ち上がり、どうやら自分が全裸っぽいことに気がつく。

いつも寝るときは、パジャマで寝ていることに違和感を覚え、

熱くも寒くもない。今の環境に、ものすごい違和感を感じる・・・が、

それすらも、すぐにどうでも良く感じられてくる・・・


これは、夢を見ているのかな??


そう思うと、なんとなく辺りの散策を始める・・・

と、数歩歩いたところで壁に突き当たる。


もちろん、暗闇の中でむやみに歩いたので、壁に思い切りつま先をぶつけ、

その上、額から顔面にかけて、壁で痛打した・・・した??


あまり痛くない・・・


と言うか、壁が微妙に柔らかい。


そういえば、床も妙にふわふわする。

面白くなってジャンプしてみる。


トランポリンというよりも、ベッドのスプリングの上で跳ねる感覚に近い。


調子に乗ってジャンプしていると、今度は天井に頭をぶつけた。


やはり、痛くない。


しかし、真っ暗闇のなか、よく恐れげも無く動き回っているものだと

我ながら思うが、所詮夢のなかだしね・・・


ぼんやりとした思考の中で、今の状況におかれる前の事を思い出してみる・・・


そうアレは、忘れもしない・・・そう、・・・


全く思い出せない・・・


あれ???


オレは、日本に住んでいた。OK、覚えてる。

親父も母さんも日本人だ。OK

オレの名前は・・・???

仕事は・・??仕事??学生だったっけ??

え、何歳だった?あれ??


夢の中とはいえ、少々焦ってきた。

やはり、頭が寝ているといろいろ理論建てて考えられないようだ。


しかし、夢のなかだと気がついてから、随分と時間が経過している様に感じるが、

なかなか目が覚めない。


壁の前まで歩いて行くと、思ったより早く壁に激突し、

暗闇の中をフラフラ歩きまわった自分と、

自分の名前さえ思い出せないという感覚から、

イラッとして結構本気で壁を殴りつけた。

パシッ、と軽い音がしてパンチが壁に少しめり込んだ。


おお!結構爽快だ!


面白くなってきて、パシパシと壁を叩く。

別にボクシングも格闘技もやったことはない(と思う)

暗闇の中で、ただひたすらに、壁打ちをしている自分。


早く打ち込んでみたり、威力を上げて打ち込んでみたり、

いろいろな角度から打ち込んでみたり。

ただめちゃくちゃに叩いていた。


これって、床とかも行けるのかな??


格闘ゲームで言うところの、ダウン攻撃のように

肘を落としてみる。いわゆる、エルボードロップだ。


ズムッ


おお!これも痛くない!


膝立ちになると、今度は床を叩き始める。


重力に逆らわず拳を叩きつけるので、なんとなく壁の時よりも

威力がある気がする。


面白くなってひたすら床を叩き続けた後、ふと、天井で試してみたくなった。


おもむろにジャンプすると・・・頭から突っ込んだ。


やはり痛くはないのだが、殴るつもりで飛んで、頭から突っ込んだのは

ちょっと恥ずかしかった。誰が見ているわけではないのだが、

今度は、体感的なタイミングを合わせて、拳を突き上げてみる。


思ったより天井は高かったみたいで、加減した拳は天井にかすった。


意外にタイミングが難しい。そもそも、目標物が全く見えていない状態で、

拳を突き出しているということがおかしいのだろう。

意地になってタイミングを計っているうちに、連打したらどうか?と

考え、飛び上がりながら連打してみた。結構爽快だった。


だが、なかなか覚めない夢のなか、ただただ時間が過ぎていく、

これだけ体を動かしても、息切れ一つしない。全く疲れない・・・

そもそも、これだけパンチをしても、全く疲れないものなのか?

40代の体に鞭打って、こんなに動けるのだろうか?

この間も、会社のスポーツ大会で・・・!


そう、オレはアラフォーの会社員だった!!


なんのスポーツ大会だったか忘れたが、数日筋肉痛に悩まされたはずだ。

そう考えれば、これはやはり夢なのか?

ひたすら壁や床や天井を殴り続けてきたが、オレは何時間ここにいる??

ぼーっとしたまま過ごしてきたが、どのくらいここにいる??


完全に暗闇のなか、なんの違和感もなく、ひたすらに運動と言うか、

壁を殴り続けるという遊びに夢中になっていたが、これはなんだ??


「あなたは転生の時を待っているのです」


うお!!


いきなり声が聞こえてきた。どういうことかと訝しく思いながらも、聞いてみる。



転生って、どういうことですか??



怪しい声は、ホッとしたような雰囲気をにじませながら応えてくれた。


「いつ声をかけようかと機会を伺っていたのですが、何やら楽しそうだったので、放っておいたんです。やっと自分のおかれた状況に疑問を持ちましたか?」


相変わらず、闇の中で姿も見えない声は、すぐ横からしているようであり、遥か彼方から聞こえるようでもある。

と言うか待て待て、焦った気持ちのまま、重ねて尋ねる。


え?じゃあ、オレは転生しなきゃいけないような状態・・・つまり死んだってことですか?


一応、社会人たるもの、怪しい声であろうとも、初対面なら敬語である。ちょっと怪しいけど。

そんな敬語なオレに、気持ち悪いものでも見るような(見えてないけど)気配をにじませて声が応える。


「転生する前になって、急にしおらしくなったんですね。傍若無人な悪人だったはずですが」


え?ちょっと待て、オレは悪人ではないはずだが?誰かと勘違いしてるのか?

平均的な日本人で、平凡な両親に、それなりに愛情を持って育てられ、普通に会社に通って社会貢献していたはずなのだが?

そう思って、声に聞いてみる。


スミマセン、生前に何かご迷惑をお掛けしたのでしょうか?私もいきなり転生と言われて大変混乱していますが、なにぶん、初めての経験なモノで、手違いなどがありましたら、お詫びいたします。


そう言うと、深々と頭を下げた。どっちかわからないけど・・・

すると、先ほどの声の調子が、随分と戸惑ったものになり、問いかけてきた。


「先程から違和感を感じていました、あなたは転生の檻の壁をひたすら殴り続けていましたが、それは癇癪を起こしていたのでは無いのですか?」


??へっ?


声の主は、オレがイライラして壁を殴っていたと思っていたようだ。

そういえば、最初に殴ったのは壁に激突してイラッとしたせいだったが、

それ以降は暇つぶし?楽しくて殴っていた気がする。ということで、そのように伝える。


「では、前世の不満から、壁を壊そうとしていたわけでは無いのですね??」


心底ホッとしたような、それでいて、30%位疑いの混じったような声で尋ねられる。


ええ、なにをそんなに怖がってらっしゃるのかわかりませんが、私は比較的穏やかな気持でここには居ましたよ。


そう答えると、声の主はやはり、どこか恐れを含んだ声色で、聞いてきた。


「では、本題に入りますが、あなたは前世の記憶はどの程度ありますか??」


はて?前世の記憶?オレは日本人で、会社員。サラリーマンだった。職種は・・・そう、

営業職だった。だが、あまり詳しく思い出せない・・・


そう思っていると、謎の声がハッとしたように聞いてくる。


「まさか、別人!!」


え?!


「貴方、前世で全人類から憎まれ、魔王さえも配下においていた大魔導師だったという記憶はありませんか?」


???サラリーマンだったはずですが


「ああ、見失った・・・それとも消滅したの?」


スミマセン、全く話しが見えないのですが、どういうことでしょうか??


「私は、貴方が私の世界に転生してきた、大魔導師の魂だと思っていました。」


ほほう


「かの大魔導師は、神である私の力も及ばず、私が送り込んだ、あらゆる勇者も魔王も刃が立たず、どうしようかと思っていた矢先に、運命のいたずらか、命を落としたという話を聞いて、慌てて転生の檻に幽閉したつもりだったのに・・・」


入っていたのはオレだったと・・・


「貴方は誰なのですか!!!?」


知るかー!!!流れ弾みたいなものじゃないか!?何だ、オレは誰かの代わりにこんな場所に居たのか?

大魔導師?何だそいつ!オレは、しがないサラリーマンじゃ!!それでも、社会やみんなのために一生懸命に働いていたんだ!!


「分かりました。しかし、貴方を間違えて留めてしまい、申し訳ないことをしました」


む、誰にでも間違いはある。オレもしょっちゅう失敗をして、先輩に助けられたもんだ。


「そう言っていただけると、大変ありがたいです」


ところで質問しても、良いですか??


「はい」


あなたさまは、神様なのでしょうか?


「ええ、この世界の神・・・と言うか、意志というのが正しいでしょうか?」


世界の意志?


「詳しくはわかりませんが、私は世界にいろいろな角度から干渉できます。ですが、直接的な干渉を全体に及ぼすことはできないのです」


??概念がよくわかりませんが、主なお仕事は、神様的な感じなのですね?


「そう思ってもらえればよいかと思います。」


先ほどの転生と言うのは?


「転生とは、再び生まれてくることなのですが、通常は、輪廻転生と言って、同じ世界に転生します」


普通は?と言うと、異世界への転生もあるということで?


「はい、先程から、貴方が使われている、さらりーまん、という単語を私は知りません」


?むむ??


「かの大魔導師、*****も日本人という異世界の種族だったようです」


おお!!


「どうされましたか?」


オレも日本人です!!っていうか、いつの間にか神様相手に、敬語じゃなくてスミマセン!!


「まあ、では、そのせいで誤って檻に入れてしまったのかもしれませんね・・・」


で、オレはどうなるのでしょう・・・


「残念ですが、この精神体の世界におられるということは、貴方は前の世界で何らかの理由で亡くなっていると思われます」


・・・うすうすは感づいていましたが、そうですか・・・


「更に、檻の中に200年ほど閉じ込められていたため、元の世界に戻れたとしても、どうなるかわかりません」


え?!200年って、なんですか?


「え?、貴方は200年檻の中に居たのですよ。正確には215年ほど」


マジか!!・・・感覚的には、そんな感じはしなかったが、アレか、これは時間の進みが違うとか、亀を助けた何とか太郎?と同じか?


「亀太郎の話は知りませんが、もう少し早く人違いに気づくべきでした、スミマセン」


いや、どのみち死んでいたなら、仕方ないし、神様に謝ってもらうほど、大した人間ではないので、大丈夫っす。


「ああ、やはり貴方はあの悪人とは全く違うようですね・・・分かりました、すぐに転生出来るよう取り計らいます!」


え、大丈夫なんですか?


「はい、うまくいくかわかりませんが、転生は前世と同じ世界が良いですか?」


え、選べるんですか?


「はい、異世界か同一世界かは、一部の方は選べます」


一部か・・・今回は、オレが特別ということですか?


「お詫びの意味が強いです」


ガックシ・・・まあ、どっちでもいいですが、元の日本か、神様の世界か?ということですね?


「そうです」


あなたは、女神様?


「神に性別は無いですが、どちらにもなれます」


ニューハーフ的な?


「意味はわかりませんが、初めて侮辱を感じました。このまま彷徨いますか?」


いやいや、それは勘弁です。神様の管理する世界では、遠くの人と話をしたり、移動するときは機械を使うんですか?


「機械?よくわかりませんが、魔法か念話を使うのが一般的ですね。移動は転移魔法が使えればですが、普通は馬車です」


元の世界に戻ります!日本に戻りたいです!


魔法なんかは確かにファンタジーぽいが、きっと魔物も居る。そんな世界にいたら、それこそ、転生しまくることになりそうな気がする。

オレは、インドア派だ。


「そうですか、貴方のように礼儀正しい方が増えれば、私の世界も多少マシになると思ったのですが・・・」


そう言うと、神様が、オレを転生させてくれるような雰囲気を感じた。


あれ?転生って言えば、何か能力くれるんじゃないですか??

そう思っていると、


「ただ、こちらの勘違いで200年以上も閉じ込めた上、元の世界に戻すだけというのも申し訳ないので、お詫びとして、前世のスキルや能力と、檻の中での熟練値をそのままにしておきますね」


そう、それ!待ってました。ラノベやなんかのチートスキルってやつですね。でも、前世のスキルってなんだ??日本に転生したとして、意味はあるのか??


そう思っていると、何か衝撃が突き抜けていった・・・


あ、意識が遠くなる・・・聞き忘れた!!、記憶は?前世の記憶はあるのですか?・・・


答えが聞こえないまま、闇の中、意識だけが溶け込んでいくように薄れていった・・・



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