表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖精の湖  作者: 葵生りん
1章
1/63

プロローグ

 ちなみに、このお話の舞台のイメージはモデルがありますので先に紹介しておきます。

「にじのみずうみ」というイタリア民話の絵本でいわさきちひろさんがとても綺麗な絵を描いています。

 感銘を受けたわりに、絵本とは程遠い黒い話ですけどね……(遠い目)。美しい世界のイメージだけは!!

挿絵(By みてみん)








 目を刺すほど鮮やかな森の緑。

 澄み渡った空の青。

 花々の赤、桃色、黄色に菫色。

 それらを映し込み、まるで虹を溶かしたような美しい七色の湖、レテ。


 昔から妖精が棲むと言い伝えられているその湖の(ほとり)で、私は妖精に会った。

 湖のほぼ中央で湖面にひっそりと佇み、飛来した小鳥と戯れる様が雪のように可憐で儚げな、美しい湖の妖精に。


 その姿形は――湖面に佇んでいるという不可思議を除けば――人と変わるところはなかった。羽もないし耳も尖っていない。体が水のように透けているとか、手のひらに乗りそうだとか、そんなこともない。

 けれど、その儚げな美貌は妖精と呼ぶのに、あまりにも相応しかった。




 声を掛ければ消えてしまいそうな乙女の姿に、私は言葉もなくただ見とれた。


 妖精と戯れていた小鳥が私の視線に気づいて飛び去った。

 小鳥を見送った後、妖精がゆっくりと振り返る。

 光を浴びて空気に溶けていきそうな銀色の髪が、透けそうなほど白い肩をさらさらと滑り落ちた。

 菫色の澄んだ瞳が細められ、桃色に色づく唇の端がわずかに上げられる。

 ほほえみとともに、鈴の音のような可憐な声音がこぼれ落ちる。


「――私と遊んでくれる?」






 記憶はそこでぷつりと唐突に切れている。

 まるで、夢だったかのように。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ