衝突
そうこうしてルニアの暴走が始まった頃。
学園とはまた別の場所でもルニア暴走とは違うガチものの事件の知らせが届いてたことによって軽い騒ぎが起きていた。
「何ぃ!?キヨくんが闇ギルドの奴ら(こいつら)に襲われた!?」
「うぬ。私も見ていたし、はっきりと聞いたから間違いではないぞ!」
騎士団本部にて、ガルダスが例の二人組を引き渡して、つい先ほどまでお世話になっていた騎士に事情を説明していた。
そのガルダスと騎士の間には手の指をそれぞれ2、3本折られている上に全身凍傷な二人組がいたりする。
「それでキヨくんはどこに?」
「奴らのギルドを見張っている筈なのだ」
「わかった……いくぞ野郎ども?」
動ける騎士団員、約40名をかき集めると、キヨとガルダスが聞いたという闇ギルドの本拠地へと彼らは向かった。
そして当事者であるキヨが本当に闇ギルドの本拠地を見張っているのかというと……
「おい、少し聞きたいことがあるんだが……」
「あ?なんだぁ、ガキじゃねぇか……退け、殺すぞ?」
闇ギルドの団員に話しかけていた。細身な割には随分と柄が悪い男である。背中には中々の業物と見える、片手剣らしきものも装備している。
「はっ、殺す?バカ言うな。聞きたいことがあるって言ったろ。ここは闇ギルド『レッド・リボルバー』で合っているか?」
「ちっ、気に食わねぇ……そうだよ、合ってるよ。そして俺はここの団員だよ……もういいか?そんなこと聞くってことはヤバい依頼してぇんだろ?」
「あぁ、そうだな……ちょっと凍っててくれ」
「はっ?」
その団員が答えるより早く、キヨはその男を氷漬けにした。そしてそのまま、闇ギルドへと入っていく。
「そこのガキ……テメェ、なんのつもりだ?」
キヨが入って早々に、そう質問された。彼らの多くが既に戦闘の準備が終わっていた。
仲間がやられた際の魔力に反応してこのような状態になっているのだと、キヨは推理すると、投げ掛けられた問に答えた。
「なんのつもりだと?用があんのは幹部連中なんだよ。三下どもは引っ込んでろ」
「……あ?」
いきなり現れたかと思えば、仲間を倒し、あまつさえ自分たち闇ギルドに所属するものを三下呼ばわりである。
短気な者は直ぐ様キヨへと襲いかかった。
「糞ガキ、舐めてんじゃねぇぞ?」
「舐めてんじゃなくて、見下してんだよ。事実……よっ?」
槍を構え、突撃してきた太った男の刺突を紙一重でかわし、槍を手で掴んで、クルリと回すことで武器をもぎ取った。キヨは、もぎ取った槍の柄で、男の鼻を潰した。
「こ、こんのぉ……」
「だから三下は邪魔だっての」
槍を適当な所へと突き刺して、男を凍らせたキヨに、他のメンツも攻撃を開始した。
闇に、裏に生きる者として、舐められたままではいられない。そんなことになれば、生涯『負け犬』と呼ばれるからだ。
そしてそれは、仕事が無くなることを示す。裏では生きられなくなってしまう。
そうならない為に、彼らは舐められたら万倍にして返すのだ。そんな集団に囲まれているキヨはというと、余裕の表情だ。
「へっ、相変わらずだ……来いよ、全員揃って愉快な氷像にしてやるよ!!!」
そして、倉庫のような、それでいてバーのようでもある闇ギルドの本拠地にて、熾烈な戦闘が開始された。




