接触
さて、早とちりの新兵を部屋から引きずり出し、取り調べが再開される。兵士から、どういう経緯でキヨがここに呼ばれたのか、詳しい説明を聞かされた。
「……路地裏でボコボコにされてたのが闇ギルドの構成員で、そいつがキヨという学生に倒された……ねぇ?」
「それがこの前の土曜日のことなんだ。こちらとしてはその日のアリバイを確かめないといけないんだけど……時間帯としては、お昼……誰か証明できる人に宛てはないかい?」
キヨは記憶を漁る。まず、土曜日の昼食はどこで取ったのか。日野の店だ。というか、1日中ずっといた。
割りとすんなり証人が出てきた為、日野が到着、アリバイが立証されるまでキヨたちは別室に移されることになった。
「しかし良かった……と言うべきかな?その日のアリバイがしっかりしていて」
「巻き込まれた時点で良くないだろ……」
「ははは、まぁそうかもね……」
取り調べをしていた兵士にそう言われ、げんなりと返すキヨ。それに対して、苦笑いするしかない兵士。
「まぁ、君が無実だったとは言え……奴らは君に接触、あるいは拉致するだろう。元々無関係だったのに、これ以上巻き込むわけにもいかないからね、護衛に何人か連れていくよ」
「多分、どうあがいても巻き込まれると思うから、護衛はいらん」
流石にそれは……と兵士も困った顔である。一般人、それも学生を巻き込むというのは、近衛兵士として大問題である。
「だがしかし……」
「あ~……兵士さん、諦めた方がいいぞ?こいつの勘は中々外れないし、言い出したら聞かないから……」
どこか遠い目の日野。ルニア関係のことは巻き込まれたら最後、逃げられないとは キヨの弁。
そしてキヨがルニア関係だと言っているなら……と日野は諦観しているのだった。
「さてと……」
兵士を説得したキヨは、暫くは目的もないようにブラブラと歩いていた。しかしそれも数十分だけ。今度はフラフラと人気のない裏道へと姿を消した。
「なぁ兄者、目標が裏道に行ったぞ?どーする?」
「当然、追うしかないだろう。弟よ」
キヨの近くに居たらしい、兄弟らしき小柄な二人組。見た目だけで言えばそこまで怪しくない。だが、小声とは言え会話の内容が怪しい。
フラフラと人気のない裏道にいくキヨについていく二人組。
「人目もないし……弟よ。どうする?」
「気絶させて連れてけばいいんじゃないかな、兄者」
人気のない裏道であるためなのか、最早怪しい会話を隠す気はないらしい。周囲から完全に人の気配が無くなった瞬間に、キヨへと飛びかかった。
「なっ!?」
その足音に反応したキヨに、兄弟の攻撃が当たった。雷と焔。それぞれがキヨを穿った。
血を噴き出すと思われたキヨの体が、水に還る。
「「アクアゴート!?」」
「御名答、『アイスロック』!!!」
アクアゴートで分身と入れ替わり、二人の後ろへと回り込んだ。そして二人の体を魔法で拘束することに成功した。
体を拘束され、しかも予想外な方向から声を掛けられたことで受け身をとれずに転倒していた。
「んじゃ、色々教えてもらおうか……誰の差し金だ?答えなければ……」
「「答えなければ?」」
「指を一本ずつ折っていくぞ?」
キヨは、片方の男の指に手をかけながらそう告げた。




