クラス分けテスト─実技試験─
──30分後──
ルニアやポップル、イツキ、ティーシャは試験が終わり、イチャイチャしながらも、さっさと帰って行った。
これによって、非モテの方々は集中が大きく乱れたらしく、ルニアが帰って直ぐに実技試験を受けた生徒たちは瞬く間に出てきた。
(……ご愁傷様……)
と、キヨは心の中で嘲笑いながらも手を合わせる。
(性格も人間性も駄目なんだから、気にしない方がいい……なんてのは、慰めにもならないだろうな……)
キヨからすれば、あの手の非モテは、大抵顔良ければいいのだろうと推察した。しかし、言ったところで意味はない。頭悪い奴らだなぁ、とキヨは思うのであった。
キヨからすれば、顔が普通で中身よしの女の子、顔良し中身最悪の女の子がいたとする。キヨからしたら、確実に前者の方がいいとのこと。後者ならお断りだとも思うとか。
最後にものをいうのは中身。少なくともキヨならそうなるようだ。
何が言いたいかと言うと、ビッチ'sなんかのどこがいいかが分からん。あれに幻想を抱くのも理解不能というわけである。
「……次、キヨ・アルケム!」
(っと……呼ばれたな……んじゃ、いっちょ……特待生目指しますか!)
【サンクチュアリ】に入り、教師と向き合う。佇まいから、貴族の家柄であることがうかがえる。
最も、立ち振舞いから察しただけだが。そして、貴族だが、そこまで強くないとも、キヨは感じた。
「キヨ・アルケムだな?俺はモブ・セマカ……じゃあ、このコインが地面についたら試合開始……でいいな?」
モブ先生が、手のひらに持っていたコインを弾く。思いの外、高く上がったコインは、やがて重力によって進路を変える。
(……なるほど、この間に魔力を練ってるのか?……なら……)
キヨも戦闘準備を整える。やがて空中にあったコインが落ち、モブ先生が魔法を放ってきた。
「【サンダーランス】!!!」
雷の中級魔法【サンダーランス】。文字通り、雷で出来た槍。それに対してキヨは
「【アクアポール】!!!」
水の初級魔法【アクアポール】。単なる水柱であった。しかし、身代わり程度にはなった。
その隙に、今度は風の中級魔法【エアリアルホップ】を発動させる。
これは、球体状の魔法を踏むことで発動する、ちょっと特殊な魔法だ。踏むと、激しい突風が、体を吹き飛ばしてくれるという、普通なら使われない魔法である。
如何せん使い勝手が悪く、慣れない内は体を強打する場合が多い。しかしながら、魔力コストはかなり低い。
モブ先生の【サンダーランス】が、キヨの水柱に直撃する。そして勢いよく地面から煙が立つ。
キヨは【エアリアルホップ】の本体である球体を、上から踏みつけ、モブ先生の真上に行く。もちろん、モブ先生も馬鹿ではない。
何の目眩ましもせずに真上に行けば
「【サンダーレイ】!!!」
迎撃を受けるのは必然。しかしそれは偽物。そして、チェックメイト。
【サンダーレイ】に攻撃されたのは、水の中級魔法【アクアゴート】。つまり、水で出来た身代わり。キヨ本体は……
「……合格、ですよね?」
モブ先生の後ろにいた。服のポケットにでも入れていたのか、手にはナイフがあり、それをモブ先生の首筋に当てていた。
「……ちっ……合格だ……」
負けたことがよっぽど悔しいらしいモブ先生は、隠すことなく舌打ちした。
種明かしすれば単純で、始めに……【アクアポール】に【サンダーランス】が当たったところから解説していこう。