サバイバルend
キヨが目を覚ますと、視界には白い天井。どうやら、寝かされていたようだと、キヨは判断した。ベッドから体を起こす。と同時に部屋の扉が開いた。
「おっ、起きたか」
「サカタ先生か……」
入ってきたのは、担任のサカタ。ため息を吐き、ついで話はじめる。
「しかしお前がここまでボロボロになるとはな~」
「そりゃお宅らの検査が甘いのも原因だっての……魔剣なんざ普通は弾くだろうが……」
「魔剣?そんな物騒なの、弾くに決まってるだろ?世迷い言を……」
まさか、とでも言いたげなサカタ先生に、鋭い口調でキヨは告げる。
「あったから言ってんだよ、先生。つか、この学園の貴族連中もおかしいぜ?この機にレイプしようとするなんざ……」
「おいおい、そりゃあ……」
「氷浸けで転移した連中と、その後に転移したフォイのことだよ……」
「……そうか……」
様々な感情の入り交じった顔で立ち上がるサカタ先生に、キヨは声をかける。
「魔剣を持ってたんだ。教師にも共犯がいるだろうな……それに、信じられないが、何らかの催眠系の強い魔法を使うやつがいると考えていいだろうな」
「催眠系の……?そんな魔法がないこと、お前も知ってるだろ?何を……」
「そう考えれば納得がいくんだよ……何人か、見た顔があった……学年別トーナメントの予選のときにボコボコにしたやつだからな、俺の力は知ってるはずだ……そんな奴が、俺とやり合おうとするか?」
「……」
「おかしいことが多すぎる……催眠属性なんて、訳のわからない新しい属性が存在する……かもしれないな」
「……そうか……面白い推測だな……」
「そうだな、我ながらとんでもない推測だよ……」
サカタ先生が出ていき、キヨはベッドへと身を委ねる。ギシッとベッドが軋む。
「新しい属性……か……」
もし催眠属性なんてものがあったら、とキヨが思考を加速させようとした瞬間
「キヨ!!!目ぇ覚めたのか!!!」
「やかましい!!!」
「あがっ!!!」
部屋の扉が無惨に破壊され、マグナたちが凄まじい勢いで入ってきた。キヨはいつの間にか置いてあった果物セットからリンゴを投げつけた。
リンゴに直撃したのはマグナ。見事に鼻が潰れ、相当な痛みに顔を押さえてしゃがみこむ。
「病室では静かにしろ、バカ共」
「「「「「すいませんでした」」」」」
ガルダス、ミラ、ルピア、セニア、ダルラが即座に腰を90°に曲げた。
「ったく……で?」
「キヨが目を覚ましたって聞いたから……つい……」
「ついってお前ら……まぁいいや、あの後はどうなった?」
「あの後ね?」
要約すると、だ。
キヨが気絶した後、まずルピアが骨折。続いてマグナがどこからか取ってきた毒キノコで痺れ、さらにダルラが途中で足を滑らせたことに誰も気づかず、行方不明になった。
あまりの酷さに、キヨも開いた口が塞がらなかった。
「お前ら……どうやったらそんなことになるんだ?」
「うむ……」
「「ごめんなさい」」
キヨの言葉に、どう答えたものかとガルダスが困った顔をして、ダルラ、ミラが反省の言葉を絞り出した。
「っとに、俺はお前らの今後が不安だよ……」
頭痛でもするかのように、キヨは頭を押さえてそう呟いた。




