一部の貴族は清々しい程に下図い
「……おい、予定とは違うじゃないか……」
「アイツ、邪魔するつもりだろ?」
「つまり……残念ながら、アイツを殺らないとダメみたいだぜ?どうする?」
「そしたら、殺るしかないだろ。アイツ、一人だけだし」
学園の生徒、約60人といったところだろうか。中級以上の貴族が現れた。その下卑たその目には、顔には醜い欲望と憤怒浮かんでいた。
キヨはその目を見て、
「……はっ……本当に下らねぇよ……」
嘲笑った。しかしその顔に浮かぶ感情は、怒りだけだった。そんな、怒りを隠さないキヨを、貴族たちはまるで気にも止めてはいない。
「この人数に勝てるとでも思ってんの?あいつ……筆記トップとか言ってるけど、本当はバカなんじゃねぇの?」
「アハハ!!!だよな!!!なんせ貴族65人相手なのに平民、それも魔力少ない奴だけだもんな!!!」
圧倒的な人数。それが現在、彼らがキヨを歯牙にも欠けない存在だと認識させている要因である。そして、魔力が少ない=弱いという刷り込みが、なお彼らがキヨを甘く見ている要因の一つ。
「……てか、なんでコイツ、ここにいるんだよ」
「答えてやるよ、三下ども……」
「……あ?なんつった、今……三下だと?」
「黙れ三下……テメェら屑の考えなんて、お見通しだって言ってんだよ!!!」
キヨの咆哮。そこには、確かな苛立ち、憤怒の感情があった。いや、それだけではない。軽蔑、嫌悪の感情も、そこにはあった。
「お前らはまず最初に、リュードミラ、コートニー、ブレイズの三人のマントに【マジック・チェイサー】……追跡魔法をかけた」
「なっ!?なぜ……」
なぜ分かった……とでも聞こうとしたのだろう。だが、もし聞けば、その時点で全てを認めたことになる、そう考えたのかは分からないが、貴族は押し黙った。
「……その追跡魔法を用いて行おうとしたこと……この人数だ。Sクラスの人間しかいない俺たちのチームを潰すため……ってところか?」
この答えを聞いた貴族たちは、再び嫌悪感を抱かせるような嫌らしい笑みをこぼした。だが、笑みをこぼしたのはキヨも同じだった。
彼らがこの顔になることはわかっていた。最初はわざと違う解答を見せる。相手が油断した時に、揺さぶりをかける。
「……じゃあないんだよな?三下ども……」
ギクリと、数名の貴族は身を固くした。キヨは貴族を睨みながら、本当の答えを、口から紡ぎ出していった。
「俺たちを潰すため、ってんなら……誰か一人に追跡魔法をかければいい……なのになんで三人に追跡魔法をかけたのか……問題はそこだ」
少しずつ、焦らすようにして核心へと触れていく。
「リュードミラ、コートニー、ブレイズ……この三人の共通点は、大きく3つ。一つは、Sクラスであること。2つ、位こそ多少低いが、知名度が高いこと。3つ、女性であること……」
「…………」
無言。そんなことは異にも返さず、キヨは口を動かす。
「……貴族って奴は大抵、自分の名前を世に知らしめよう……なんて糞みたいな欲があるよなぁ……それに、領地を広げる為に、強い子供が欲しい……なんて欲とか……快楽の為に労力は惜しまないよなぁ、お前らは……」
「……で?」
ついに、堪り兼ねた貴族の一人が声を発した。キヨは、怒りを隠さずに、続けた。
「……テメェら、あの三人をレイプしようとしてるんだよな……おい……ふざけんじゃねぇぞ!!!」
「……くくっ……アハハハ!!!いやぁ、正解正解ぃ……さすが筆記トップ、とでも言っておこうかぁ……でもさ、今のお前に何ができるんだよ……」
見下した態度の貴族が、嘲笑してキヨへと問いかける。それに対してキヨは
「今の俺に何ができる……か……そうだな……」
言葉が途切れたと同時に、魔法を発動させた。周囲を氷の壁が包まれた。まさに氷の箱に、彼らはいることになった。
「テメェら、ゴミの掃除くらいなら出来るさ」




