サバイバル
「なぁ、良かったのか?川から離れて……」
「大丈夫だ。もしあのまま進んでたら、今頃厄介なことになってたさ」
現在、キヨたちのチームは再び森の中にいた。何故か、というと
「まさか複数のチームが組むなんてねぇ……」
ミラが言った通り、複数のチームが組み、川沿いで罠を張っている可能性が高かったのだ。恐らく、4、5チームほど抜けられてから、カモを包囲する算段だったのだろう。
「でも、凄いなぁ……」
「え……何が凄いのよ、セニア?」
キヨの背中をじっと見ていたセニアがボソリと呟いた一言に、ルピアが首を傾げた。
「だって、あんな短時間で相手の作戦を見抜いたんだよ?」
「前もってサカタ先生から注意しとけって言われてたからな」
「ひゃっ!?キ、キヨくん!?」
まさか聞いているとは思わなかったセニアは、キヨが答えたことに驚いた様子である。そんなセニアに構わず、淡々と答えを述べていくキヨ。
「複数チームによる挟み撃ち。これに必要なのは、ある一定の条件を満たした場所に誘い込むことだ。
端的に言えば、逃げ場のない地帯だな。あの川沿いには、その条件の一部を満たす場所があると地図に載っていた。あの川の先には、崖と滝がある。崖と滝をのぼる……詰まる所、進むには幾らか時間が必要。そこで挟み撃ちにするつもりだったんだろうな……。
で、足りない条件を満たすのに、あいつらは多人数で敵をおびき寄せて、かつ退路を潰すことで挟み撃ちの成功条件を擬似的に満たした訳だ。
その証拠に、背後からの追撃が一度もなかった。普通、倒すつもりの敵が逃げて、しかも背中を向けているなんて状況は、追撃してください……って言ってるようなもんだしな。
まぁ、この挟み撃ち作戦、完全に嵌まると抜け出すのは困難だが……途中で抜けるのは簡単だ。条件が揃ってないんだからな」
日が傾き始めた時。キヨが足を止めた。マグナたちも同じく、キヨの近くで足を止める。
「もうじき暗くなるから、ここいらで野宿する。それと……食料を取りに行って、寝床を探す訳だが……3人一組での行動にする。異論は認めん」
(このサバイバル……想像してたものとは違うが、危険だ!!!)
新たに分けられたメンバー、キヨとルピア、ミラのチーム、マグナ、セニア、ダルラのチーム。そして、集合場所の確認。キヨの指示に、他のメンバーは首をかしげる。
「おい、キヨ……」
「異論は認めん……そう言っただろ?……マグナ、気をつけろ……ヤバいぞ……」
小声で忠告するキヨに、マグナは訳がわからないという顔をするマグナ。しかし、マグナは分かったと答えると、三人と共に寝床を探しに行った。
「……さて、俺たちは食料を取りに行くぞ」
「どうやって?」
「川の一部を氷の壁で区切る。そこに雷の魔法を打って、魚を感電させる」
「な、なるほど……」
移動の際に使った川とは違う川が、ちょうどキヨたちの近くにあることが地図から分かった。たったの数分でその川に到着した。
「……近くに敵はいないな……よし!」
ピキピキッ。キヨが【アイスウォール】を2つ発動。川の一部を隔離、そこにルピアが【サンダーボール】を打ち込むと、数匹の魚が川から浮かび上がってきた。
「……そこそこ、かな?」
「だね」
「とりあえず、魚を人数分以上取れたんだ、早く戻ろう。ついでに、帰りがてら山菜とかが見つかればなお良しだな」
魚を集めると、集合場所へと向かう。その道中で、食べられるキノコや食べられる山菜を収集することも忘れない。




