事前準備
「いやいや、キヨがチームに入ってくれるのは嬉しいさ!!」
ニコッと、人懐こい笑顔を浮かべるマグナ。対して、なにか申し訳なさそうな顔をしているのはルピアやセニア、ダルラたちだ。
「そ、その……良かったの?」
「あのチームなら一位確定だよ?」
「だよな……なんでこのチームに?」
そう。ルニアたちのチームはおよそ学園内でも最強のチームのはずだ。そこに入れば、高得点は確実だったことは想像に難くない。
「あのチームに入るなら、死んだ方がマシってやつだ」
が、キヨは全く気にしていない、どころか完全な拒否を示した。三人は、キヨのこの反応に愕然とした。キヨとルニアは親友である、というルニアの言葉を耳にしていたからだろう。
「相変わらずだなぁ!!!あっはっはっは!!!」
それに爆笑して答えるマグナに、彼ら三人は驚いた。まるで、そう答えると知っているかのような態度に。
「え……えぇ?」
驚いている三人に、ざっくりではあるが事情……というよりは事実を述べるキヨ。話を聞いた三人も、ようやく事実を飲み込んで、一言。
「彼、最低ね。周りの彼女らもだけど」
「ですね」
「だよな」
流石にこの反応には苦笑いのキヨとマグナ。事情を話した五人は、チーム申請の為にサカタ先生のもとへと足を向けた。
「先生、この五人でチームを組もうと思います」
「おぉ……お前らか……ゲッチェル、このチームはどうだ?」
申請だけで終わりかと思っていたキヨたちに、サカタ先生のその一言は衝撃を与えた。
「は、入れるなら……このチームに入りたいです……」
当の本人までこちらを無視してサカタ先生と話す。
「まてまて、先生、どういうことですか?」
最早このチームのリーダーとなりつつあるキヨが、サカタ先生に事情を話せ、と暗に示した。それに、いの一番に答えようとしたのは、ミラだった。
「私、一応有名人だから……皆チーム勧誘に来ると思うんだけど……その」
はぁ、とため息をついてからサカタ先生が話をする。
「つまり、
→こいつは有名人
→皆が皆、勧誘する
→厄介ごと発生
→ルニア登場、勧誘してくるんじゃね?
→こいつはルニア好きじゃない、てか嫌いらしい
→とりま、こっちで保護
→4、5人チームにいれてもらうことにするか」
「長ぇよ。よくわかったけど……で、お前らはミラが入るのに賛成か、反対か?」
半ば呆れ顔で、キヨはマグナたちに聞いた。が、彼らが反対する訳もなく。
「じゃあ、ゲッチェルはこのチームに入るってことで決まりだな。メンバーは……
キヨ・アルケム
セニア・コートニー
ダルラ・ドルグラン
リュードミラ・ゲッチェル
マグナ・フレイム
ルピア・ブレイズ
以上6名っと……なんか聞きたいことあるか?」
「先生、ガルダスは連れていっても問題ないのか?」
「魔族だったよな……まぁ魔族っつっても子どもだしな……まぁ大丈夫だろ。これ、全員1枚持ってけ。他にないなら帰っていいぞ~」
詳しいことが書かれたプリントを渡すと、邪魔だとでも言わんばかりに手をシッシッと振るサカタ先生。帰っていい、とは言うものの……
「少しくらい作戦考えた方がいい……よね?」
「……なら、寮でいいだろ……寮暮らしの俺とミラは痛む食材は無くしておきたいところだしな」
と、六人は学園寮の、キヨの部屋へと集まった。丸い、そこそこ大きな机に、彼らは座っていた。
「まぁ、ゲッチェルさんは俺らのこと知らないだろうし……作戦っても、お互いの武器とかを知らないと無理ってことで!!!改めて自己紹介だ!!!」
「少しは静かにしろ、マグナ」
「さーせん」
まるで謝る気のない声に、イラッとくるものを感じるキヨだが、とりあえずこの場では我慢した。そして、
「俺からな~!!!マグナ・フレイム、火の7大貴族の三男!基本的には両手持ちの剣を主体に、時折火の魔法を混ぜる近接戦闘型!!!魔力量は8,000、火属性だ!!!よろしくな!!!」
続いて、マグナの左隣にいたダルラ、キヨ、セニア、ルピアの順で自己紹介を始める。
「次は僕……かな?ダルラ・ドルグラン。平民だ。魔法主体の遠距離型。で、使用する武器は短剣。魔力量は7,600の、土属性。よろしく!」
「キヨ・アルケム。平民。そこの馬鹿と同じく機械剣主体の魔法を混ぜてるが、ある程度はどの距離でも対応できる、全距離対応型になる。魔力量は4,500、使える属性は風、水、氷」
「私はセニア・コートニー!!!位は下級貴族。私はダルラと同じく魔法主体にハンマーを混ぜた近距離型よ!!魔力量は7,200、属性は雷。よろしく!」
「ルピア・ブレイズです!えっと……中級貴族……です……武器の槍と魔法を半々で使う中距離型です!……魔力量は7,000、属性は火と雷です……よ、よろしくお願いしましゅっ!!!」
最後に思い切り噛んだ。が、それを無視してガルダスがいきなり出てきた。
「ガルダス・ザークというものだ!無属性魔法を主体にする遠距離専門の、キヨの使い魔だ!!武器はない!!魔力量は20,000なのだ!!!」
「ガルダス、いきなり出てくるなよ……まぁ今日のところは許してやるよ……」
話の腰を折ってすまん、とキヨが皆に頭を下げる。そして、ミラに自己紹介を促す。
「えっと……皆知ってるかもしれないけど、リュードミラ・ゲッチェルです。一応は平民です……舞台の役者をやらせてもらってます。
えっと……武器は杖です、長いやつですね……なので、魔法主体の遠距離型です……護身術くらいなら杖でもいけますけど。
魔力量は8,500で、属性は水と光です」
全員の武器、得意な攻撃範囲が分かった。キヨは更に質問をする。
「この中で回復魔法が使える奴は手を挙げてくれ」
上がった手は3つ。キヨ、ダルラ、ミラである。回復魔法は、あまり知られていないが土属性にも存在する。勿論、水と光よりも効果は低いから知られていないのだが。
「へぇ……ダルラは回復魔法使えるのか……土属性はなかなかないから、探すのに苦労したろうに……」
「まぁね……調べるのには、本当に苦労させられたけど……役立つからいいけどさ?」
感心するキヨを見たダルラが、少し照れた顔でそう答えた。
「これで近距離が2名、中距離が1名、遠距離が3名うち一人が使い魔、全距離対応が1名か……内、回復魔法使用可なのが3名……」




