照れるキヨ、ヤンデレらしい転校生のカオス
「ごちそうさまでした!」
「お粗末さま……」
ご飯を食べ終えた三人は、食後のお茶を飲んでいた。すると、突然リュードミラが大声を出した。
「あ、あの!!!」
「ん?」
「あの時はありがとうございました!!!」
「……は?あの時?……どの時か分からんが……」
お礼を言われるようなことは、晩御飯をご馳走したくらいしか、とキヨは思っていたので、『あの時』とやらのことが分からない。そのことに気付き、リュードミラは説明する。
「ほら!!!あの、暴漢から助けてもらった……」
「暴漢……暴漢?……えーと……あぁ、裏路地にいた雑魚どもか?……いや……その……あれは馬鹿から理不尽に追われてて、邪魔だったからボコしただけだ……」
ようやく納得したキヨだが、あれはルニアに追われて逃げた先に不良がいて、絡んできたから潰しただけなのだ。助けた云々は忘れていた。
それに追記すると、助けたところでルニアのイケメンフェイスに女子は惚れ、キヨにお礼を言うことはなかった。
まぁ、つまるところ
「ふふっ……顔、赤いよ?」
「やかましい……」
かなり照れている訳だ。それと同時に、嬉しかった。はじめて人に感謝されたような、そんな気がしたから。
「……もう9時だぞ……さっさと明日の準備でもしておけよ……」
気がつけば、時計が示しているのは、9時。今日の騒ぎに荷ほどき、明日のことを考慮したキヨは、暗に休むようにと、リュードミラに言う。
「はぁ~い……あっ、その前に……生徒手帳、貸して?」
「?あ、あぁ……ほら」
なんで生徒手帳?と疑問に思うものの、キヨはあっさりとリュードミラに生徒手帳を渡す。自身の生徒手帳も取り出して、一通り弄ると、彼女は生徒手帳を返した。
「私の連絡先、登録しといたから!!それから、私のことはミラって呼んでね!!!おやすみなさい!!!」
「……なんだ?……」
生徒手帳の画面には、[リュードミラ・ゲッチェル 登録しました]という表示が浮かんでいる。
と同時に生徒手帳にテキストメッセージが届いた。
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from リュードミラ・ゲッチェル
ヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネヨロシクネ(以下略)
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「……さて、俺も片付けて寝るか……」
生徒手帳を制服のポケットにしまった。つまり、見なかったことにした。そして、マグナたちの連絡先を知らないことに、今になって気づいたのだった。




