テンプレな長話とか、美少女転校生とか
始業式。それはどこの学校でも、学期始めにはあるもの。そして、始業式といえば、
「え~……新学期になりました。皆さんこれからも……」
お偉いさんの長話もセットである。学生は基本的にこれを聞き流しているわけで、キヨも例に漏れず、話を聞き流していた。
長話と始業式が無事終わり、教室に集められているキヨたち。先生が来るまでの間、大抵の場合、生徒らは自身の夏休みの思い出話をするわけだが。
「おら、席つけ~」
何故だろうか。サカタ先生は教壇にいた。生徒たちは渋々、といった表情で席につく。
「やることあっから早く来たんだよ……喜べ、生徒ども……席替えだ!!」
教室が歓声に包まれた。夏休み前、席替えは一度としてなかったことも影響しているのだろうが。
サカタ先生の指示により、女子、男子の順でくじを引いていく。くじには番号が書かれており、サカタ先生お手製座席表にも番号が振られている。
全員が座席に着く。キヨは窓側前から4番目、後ろから2番目という中々のポジションだった。前には
「マグナか……」
「よっ!!!って、キヨの後ろはダグラじゃん!!!」
「今さらかよ……まぁそれ言ったら」
「私たちは隣じゃない!!!」
「だよね~?」
マグナの右隣には、ルピア。ダグラの右隣は、セニアがいた。しかし、キヨの隣は空席。それにクラス中が気づくと、サカタ先生は
「なぁに、大人の事情だ。少し待ってろ」
と、悪戯小僧のような顔をして、教室を後にした。暫く、クラスがざわついたのは余談。さて、サカタ先生がクラスに帰ってきた。そして
「転校生だ、生徒ども!」
衝撃の事実(笑)を告げた。クラスが一気に騒がしくなる。
「先生!!女子ですか?男子ですか?」
「男子は喜べ、女子は泣け!女子だ!!!」
「可愛いですか?」
「そいつぁ見てのお楽しみ!!!転校生、入って来てくれ!!!」
入ってきたのは、
「はじめまして、リュードミラ・ゲッチェルです!知ってる人もいるかと思いますが、舞台に立たせてもらってます!!
えっと……魔力量は8500、属性は光と水です!!!こちらに来たのは、色々と事情があるんですけど……仲良くしてもらえると嬉しいです!!!」
ショートカットにしたピンクの髪。二重の、青い大きな瞳。すっと通った鼻に、薄いピンクの唇。そう、ルニアの惚れた少女がいた。自己紹介が終わり、一瞬、間が空いてから
「「「「キターーーー(゜∀゜)ーーーー!!!!」」」」
男子(ルニア、キヨ、シド、マグナ除く)の歓声が轟いた 。その声を遮り、ルニアと、リュードミラの声が響く。
「「あの時の!」」
ルニアの視線はリュードミラに。リュードミラの視線はキヨに、それぞれ向いていた。ちなみにキヨは机で何か作業していて、リュードミラやルニア等の声は完全にスルー。
「あ~……ゲッチェルはキヨを知ってるのか?あいつの隣の席な、お前」
「あ、はい……」
サカタ先生が声を無視して話を続ける。リュードミラが席についたのを確認すると、再び口を開いた。
「とりあえず今日は宿題提出したら帰っていいぞ~!転校生に質問あるなら勝手にやっとけ、俺は知らん」
我先にと宿題を提出した生徒が、リュードミラの周りに群がる。キヨは前が空くと、ようやく腰を上げて宿題を提出。
クラス中が転校生に群がる中、キヨとシドだけがさっさと帰っていった。




