努力以外にも、大切なことは多々ある
魔力コントロールの修行を暫く行い、キヨは半分ほど魔力を失うと、違う修行を始めた。
「……【ムグナルク】……っ!!!」
身体強化と、【ムグナルク】の同時使用。高い魔力コントロールをもってはじめて同時使用が可能になる、難しいもの。
しかし、使えればそれに見あった高い効果が得られるのだ。特にキヨは、接近戦が得意であることも含めれば、なんとか習得したいところである。
しかし、維持できたのは、5分程度。なかなか上手くいかない。しかし、キヨは再び同じことを行う。
結局、魔力が残り2割になった時点でキヨは修行を終えた。対してガルダスは、未だ魔力コントロールの修行をしていた。
「……」(へぇ……もう4つ維持できるのか……)
さっきまで3つしか維持出来なかったのにも関わらず、たった数時間で4つ維持できるまでになっていた。
「……ふぅ……あ~、もう無理……」
ガルダスもほどなく修行を終わらせた。
「よし、じゃあ学食でご飯食べて帰るぞー」
「りょ……了解だ……」
学食でご飯を食べ、二人は寮へと戻った。ふと、キヨたちの部屋の扉の前に、人影が見えた。
「よっ!!!久しぶり~!!!」
赤髪赤目、火の7大貴族であるマグナだ。その姿は若干日に焼けて黒くなっていたが、それ以上に分かるのは、体つきの変化だろうか。
以前よりもしっかりとした筋肉。かといって、さほど筋肉質ではない。絞られた身体に仕上がっていた。
「マグナか……本当に久しぶり!!体術の修行、かなりしたみたいだな……」
「へへっ……分かるか?」
「む……しかしすごい筋肉だのぅ……太過ぎず細過ぎず……というのか……」
まぁ、廊下で話すのも……とキヨは部屋にマグナに入れた。そして、夏休みの思い出話をし始める。
──回想中──
「……それはまた……」
キヨの、あまりの災難の多さに苦笑いのマグナ。キヨもなかなかどうして、マグナの思い出話に苦笑いを隠せないのだが。
「爺さんにしごかれたって……岩持ち上げて30分そのままの体勢とか……拷問の間違えだろ」
「だよな~。挙げ句に、「実践だ!!」とか言って魔法を永遠と身体強化だけで避けろとかさ~」
「……zzz……zzz……」
盛り上がる二人を余所に、ガルダスは既に寝ていた。キヨはガルダスをベッドに寝かせ、再びマグナと話に花を咲かせた。楽しい時間は、あっという間に過ぎるもので。
「……っと、もうこんな時間か……俺もそろそろ戻るわ」
「あぁ……うわっ!!!もう11時かよ……わかった……じゃあな~」
時計の長針は、11を指していた。まだ夏休みとは言え、貴族のマグナはあまり長居するべきではないらしい。
キヨも、マグナを見送ると部屋の明かりを消してソファーに寝転がる。目を閉じると、直ぐに睡魔に身を委ねる。
久しぶりのソファーは、やはり寝るには不向きだと、キヨは翌日の朝に思ったとか。
──夏休み最終日──
夏休みも最終日ということで、キヨは修行を休んだ。とは言え、何もせずに休んでいる訳ではない。
翌日の準備をしていた。鞄に、筆記用具や愛用の機械剣、ワイヤーなどをしまっていた。勿論、始業式なので戦闘はないのだが……ルニアに巻き込まれる可能性を考慮しての準備だった。
一方ガルダスは、今日もしっかりと修行をしていた。残念ながら体術はキヨがいないために行っていないが。
「……ふっ!あっ……やった……6つできた!!!」
魔力コントロールの修行。つい最近まで3つの魔力球しかきちんと維持できなかったガルダスは既にその倍の魔力球を維持できるようになっていた。




