結果が欲しくば努力が一番だと思う
キヨとガルダスが故郷から帰り、数日後。二人は寮近くの森、もはやガルダスの指定席となりつつあるそこにいた。
「じゃ、始めるか……」
「うん!!よろしくお願いします!!!」
キヨは身体強化を、ガルダスは【ムグナルク】を使う。キヨはガルダスの【ムグナルク】が発動したことを確認すると、コインを弾く。
コインはキィンッと音を響かせて、中を舞う。やがて、コインは地面へと吸い寄せられ、チャリンと音を立てて地面に落ちた。
瞬間、ガルダスはキヨへと走る。キヨも駆け出す。そして、二人の拳が衝突する。
ガルダスは反対の拳を構え、つき出す。が、キヨは軽く掴むと、ガルダスを放り投げた。
空中で回転。体勢を直したガルダスだったが、既にキヨの蹴りがガルダスへと放たれていた。それを屈んで避ける。
屈んだ状態から、足に力を込める。そして、さながらロケットのようにキヨの顎目掛けて跳んだ。
対してキヨは、わざと体勢を崩す。後ろへ倒れることで頭突きを回避。空中へと飛び出したガルダスを下から蹴り上げる。
蹴りを、腕をクロスさせて防いだガルダス。滞空時間が僅かに伸びた。キヨはガルダスが動けない間に立ち上がり、ガルダスから距離を取った。
「よし、前よりはよくなってるぞ?」
「本当か!!!キヨ!!!」
「あぁ、本当だ……よし、今日はここまでだ。後は魔力コントロールの修行だ」
そう言うと、キヨは魔力球をいくつか作り出す。そして、その魔力球の維持をしつつ、魔力球が歪にならないように注意する。
ここ数日、ガルダスの訓練内容は以前とは大きく変わっていた。と、言うのも
──学園に帰ってきた日の夜──
「キヨ!!!」
「ん?なんだ?今は飯作ってるんだが……」
帰りがけに食材を買ったキヨは、部屋のキッチンで料理していた。疲れているため、外に食べに向かってもいいのだが、あまりお金を使いたくないとのことで、キヨがご飯を作っている。
食堂は残念ながら、休みになっていたため、ただ飯は断念せざるを得なかった。さて、そんな中で、ガルダスは自身の希望を述べる。
「私を強くしてくれ!!!」
「はぁ?……あぁ、修行つけてくれってことか……明後日にはそうするつもりだったが?」
「本当か!!!」
「嘘言ってどうすんだよ……ほら、これ運んでくれ」
ご飯をよそったお皿をガルダスに渡す。キヨも、おかずをのせたお皿を運び、ご飯の準備が整う。
「いただきます」
「いただきます……キヨ、本当に修行つけてくれるのか?」
「……ご飯の時くらい、極力修行の話は忘れてくれ……」
────
なんてやり取りがあったからだ。現在では、今までの内容とは大きく変わっていた。
例えば、魔力コントロールの修行。以前は単に魔力の放出を体に染み込ませることを重視していたが、現在は完全にコントロールのためだけの修行になっている。
現在キヨが行っている修行方法だ。ガルダスも今はこの方法をとっている。が、
「ぐっ……ぬぬぬ……」
4つ展開した魔力球は、すぐに歪になり、破裂する。ガルダスの最高記録は魔力球3つまで。
因みにキヨの最高記録は、魔力球25個。とは言え、魔力量的には、キヨの総魔力量の半分近くを削るため、中々そんな数を出して行えない。参考までに言えば、帝クラスならば、35個が維持の限界である。
つまり、キヨはかなり高い精度で魔力コントロールを行っていると言える。最近は、1つずつ魔力球を作り、3つ作るまでに、いかに速く、綺麗な球体で作り出すことができるか、という方法を試している。
他にも、ガルダスの修行に加わったのは、体術。もっとも、これはオマケ。
ガルダスたっての希望ではあるが、小さい内に筋肉をつけすぎるのは良くない。いかに魔力という補助があっても、激しい動きは体を壊すことになる。
キヨはそれを防ぐために、護身術に近い戦闘方法を教えている。それも比較的短い時間だけだ。




