帰郷
ウッドタイガーの依頼を受けた日から、はやいもので24日が経過。ギルドでの家庭教師アルバイト最終日となった。
この間にも、様々な出来事が多くあった。キヨは、ユウから拳銃を譲り受けた。なんでも、ユウの知り合いが作った試作品とのこと。形は、黒いマガジンタイプだ。
ガルダスがギルドの子供たちと混じって依頼を受けたり、シド監修のもと、魔力コントロールの修行や魔物討伐をしたり、マリアの指導による回復魔法習得等々。
「いや~、助かったよ~!」
相変わらずの、張り付けたような笑顔のシドと、
「いや、こっちの方こそ助かったさ。回復魔法も使えるようになったし……」
苦笑いのキヨがいた。子供たちの宿題も全て無事に終わり、昼食を食べた二人は、喫茶店にいた。要は打ち上げのようなものだ。
「でも意外だったね~?」
「?なにが?」
「キヨ、割りと教えるのに慣れてたじゃないか」
あぁ、そのこと……とキヨは問への答えを返す。
「下に二人いるからな。使い魔含めると三人か……」
「へぇ……下に二人も……」
「まぁな。あいつらなら、プライン学園来てもトップ取れるはずだ……俺にくっついてきて勉強も戦闘訓練も馬鹿みたいにしてきたからな」
「……その子たち、いくつなの?それと性別は?」
「男女一名ずつで、一つ下の受験生。とは言え、勉強は全くしてないだろうな……余裕すぎて……」
紅茶をすすりつつ、キヨは答える。というか、その答えに若干……いやかなり変な汗をかいたシドがいた。
キヨレベルの頭を持った男女二名。しかも戦闘も出来るのだから、恐ろしい。あまり知りたくなかった事実に、シドは心の中で叫んだ。
(キヨ……君たちは化け物かっ!?)
と、ここでキヨが立ち上がる。
「じゃ、そろそろ帰るわ。明日から実家に顔出しに行くから、その準備もしねぇといけないしな」
「そっか……じゃ、また学園で!」
喫茶店を後にした二人は、そこで違う方向へと向かった。キヨは学園の寮へと、シドはギルドへとそれぞれ向かった。
翌日。キヨは実家に帰る為の馬車に乗っていた。貴族ではないキヨは当然、乗り合い馬車にだが。
予定では、片道3日、つまり往復で6日ほどかかるとのこと。
「久しぶりに行くの!キヨ!!」
「そーだなー」
見事な棒読みな返事をする少年に、ウキウキとした表情の子供という、全く正反対な少年と子供のコンビがいた。というかキヨとガルダスだった。
とはいえ、あまり乗り合いの馬車で騒ぐ訳にも行かないので、ガルダスは生徒手帳に戻ってもらった。
道中で、魔物や盗賊などに襲われたものの、キヨとガルダス、それに雇われたギルド員がことごとく撃退していった。そのため、被害無く、馬車は目的地へと到着した。
「ありがとうね、坊やたち……お駄賃にこれ、あげるわ……?」
乗り合い馬車に一緒に乗っていた老婆が、去り際にキヨとガルダスへのお礼といって、飲み物をくれた。中身は、フルーツジュースのようだ。
「ありがとうございます……」
「ありがとー!」
二人のお礼を聞くと、老婆はゆっくりとした足取りで去っていった。キヨは氷魔法で飲み物の一つを冷たくすると、ガルダスに渡す。
ガルダスは「ありがとー」と言い、飲み物を一気に飲んだ。果物の甘い香りが、ガルダスの鼻を抜け、甘味が舌を刺激する。
「うまいっ!!」
「叫ぶな、やかましい」
ガルダスを引きずり、その場を後にするキヨ。足の動くスピードは、速い。
ちなみに、家族に会うのが楽しみ、というわけではない。かと言って、仲の良い友達がいるわけでもなく、単にこの街が嫌いなだけである。




