種あかしと、決意
「あぁ、おそらく【ムグナルク】のおかげだろう」
暫くして、気を失っていたキヨが起きた。シドたちはキヨに心当たりがないか聞くと、こう答えた。
「身体強化は厳密に言えば魔法じゃない。魔力を微量放出して、それを体に纏う。イメージとしては、擬似的な筋肉……といったところか。魔法とは違うものだ、ということが分かればいい。
対して【ムグナルク】は魔法。こちらは魔力を体から一度切り離して、体の周囲に張り付けている。コントロールは魔法陣に任せている。身体強化が擬似的な筋肉なら、こちらは鎧。
擬似的な筋肉と鎧。つまり身体強化を行った状態でも使用可能ってわけさ。ただ、身体強化との併用は、思った以上にコントロールが辛かったが。
どうやら、おかげで軽い怪我で済んだみたいだな……」
どうやら、こういうことらしい。身体強化に【ムグナルク】の同時使用。使うにはコントロールの上達が課題らしい。
「いや~しかし、ごめん」
話を聞いたシドが、頭を下げる。キヨが止めるも、シドは頭を上げない。
「僕がしっかりしていれば、こんなことにもならなかった……」
「そうね……こちらも、難易度の高い依頼を受けさせてしまったわね……シドがいるからと油断してた……ごめんなさい」
と、マリアまでもが頭を下げる。キヨはため息をつくと、話し始めた。
「大丈夫ですから。ぶっちゃけた話、もっとヤバい状況とかありましたし。謝罪されただけでも充分ですから。
魔物の動きが予想以上に素早いこともわかりました。まだ伸びしろがあることも……てか逆に重いんですけど……」
あ……、とようやく二人が頭を上げた。そして、キヨの顔は確かに怒っていなかった。
「ガルダスも、守ってくれてありがとな?」
「うん……」
ガルダスの頭を撫でながら、お礼を言う。しかし、ガルダスはとても元気とは言えない、いや、浮かない顔だろうか……そんな表情をしている。
キヨは、なぜ沈んでいるのかは聞かなかった。理由が分かっているから。
「魔物、怖かったな……」
「……う"ん"……」
「ごめんな……怖い思いさせて……」
「キ"ヨ"~!!!」
ガルダスは、キヨに抱きつく。本心を、恐怖を、悔しさを、吐き出すように。泣いて、泣いた。




