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SUPPORTING ACTOR - 天落の魔術学園 1st-  作者: MIST・CAT
5th episode 夏季休暇 ─スキルアップ─
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人生諦めないことも大切

混乱したガルダスは、ひとまずの目標を定める。ウッドタイガーを近づけない。まずは、それだった。



(ウッドタイガーをキヨに近づけない!……キヨなら、こんな時にきっと目眩ましをする……かな?その後は……)



【魔砲・貫】と【魔砲・衝】を乱射しながら、キヨならどうするかを考える。知識がないガルダスは、キヨの行動を真似ることを、彼の言い付けを守ることを選んだのだ。



「【魔砲・衝】!!!逃げる!!!【ムグナルク】!!!」



身体強化を行い、ガルダスはキヨを担ぐ。そして、ウッドタイガーから背を向けて猛ダッシュする。その背後から、何かが飛んできた。



木の槍。それがガルダスの足に直撃する。バランスを崩し、ガルダスと、担がれていたキヨの二人は葉っぱのクッションに倒れこむ。



「魔法!?野生の魔物も魔法が使えるのか!?」



動揺を隠せないガルダスは、ついつい叫ぶ。幸運なのは、【ムグナルク】のおかげで大したダメージはないことだろう。叫び声は、森の中にいるシドたちに届いたこと。



「【ムシルド】!!!」



魔法が飛んでくるなら、防御しながら後退していくしかないと、ガルダスはキヨの行動を真似ることを繰り返す。



(キヨはいつでも諦めなかった……かといって、無理はしなかった……)



諦めない。けれど無理はしない。無謀なことと、無茶をすることとは、違う。地力をわきまえ、引き際をわきまえる。それがキヨ。



そんなキヨを見てきたガルダス。彼の使い魔であるのだから、自然とキヨのようになるのは必然だろうか。



「むぅっおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」



再び立ち上がり、キヨを担ぎ、ガルダスは爆走を開始する。後ろに【魔砲・貫】や【魔砲・衝】、【ムシルド】をやたらめったらに放ち、ウッドタイガーを順調に引き剥がす。



「あと……ちょっと!!!!がっ!?」



外からの光。それを視認したガルダス。しかし、目の前に、木の壁が突如として発生、結果としてガルダスは思い切り顔、いや鼻を強打した。



「いつつ……何が……」



「「ガァァァァァァァァァァ!!!」」



目で確認は出来ない。しかし、その咆哮は、この壁は、あの二体のものだと分かる。



「ウッドタイガー……」



木の『魔法』を使う『化け物』。魔物。すぐに二体の木の虎が、その姿を見せた。既に彼らの纏う鎧は、ボロボロ。ガルダスの【魔砲】シリーズの乱射、【ムシルド】が効いていることが分かる。同時に



「「ウボオォォォォォォォォォォォ!!!!」」



怒り、興奮、優越感、諸々の感情さえ垣間見えるような叫び。それは、ガルダスの心を挫くには充分だった。



「あ……あぁ……わあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」



恐怖に、絶叫するガルダス。魔族とはいえ、まだやだ五歳の子供。この年齢で死に直面したのだ。絶叫で済むならば安いものだろう。



もしかしたら精神的なショックで、心臓が止まるかもしれない。精神的なストレスと体の痛みで、自我の崩壊が起こるかもしれない。そうならないだけ、素晴らしいと言えるだろう。



絶叫するガルダスと、気絶したままのキヨに歩み寄るウッドタイガー二体。一歩、また一歩と二人に近づく。



その姿は、ガルダスには死神に見えただろう。圧倒的な威圧感。まだまだ幼体とはいえ、命の奪い合いに勝ってきたウッドタイガーなのだから。



ガルダスの絶叫。それは、自身の位置を示すことにもなる。そして、ガルダスとキヨの命を救った。



「いたぁぁぁぁぁ!!!!バロストォォォォォォォ!!!!」

「任せろ!!!!」



「《蛇腹剣》!!!」



シドの使い魔、バロストの手には、闇属性の魔力で出来た、一本の剣。バロストは、剣の間合いには遠いはずの距離から自身の持つ剣を薙ぐ。



剣が、伸びた。



魔力で作られた剣は、ガタンッと伸びる。それはいくつかのパーツのように一定間隔で、だ。遠心力により、重さを増した剣の先端は、いとも容易く鎧の破壊された二体のウッドタイガーを切り裂いた。



「あ……」



「ごめんね……助けるのが遅れて……」

「我が主、この少年が!!!」



ガルダスを抱きしめるシド。ガルダスは、暫く呆けていたが、やがて助かったという事実を理解し、



「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」



泣いた。シドはそのままガルダスを抱いたまま、キヨの容態を確認する。



「出血が多い……止血……まず患部を氷で固める!!!」



バキリと、キヨの体の傷の上には氷が発生した。発生させたのはシド。 ガルダスとキヨを担ぐと、バロストを生徒手帳に入ってもらい、ギルドへと急ぐ。



「……【転移】!!!」



無属性魔法でも最上級の【転移】を唱える。瞬間、三人はギルド入り口にいた。すぐにキヨはギルドの治療室に運ばれ、手当てを受けた。



──1時間後──



「「…………」」



重苦しい空気が、辺りを漂う。シドとガルダスはお互いに無言を貫いている。



「ふぅ……治療、終わったわよ?」



ガチャリと音を立てて、治療室の扉が開かれた。扉から出てきたのは、マリア。シドとガルダスは静かに部屋へと入る。



「調べた結果を言うと……貧血ね。すぐに起きるでしょ……」



「へ?」

「は?」



マリアが、治療した結果から、倒れた理由が貧血。と、いうのも、



「腕の傷以外、数が多いだけで傷はどれも深くないよ……不思議なことに……」



爪や牙を立てられたにしては、浅い傷。傷口が多いために血が多く流れた&脳震盪で倒れた、とのこと。謎は、なぜどれも傷が浅いのか、だろう。



「分からないわね……普通なら、もう少し傷が深いはずなんだけど……身体強化以外の何かをしたとしか考えられないわ……」



話した結果、キヨに話を直接聞いた方が早いのではないか?という結論に達した。

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