脇役と使い魔
そして、入試当日……もとい、単なる使い魔召喚の日。
入学試験と言うのは嘘である。使い魔召喚の後にネタばらしされるのが通例であり、規則である。
そんなことも知らずに、キヨや数多くの学生はプライン学園の訓練所にいた。
召喚方法は至って簡単。一滴、血を垂らしてから魔力を召喚魔法陣に注ぐだけ。
そして、キヨの番。風の初級魔法【ウィンドカッター】で指先を切り、血を垂らす。
そして、魔力を注ぎ込む。
直後、まばゆい光が、魔法陣から溢れる。陣からキヨの使い魔が、姿を見せた。
──体中に大量の傷を作った、魔族の子どもだった──
キヨと試験官は慌てて魔族の子どもに駆け寄った。幸い、擦り傷だけで、骨折や脱臼といった怪我もなかった。
キヨは水の中級魔法【アクアヒール】を魔族の子どもに掛けると、魔族の子どもは水に包まれる。
訓練所の端で、暫く待っていると、魔族の子どもを包んでいた水が消える。治療完了の合図だ。
「ふむ……一応、様子を見ようか……それから契約しなさい」
試験官に促されたように、キヨは魔族の子どもの傷などを調べる。虐待とかではないようだった。
(……もしかしたら、森の中を走り回っていて、大量に擦り傷を作っていただけかも……けど、何だ?このボロい毛布は……)
「ん……」
「おい、大丈夫か?」
「ここは……?」
と、魔族の子どもが目を覚ました。だが、現状が分からないらしい。
とにかく説明することにした。使い魔召喚をしていること、呼び出したら魔族の子ども……つまりは当人が傷だらけで倒れていたこと。治療したこと。そして今。
「つまり……私が……えと……あなたの使い魔になるのか?」
「あぁ……名前言ってなかったな、すまん。キヨ・アルケムだ、よろしく」
「ガルダス・ザーク、こちらこそよろしく頼む!」
使い魔契約は、大抵の場合は魔力の交換になる。キヨはガルダスに魔力を流し、ガルダスはキヨに魔力を流した。そこで、ある違和感が生まれた。
(……なんだ?属性が感じられない……)
普通なら、使い魔契約時に、お互いの得意な属性が分かるらしいのだが、ガルダスの魔力からは得意な属性がわからなかった。
ガルダスの方は、キヨの属性が分かったのが嬉しいのか、はたまた使い魔になれたことが嬉しいのかはしゃいでいるが。
それは後だ、とキヨはそれよりも重要なことを聞いた。なぜ傷だらけだったのかを。が、
「さぁ?覚えているのは、森を走ってて……崖から落ちたところくらいしか……」
記憶喪失になっていた。とにかく、とキヨは動いた。
「……とりあえず契約が終わりました……」
試験官に契約したことを報告する、と共に気になることを聞く。
「あのガルダスって子の属性が分からないんですが……」
「属性が分からない?……おかしいな……普通なら分かるんだが……検査してみるか」
流石に始めての事態らしいく、急遽ガルダスの属性検査が始まった。検査には、丸い水晶を使用する。魔力量と属性が分かる。
魔力に反応して、属性の色(火なら赤など)に変わり、色の濃さによっておおよその魔力量が分かる。
結果は……
「無属性!?……変わりと言わんばかりに、魔力量があるのか……」
そう、無属性。普通なら、一属性ある。たまに二属性、極稀に三属性持ちが生まれるが。
無属性は、身体強化、部分強化、転移、念話……それ位しかない。戦闘用と言うよりは補助用だ。
……つまり……
「戦闘は期待できないな」
試験官が呟く。
──普通なら、な──
使える魔法がないなら、創ればいい。それだけだ、とキヨは内心で思っていた。
「……全く……今年は荒れそうだ……」
再び試験官は呟く。その言葉に、キヨは困惑の色を浮かべた。
「さ~て、ネタばらしするか」
いきなり性格変わった……とかはキヨとしてはどうでもいいらしい。それよりも、明かされた秘密が驚きだった。
前述の通り、実は使い魔召喚は試験じゃないとか、実は入りたい学校に入れるとか、そういった話だ。
「つまり、わざと落ちようとしたところで意味ないと……」
試験官の顔が、無慈悲にも縦に降られた。
キヨの案としては、
プライン学園受けたけど、落ちちゃった
→てな訳でアズマ学園行くからじゃ~ね~サヨナラ~
……という作戦だった。
終わった、確実に終わった。キヨが唖然としたのは、言うまでもないだろう。