キヨ、はじめてのクエスト
「そっ……なら、あえて言わなくていいかな?」
「二人で勝手に話を進めないでくれないかしら?」
キヨとシドが勝手に話を進めていた訳だが、マリアとガルダスには展開が速すぎたらしい。特にガルダスは、もしもお笑いマンガなら、頭から煙をあげそうな、そんな雰囲気である。
「……まぁ要するに経験値稼ぎと、今後のために魔力コントロール上手くしておこうってこと」
「いや、そのあとが分からないのよ」
「え~?」
「え~?じゃない!」
しょうがないなぁ~、とでも言わんばかりにため息をつき、シドが解説する。
「キヨの経験は対人戦に偏ってる訳だ。対魔物戦になると魔物の動きについていけなくて、とたんに弱くなるんだよ。対魔物戦を経験させる、つまり経験値稼ぎだね?
魔力コントロールについてはね、正直な所、キヨのそれは学生の域を既に越えている。けど、しょせんは学生の域を越えているだけで、猛者の域には全くたどり着いていない。
魔力コントロールを極めることは、より早く魔法を習得するための近道。そして、より効率的に魔力を扱えるようになる……それは魔法の威力強化もそうだけど、魔力の増加にも、少なからず繋がる訳!」
あ~ダルかった~、とシドが解説を終えると訓練所から出ていく。次いで、キヨ、ガルダス、マリアとそれに続いていく。
「……さてと、じゃあさっそく依頼を受けようか!」
一足先に依頼を選んでいたらしいシドが一枚の紙を持っていた。そこには、ある依頼が記載されている。
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・森ノ超獣 ランクA
近くの森に、今まで見たことのない大きな虎みたいな魔物がっ!!
これじゃあ安心して蜂蜜採取にもいけない!!!
お願いだからあの魔物をなんとかして!!!!
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「モ○ハン?」
ガルダスが何やら呟いたが、スルー。この依頼にある虎のような魔物とは、キヨの頭の中には一体しかいない。
「森に出る虎の魔物……ウッドタイガーか?」
木属性の魔法を使う魔物。体を木で覆い、体を守っており、しかしその体の木は火で燃えることはない。
凶暴性は高く、また爪も木で出来ており、その打撃は岩を粉々にする程の破壊力である。ランクはSよりのAである。
「……ランク高くね?」
キヨがそう言うと、シドは「えっ?」と驚愕をあらわにした。
「まぁ僕も一緒に行くし、大丈夫でしょ」
と、シドは軽く流す。そして、意気揚々とギルドから出ていく。キヨはガルダスに、生徒手帳に入ってもらい、自身もギルドから出ていく。
「さてと……依頼にある森だけど徒歩で行けそうだね~?さっ、ちゃちゃっと終わらせよう?」
「はぁ、分かった分かった。なら、さっさと案内してくれ。俺、その森知らないし」
了解、とシドは身体強化をかけたのを見たキヨも、自身に身体強化を施す。キヨが身体強化を施したのを確認し、シドは一気に加速する。キヨも、シドを追って加速していく。
(はぁ~……早いなぁ~……)
生徒手帳の中から、ガルダスは感想をこぼす。そして、二人の高い精度の魔力コントロールに感心する。
そして思った。いつか、追いつくのだ、と。
──数十分後──
「はぁっ……はぁっ……」
「ん~?もうバテたの?」
依頼の中心である、森の入り口。息切れしたキヨと、まだまだ余裕の見えるシドがいた。と言うか、既に徒歩でもなく走っていたが。
「しかし……木の一本一本が大きいのぅ~……学園の木の比じゃないのだ……」
生徒手帳から既に出ていたガルダスが、森を構成している木々の大きさに驚いている。手をあて、木の感触を確かめている。
「はぁ、はぁ……よし、もう大丈夫そうだ……」
キヨの息切れがある程度おさまると、三人は森の中へと入っていく。




