恩返しには仇じゃなくて見返りを
「まぁ気持ちはよく分かるが……アレらは置いておこう……アレらよりも重要な話がある」
キヨは、アレら(ルニア@取り巻き連中)を放置することにして、シドとの約束について話した。
「……キヨ、ギルドとは……何だ?」
「え?話してなかったか?」
「あぁ、全く。初耳だぞ?」
ギルドについて話していなかったらしいので、キヨはギルドについてガルダスに説明する。
─少年説明中─
・ギルド
所謂何でも屋。基本的には高等部を卒業しないと入れない。
例外としては二つ。
1.ギルド員の推薦があれば中等・高等部でも入れる
2.ギルドに保護された子はギルド所属扱い
依頼は犬の散歩からドラゴン退治まで様々。
ランクは
Z>SSS>SS>S>A>B>C>D>(E)
Eランクは、ギルドの子ども達のために近隣の人がわざと簡単な依頼を出してくれている。ギルドの子どもはEランク依頼を受けてお小遣いを手に入れている。
─魔族理解中─
「……ってことだ。わかったか?」
「うむ!理解したぞ!」
ガルダスがギルドについて理解した所で、話を進める。先ほど話したので、日程や、ガルダスが要るであろう荷物についてだが。
「まぁ、通いだから、特には必要はないけど……魔方陣の書いてあるノートと……そうだった……」
何かを思い出したキヨが、寝室にある机をゴソゴソと暫く漁る。そして、白色の四角形の何かを取り出した。
「お前に渡しておく。これは、[魔力貯蓄器]だ。お前が無意識に垂れ流してる魔力とか、術を使う時に無駄に出してる魔力を集めて、勝手に貯めてくれるものだ。容量は10万程度になってる」
[魔力貯蓄器]。つまり、バッテリーの魔力バージョンと言えば分かりやすいだろう。これは、機械剣と同様の技術で作られている。
そう、キヨの作ったものだ。既製品だと、容量はよくて3万まで。従来型の約3.3倍というハイスペックな品なのだ。
「うむ。これは……ポケットに入れておいても邪魔にならなそうだな……」
と、いつもの毛布をめくり、ズボンのポケットに[魔力貯蓄器]をしまった。
「まぁ、こんなところか?話すこともないし……念のために買い物にでも行くか……ガルダスはどうする?」
ガルダスに[魔力貯蓄器]を渡したキヨは、買い物に行くことにした。ガルダスは、訓練するから、と行かないらしい。
「じゃあ俺は少し出る。鍵の管理よろしくな」
「うむ!分かった!いってらっしゃい!」
ガルダスの声を背に、キヨは寮から出ていく。向かう先は、武器屋と肉屋、八百屋だ。
キヨは武器屋でワイヤーや投げナイフといった、幾つかの補助系の武器と、数種類の科学薬品、砥石等を購入した。
「しかしまぁ……兄さんあんた……閃光弾でも作るのかい?これ、その原材料だろ?」
白髪が目立ち始めた武器屋の亭主に、そう聞かれた。買ったものは閃光弾の材料。
「えぇ、まぁ。入れ物とかはあるので、薬品を掛け合わせるだけですから」
「おぉ~、そりゃ凄い……俺にはさっぱりだがなぁ~、あの複雑な配合は」
そのあと、他愛のない話を少ししてから肉屋へと向かった。今晩使う肉は、鶏肉を使うことにした。一応他にも豚肉も少し買い、八百屋へと足を進める。
「らっしゃいらっしゃい~。今日はニンジンがお買い得だよ~!」
これを聞き、キヨは考えた。確か卵もそろそろ痛む頃だし、今日はオムライスにでもしようかな、と。ニンジンが買われて、今日の夕食はオムライスに決まった。
「ただいま~」
「お帰り!お客さんが来ているぞ!」
帰ってみると、そこにはマグマがいた。
「おっす、お邪魔してる」
「お邪魔だと理解してるなら帰ってくれ」
えぇ~……と、ガルダスとマグマの二人は、そう思った。が、流石に今のは冗談だったらしい。「嘘だ」と、あっさりいい放つキヨ。
「で、何の用だ?何もないなら部屋に来ないだろ」
「まぁな~。これ持ってきたんだ」
差し出されたのは、オレンジ色と黒色二つの大小のローブだ。小さいオレンジ色の方はガルダスのものだろう。黒の大きいものはキヨだと思われる。
「これは?」
一体どうしたのか、とマグマに尋ねる。すると、
「テスト勉強で世話になったからさ、そのお礼にな。おかげで成績上がったからな。お礼ってことで、皆で相談して買ったんだ」
押しかけるのも大勢だとダメだから、とのことでマグマが代表として来たらしい。まさかこんなことになるとは、とキヨも少し面食らったが、
「ありがとう。大事に使わせてもらうよ、ガルダス共々!」
「うむ!ありがとうございます!」
キヨは、こういうのも、悪くないな……とマグマとガルダスと談笑しながら思った。そして、明日からの夏休み、どう日程を組もうか悩むキヨであった。




