シドからの頼みは家庭教師
「キヨ・アルケム~」
「はい」
名前が呼ばれ、キヨはサカタ先生の元へと歩いていく。
「流石、筆記試験の特待生なだけあるな。どの教科も満点だ。戦闘に関しても優秀だったし。マジで何者だお前……」
確かに全教科100点で戦闘も凄ければ、気になるもの。サカタ先生も答えはないと思って聞いたのだが、キヨはあっさり答えた。
「ルニアに巻き込まれたから、戦闘経験が豊富なんです。頭がいいのは、巻き込まれて死なないために、知識を増やしていった結果です」
「あ~……なるほど……」
先ほどの流れを見たあとだからか、何と、納得したサカタ先生。実際、この話は本当なのだが。
「まぁ、夏休みくらいはのびのび過ごせよ~……」
「ありがとうございます」
それからは他の生徒が成績表を渡させるのを待ち、全員に行き届いた所でサカタ先生が終業式の日程の連絡をする。
「終業式は明日だ。まぁ、午前中に終わるだろう。宿題とかもあるからな~。じゃ、解散ってことで」
言うことを言って、さっさと教室から出ていった。と、そこにシドがキヨに声をかける。
「キヨ」
「シドか……さっきは助かった。ありがとう」
「いや、気にしないでいいよ?……少しいいかな?頼みがあるんだけど?」
シドからの頼みとは何だろう、と思うキヨ。少しなら、と話を聞くことにした。
「さっきの借りもあるしな……出来ることならいいよ」
「助かるよ~♪7月の15日から……だいたい8月の7日くらいまででいいんだが、家庭教師をしてくれないかな?」
「家庭教師?シドなら教えるようなことない筈だが……」
家庭教師、シドはキヨに次いで学年第二位の頭脳の持ち主だ。シドには必要ないはずだ。
「僕に、じゃないんだ。ギルドの子供たちに、だ」
「ギルドの子供たちに、か……あぁ、確か……ギルドでは子供を保護してるんだったな……近場のギルドだと、確か……『聖堂騎士団』だったな……そこでか?」
「あぁ、僕一人じゃ人手が足りないからさ~?ギルド員は頭がいい人少ないからね~」
『聖堂騎士団』。国内有数の実力派ギルドだ。ギルドであると同時に、優秀な魔法使いを出す孤児院であることで有名だ。聞けば、シドはそこで育ったらしい。
「まぁ、それくらいならいいさ。『聖堂騎士団』って、隣街のギルドだろ?移動にも問題なさそうだしな」
あっさりと引き受けたキヨに、相変わらずの笑顔を向けるシド。
「頼んでおいて言うことじゃないけど、かなりの子供がいるからね?」
「大丈夫だ。それくらいなら予想の範疇だ」
「そっか……じゃあ当日の9時に学園の寮前に集合ってことで!」




