巻き込みは迷惑行為であることを、全く理解していない王道主人公
「あ、キヨ!やっと来た!」
入って早々にルニアに声をかけられた。キヨはため息をつくが、それに気づかずにルニアは話を続ける。
「今日の放課後に、皆で買い物に行くからキヨも行こうよ!」
「先約があるから却下」
そう言って断った。が、いつもの様に取り巻き連中による脅迫が始まった。今回は魔法(中級らしいもの)を使うらしい。
「てめェ!いい加減にしろよ!!根暗なくせに !!!」
「……拒否権……ない……」
「貴方はさっさと了承すればいいのよ!」
「キヨも来てよ!お願い!!」
流石にこの事態にクラスメイトが騒ぎ出す。いくら中級と言えども、7大貴族二名の魔法ともなれば、自分たちに防げるか、わからないらしい。
「……はぁ~……」
この状況は不味い、とキヨは心の中で舌打ちした。向こうの四人には、水と風が使える人間がいる。取り巻き連中の魔法の跡を、キヨの魔法によるものなんて言われたら終わりだ。
キヨのような平民の話なんて、潰されるだろう。7大貴族が二人もいる。ティーシャはキヨに圧力を掛けられない筈だが、メルからは掛けられる。
(周りにはクラスメイトがいるからな……軌道をそらすことも出来ないし……あんなの4つも防御出来んしな……)
なら、あえて攻撃を食らえばいいんじゃないか?と、キヨは思い付く。たしかに食らえばタダでは済まないだろうが、物的証拠ならば覆しようがない上に、向こうにしか使えない属性による傷は、自作自演出来ないことの証明になる。
「……人権無視か……訴えたらお前ら全員刑務所行き確定だな……犯罪者さん?」
可能な限りの身体強化を施す。これでいくらか魔法のダメージを軽減できるだろう。取り巻き連中は、犯罪者、という言葉に激怒したらしい。一斉に魔法を放ってきた。
「【アイスブロック】……」
しかしそれらは、氷の中級魔法【アイスブロック】によって防がれた。因みに、【アイスブロック】は、防御魔法だ。
「氷の魔法……シドか?」
キヨの知る中で、氷の魔法をこれ程の精度で扱えるのは、シドしかいないのだ。どうやら、正解だったらしく、教室の入り口にはシドとサカタ先生がいた。
「あ~……そこの馬鹿4名は今すぐに職員室な~?ったく……こんな日に問題起こしやがって……」
と、四人がサカタ先生について行こうとすると、またルニアが口を挟む。
「せ、先生!待って下さい!!悪いのは僕とキヨなんです!!!」
「「はぁ!?」」
サカタ先生とキヨが大声を出す。キヨは憤りから、サカタ先生は驚愕から。
「どういうことだ?」
「僕が買い物に誘ったんですけど……キヨがそれを断ったんです……それで……」
サカタ先生も、これには頭を傾げた。キヨには何ら非はないのだから。
「どうなんだ?キヨ……」
「概ねあってますが、俺からは何もしてません。あの魔法から身を守るための身体強化をした以外は……」
「酷い断り方したし!彼女たちを怒らせるような事言うから!皆はあんなことしたんだろ!」
「えぇ~……」
流石にこれには困った。キヨがいくら何と言おうと巻き込まれること確定の流れだった。少なくともキヨはそう思った。思っていた。
「先生~」
「ん?マグナか?どうした?」
「キヨには何も問題はなかったと思うぜ?用事がある、って断っただけだし……先に魔法を展開したのはそこの四人。
キヨも確かに四人を挑発してたけどさ……普通なら、教室じゃ中級四発も防御出来ないし、いなすことも出来ないから、わざと挑発して自分に魔法を向けさせたんだと思う」
マグナからの助け船が出たのだ。それにはキヨも目を丸くせざるを得ない。
「……なら別にキヨに非は全くないね~?まぁ、誉められた行動ではないにしろ、最善の手だろうね~?」
「シド……」
シドも、キヨに非はないと判断してくれたらしい。もし担任がビッチだったなら、キヨは間違いなく生徒指導されていたな、と改めて思った。
「じゃあ、ルニア……キヨには何も問題ないな?全く、ではないけどお前が原因みたいだな……まぁ、今日は何もしてないからいいが……」
サカタ先生はさっさと職員室へと行ってしまった。その直後に、『え~……Aクラスのモブ先生と、Cクラスのチョイヤック先生は職員室へ来て下さい』と、アナウンスされて、成績表の配布が遅れたのは余談。
暫くして、サカタ先生とティーシャ、メルが帰ってきた。怨めしそうな顔をしてキヨを睨んでいたが、キヨは無視。そうこうして、ようやく成績表が渡された。




