キヨのスパルタ式?テスト対策
「嘆いていても仕方がない……マグナとルピアは基礎の理解から始めるぞ。ダルラとセニアは応用問題を解くための練習だ」
過去問を見たキヨの見立てでは、基礎問題が四割、応用問題が三割強、高等部レベルの問題は一割強、賢者レベルの問題は一割あるかないか。
賢者レベルの問題は、入試の問題と同じものしかない。キヨには対策も糞もなく、受ければいいだけのようだった。
「で、基礎がガタガタな二人はとにかくノートを黙読すること」
「ノート取ってないんだけど……」
「同じく!」
「…………」
まさかそこからか……とキヨはまたもや頭を抱えた。
「え……と……ノートを取ってない……と?」
「だから、キヨのを写させてくれ!」
「無理。俺、ノートなんか必要ないから取ってないし」
伊達に筆記試験で特待生になってねぇよ、とキヨ。
「あ、ノート取ってます」
セニアがおずおずとノートを取り出す。そのノートには、きっちり板書されたものが写されていた。貸してくれ、とキヨはノートを見る。
「数学のは……こことここ……ここもだな……計算式が違うな……国語は……大丈夫だ……国史は……写し間違えが少し……世界史も……ここだけ写し間違えがある……魔法陣・術式は……専門用語が多すぎるけど問題ないな……」
素早く手直しをして二人に渡す。マグナとルピアがカリカリと書き写していく。セニアとダルラは、その様子をポカーンとした表情で見ていた。
「ん?なんだ?何か問題があったか?」
「いえ、そうではなく……」
「あんな量のノートをぱっと見ただけで直してるのに驚いて……」
「あの程度ならどうにでもなる。やることやってればな……さて、応用問題以降に難ありの二人には、ひたすら問題を解いてもらう。応用問題ってのは基礎問題が解ければなんとかなるものが多い。要は、コツを掴めばいい」
と、過去問からいくつか問題を解かせる。因みに、図書室にあった過去問なので、ノートに問題を写させている。
「さてと……」
キヨは鞄からノートを取りだし、何かを書き込んでいく。そこには、いくつかの魔法陣と、その術式が書かれていた。
「…………」
適当な所で切り上げて、様子を伺う。どうやら応用問題組が行き詰まったようだ。後ろから問題を確認して、アドバイスを与える。
「この問題は、使う公式は合ってるが、入れるものが違うな……」
「え?」
「で、そこ基礎問題組は話してないで写せ。そして黙読してろ」
「「は~い」」
中々問題はありそうだが、キヨはきちんと面倒を見ていた。そんな日が数日続き──
「じゃ、確認テストするぞ」
「「「「え?」」」」
土曜日の朝。キヨが突然確認テストを持ち出した。四人はすっとんきょうな声を出してしまった。
「確認テストだ。確認テスト。基礎問題組、応用問題組で出題してる問題は違うから、満点を目指して挑め。制限時間は一時間な」
用紙を配りながら、キヨが説明した。そして、問答無用で開始。
──一時間後──
「はい終了。回収するぞ~……あ、少し休んでていいぞ?」
グタッと倒れ込む四人。四人の解答用紙に採点していくキヨ。そして、一時間で採点を終わらせた。
「じゃあ返却する。ついでに間違いのある問題の答えに目を通しとけ」
「しかしさぁ」
「あん?何だよ」
不意にマグナが呟いた声に反応するキヨ。
「なんでお前は勉強分かるんだ?」
「あぁ……分かるから分かるんだ。それだけ。てか間違えた問題を復習しろ。マグナ、お前まだ基礎がズタズタだそ?」
バッサリ切り捨てる。そしてもう質問してくるなという空気を作る。数分経ち、キヨが再び話し出す。
「さて……これで誰がどれだけ解答できるかが分かった所で、それぞれに指示を出す。
まずはマグナ。またノートを黙読。部屋で、1人でやる時には音読な。
ルピアは基礎が出来たから、応用問題の解き方の練習だ。
セニアとダルラは高等部レベルの問題に挑戦しよう。解けなくてもいいが、努力はしろよ?」
各自行動開始、とキヨが手を叩きながら言ったのをきっかけにして、四人が動く。マグナはノートの黙読。ルピアは応用問題に、セニアとダルラは高等部レベルの問題にそれぞれ取り組む。
キヨはまず、ルピアに話す。セニア、ダルラ組に話したことを繰り返す。そして、自分のノートを開いて書き込みをする。
そこには、既に完成した魔法陣と術式があった。
(6つの内の3つは完成。他3つは未完成……しかし、『この魔法』は早く作らないとな……)
完成した魔法陣と、未完成の魔法陣を見つめ、どの魔法から作るのかを決定していく。そして、重要な魔法が七割程度出来た所で、四人の様子を観察する。
「……使う公式が違うぞ……」
「え!?嘘!?」
「本当……」
ルピアの解こうとしていた問題だが、使う公式が違った。また
「公式の使い方が微妙に違う……途中までは合ってるが……いや、なんでここまではあってんだこれ……」
セニアとダルラは、公式の使い方が違うのに、何故か途中まではあっていたりした。そして試験当日。




