キヨとマグナの憂鬱
学年別トーナメントから、早いもので1ヶ月が経った。夏も本番に近づいてきた6月の下旬。
「あ~、そろそろ期末試験が始まる。テストは来週の金曜。まぁ、二週間近く余裕があっから……そろそろ準備しとくように!筆記試験だけだけどな……連絡することはもうないな……以上!」
期末試験の季節がやって来た。そう、学生が嫌うものの一つにして、学生の大敵(普段から勉強しないものにとっては)だ。
そんな、普段から勉強しない学生が、キヨの近くにいた。
「キヨぉ!!!頼む!!!勉強教えてくれぇ!!!」
「えぇい、引っ付くな!!やかましい!!」
マグナだった。キヨの足にしがみついていた。かなり鬱陶しい感じでキヨが剥がす。
「だいたい、七大貴族のフレイム家なら英才教育くらいやってるだろ?」
「俺が机にかじりつくタイプに見えるか?」
貴族の中でも王族に次ぐ地位にある七大貴族であるマグナに、キヨは突っ込みを入れる。というか、平民に勉強を教わる貴族もどうなのか、とキヨは思ったからなのだが。
「全く見えないな。むしろ脳筋っぽいわ……うん、すまん……あと、教えないからな」
答えはこの通り。実際、マグナはそれほどバカではない。それほど頭が良いわけでもないが。ちなみに、マグナがSクラスにいるのは、戦闘センスの高さを評価された為。
「頼む!!!マジで!!このままだと爺さんに殺される!!!」
しかし、マグナがここまで必死にキヨに頼むのも、爺さんこと祖父にかなり圧力を掛けられているからだ。
その祖父が、割りとスパルタらしい。昔のトラウマが~、と長々と語るマグナ。しかし、キヨからすれば知ったことではないのでスルー。
したかったのだが、事情が一変する。
「キヨ、勉強教えてくれないかな?」
そう。ルニアが来た。瞬間、踵を返しす。キヨはマグナを掴み、こういい放った。
「悪いが、この馬鹿の相手に時間を取られそうだから断る」
マグナはもう感謝感激、そんな顔をしていた。対してルニアは、疑問符がつきそうな顔をしていた。
「一緒に勉強すればいいじゃん」
「断る……こいつ以外にも頼まれてるからな……そんなに面倒を見られん」
嘘だが。
「そっか……今回は自分でなんとかするよ」
と、なんとかルニアが引いたことでキヨは事なきを得た。が、マグナに勉強を教えなければならなかった。
その日の放課後。キヨとマグナは図書室へと足を運んでいた。これからの対策のためだ。
「とは言ったものの……」
「なんとか人集めんとマズイ……」
勉強は散々たるものだった。割りとこの学園のレベルが低いことが判明。
「入試の筆記試験……40点で学年29位とはな……」
「う……」
(ここ、本当に王立のエリート校だよな?)
キヨの疑問はもっともなのだが。この世界はどれだけ戦えるかが重要視されている。いや、され過ぎているのだ。
その為に、勉強には疎い所があるのだ。そして、キヨは沈んでいるマグナを置いて、あるものを探す。
「まずは過去問あたりを……っと……」
あっさり見つかった。それを幾つかかっさらい、マグナのいるであろう机へと戻る。すると、
「あ、知将くんだ~」
「知将?……あぁ、キヨ君のことね!」
「本当だ……」
マグナの周りに、三人の男女がいた。その内の二人は女子。一人は男子だ。
最初に、キヨを見て『知将くん』と言った女子。身長はそれほど高くない。ショートカットの金髪に、薄紫色の目。平均よりは発育が少しいいくらいの体型だ。
続いて、もう一人の女子。身長は高めだ。キヨと数センチ違うだけだろう。ロングヘアーの青髪に、金の目。体型としては標準的だろうか。
最後に男子だが、身長はマグナと同じくらいだろう。茶髪は短めで、金の目だ。かなりガリガリなイメージだった。
「……誰だ?」
クラスメイトだが、キヨは他人との交流は殆どなかった為、顔すら覚えていない。なので、こんな言葉が出た。
「え?お前……クラスメイトくらい分かるだろ?」
「分かれば聞いていない……俺に集まるのは大抵ルニア信者だったからな。覚えようとも思わなかったからな……クラスメイトなんてまさにそんな連中の中核だったからな」
その言葉に、何か思い当たる節があるらしい。三人とも目が泳いでいた。キヨはそれを見逃さなかった。
「その目から察するに、お前ら……思い当たるところがあんだろ?」




