学年別トーナメント─一年生最強決定戦3─
「【アクアポール】!!」
床石の下から、水の柱を打ち出す。床石は持ち上がり、さながら壁のようにキヨの姿を隠す。その様子を見たシドが、【アイスナイト】を動かす。氷の剣が、床石という壁を切り裂く。
そこには、
「……機械剣、モード『ブレイド』……!!!」
二本のダガーだった機械剣が、一本の大剣へと姿を変えていた。そして、キヨは次の工程へと移る。
「【アクアバインド】!!!」
水の上級魔法【アクアバインド】を発動。それは氷の騎士の動きを制限、氷の手足に水の拘束具が出現した。
「だぁぁぁぁぁ!!!」
大剣を振り回し、氷の鎧たちを破壊していく。残り少ない魔力を腕に纏わせて、無理矢理に。
「これで……最後!!!」
バキリと、氷の騎士たちが全て氷の塊になった。キヨは荒い息をしながら、シドを見つめる。さぁ、どうするか……そう問いかけるかのように。
しかし、シドはまだ笑っていた。
「いやぁ……まさか【アイスナイト】も退けるなんてね……まぁ、でも……僕の勝ちさ……【アイスバインド】♪」
「なっ!?」(こいつ!?まだ上級魔法を使えたのかよ!?)
氷の拘束具が、今度はキヨを縛り付ける。既にほとんど魔力を、体力を消費していたキヨは、バランスを崩して倒れる。ガラン、と機械剣もそれに伴って地面と平行になった。
「君の負けだよ、キヨ・アルケム」
「ぐ……」
首筋に、槍の穂先を向けられたキヨ。降参するしかなかった。
「降参だ……」
「勝者、シド・フランツ!!!」
サカタ先生が、結果を告げる。瞬間、大歓声が空間を支配した。
ワァァァァァァァ!!!
いい試合だったぞー!!!
あいつら強ぇ!!!
そして、解説も一気に声を出す。
「上級生顔負けの凄まじい試合だったー!!!
キヨ選手の諦めない姿勢と、優れた知識から生まれた、初級と中級魔法を組み合わせた起死回生の攻防!!!
シド選手の巧みな魔力コントロールから生まれる鋭い槍撃と!!!莫大な量の魔力から繰り出す上級魔法の数々!!!
こいつら本当に一年生なのかー!!!勝者こそシド選手だが!!!キヨ選手も素晴らしかった!!!一年生二人に惜しみない拍手を!!!」
パチパチパチパチパチパチ!!!
会場全体から、拍手がする。【アイスバインド】を解かれたキヨは、なんとか立ち上がり、周囲を見渡す。いつの間にか、隣にシドがいた。
「いやぁ……まさかこんなに強いとは思わなかったよ♪【アイスナイト】まで倒すなんてね~♪」
「よく言うぜ……上級魔法連発して、最後の最後に【アイスバインド】なんか使っておいて……」
「まぁ、あれをどうにかされたら不味かったけどね?」
「あっそ……」
二人が会話を終えたと判断し、サカタ先生が声をかける。
「もういいか?そろそろ握手してくれ。とりあえず形だけでも終わらせたいからな」
なんとも抜けた感じだが、これで審判だ。指示に従い、握手する。
「さぁ、キヨ選手、シド選手の二人と、モブC選手、モブJ選手の上位四人には単位が与えられます!!!それでは、表彰式に入ります!!!」
それからは表彰式やら校長の話等々があり、一年生の学年別トーナメントは幕を閉じた。
部屋に戻り、ソファーに倒れこむ。そして、直ぐにキヨは眠りについた。
(久々に……真剣に……戦った……な……)
そう、いつぶりかに本気を出した。そして負けた。しかし、キヨには大きな収穫があった。まだまだ強くなれる。同学年にも、上には上がいた。
今までは知略で乗りきれたことも多かった。が、今まで以上に力が必要だと感じた。




