学年別トーナメント2
「さてさて、両者の紹介も済んだところで、試合をはじめてもらいましょう!」
解説の声を合図に、審判の先生……モブ・セマカ(Aクラス担任)が合図する。
「両者構え!……はじめ!」
その声と共に、モブBが魔法を放つ。
「【ファイアボール】!」
炎の初級魔法【ファイアボール】。複数の炎球が、キヨの回りに着弾する。しかし、
「甘い」
キヨは様子見だと見抜き、【エアリアルホップ】を使って接近していた。そして、モブBの胸ぐらを掴む。
「【エアリアルホップ】!」
キヨは、自身とモブBの間に【エアリアルホップ】を設置。モブBを引き寄せる。当然、【エアリアルホップ】が発動し、モブBはリング外へと吹き飛ばされた。
「ちっ……勝者、キヨ・アルケム」
審判のモブ先生は、つまらなそうに勝利宣言をする。また会場にどよめきが走る。
「おい、あいつ……」
「あ、あぁ……すげぇな……」
「な、なんだあれ……あいつの使った魔法って確か……」
「風の中級魔法よ?あれ……しかも使い勝手の悪いやつ……」
「あの、シドって奴も大概だけど、キヨって奴もヤバいな」
そんな声を聞き流し、キヨは席に座る。
「な……な……なんと!あっという間に倒してしまったーっ!!キヨ選手、たった一つの魔法を二回使っただけで二回戦進出だぁーっ!!!しかもしかも、風の中級魔法【エアリアルホップ】という、使い勝手の悪いことで知られている魔法でだーっ!!!」
(……長い……)
と、キヨが思っていると何やら動きがあった。
「あのキヨって選手はいったい……えぇ……はい……すみません、すみません……はい……え~……すみません、少しハシャギすぎました。次の選手の紹介です!」
上から雷(という名の説教)が落ちたらしい。
モブEとモブJの戦いは特に印象にも残らなかったので割愛。
ここからは二年生の一回戦で、一年生は半ば無理やり帰された。キヨは買い物をしたかったので、助かったと言わんばかりに帰った。
「さて、明日の相手はポップルか……あの様子なら余裕か……」
「ん?明日はポップルとかいう者か?……誰?」
「あぁ、ルニアの取り巻きだ」
「あぁ、あの中の一人か……」
料理の途中、キヨがポツリと呟くと、手伝いをしていたガルダスが質問してきた。適当に答えても、ガルダスには何となく通じていた。対ポップルの対策を考えようにも、地力が違い過ぎて対策のしようがないので、今日は早く寝ることにした。
──翌日──
「キヨだからって、手加減しないよ!」
「……」
ポキポキと、つまらなそうに関節をならしてる、完全にやる気のないキヨと、やる気満々のポップル。今日も解説は高いテンションだが、キヨは、もう聞き流していた。
今日の審判はサカタ先生。こちらもキヨと同じくやる気は感じられない。
「あ~……準備いいか~?良かったら手ぇあげろ~」
キヨはおもむろに手をあげる。ポップルはきちっとメリハリのある挙手だった。それを確認したサカタ先生が、開始の合図を出す。
「やぁ!!!えい!!!」
槍での刺突を、ダガーの切っ先を使って軌道をそらす。ポップル自身の力では、全くキヨには届かない。それは、身体強化をしても、だ。
「なら!【アースニードル】!!」
ポップルが土属性の中級魔法【アースニードル】を発動した。いくつもの土の針は、キヨの顔を目掛けて飛翔する。
「……【エアリアルホップ】」
それを、キヨは【エアリアルホップ】でななめ前へと急加速、移動してかわす。そして、キヨも攻撃へと転じる。
「【ウィンドランス】!!!【ウィンドボール】!!!」
風の中級魔法【ウィンドランス】、風の初級魔法【ウィンドボール】をポップルの周囲に放つ。先ずはポップルの視界を奪う。そして
「ケホッケホッ……見えない~!きゃっ!?」
それはポップルに足元を崩す為でもあった。声から体勢が崩れたと判断したキヨは、一気に駆け出す。
「【エアリアルホップ】」
そして、ポップルより少し手前で再び【エアリアルホップ】を使う。何故なら
「っ!?【アースウォール】!!」
視界を奪われた際に、相手のいる方向に防御魔法を展開するのは、一般論としてされている。視界を奪った相手は、攻撃魔法を撃つ、というのが普通だから。
ならば裏をかけばいい。キヨはポップルの防御魔法を予測済み。なので、その手前で【エアリアルホップ】を使って、ポップルの背後を取ったのだ。
「……【アクアニードル】、【ウィンドランス】……」
キヨはポップルの周囲に魔法を展開する。いつでも放てるようにした。そして、土埃が晴れる。
「……え!?」
慌てた様子のポップルには構わず、淡々とした口調で、告げる。
「もし動けば、魔法を放つ。怪我したくなきゃ、降参しろ。……俺はアイツと違って、容赦はしないからな?」
ここまで来れば、ポップルに選択の余地はない。ポップルが降参し、キヨの勝ちとなった。
因みに、シドvsモブBはシドが速攻で勝利。イツキvsモブCは、イツキが油断した所にモブCが上級魔法を叩き込み、モブCの勝利。モブJvsモブGは、モブJの勝利だった。




