クラスの実力者を探す
ルニアの取り巻きが増えた日からおよそ3週間。5月半ばになり、暑さが増してきた頃。今日は座学はなく、戦闘のみの授業構成となっている。
「よし、全員武器は持ってきてるな?今日は前々から連絡してた『学年別トーナメント』の出場者三名を決めるぞ~」
サカタ先生はそれだけ言うと、さっさと教室を後にした。生徒も皆、各々の武器を持って、教室から移動を開始している。
そう、学年別トーナメントの為だ。学年別トーナメントは、学年別に対戦するため、他学年との戦闘はない。
生徒は学年最強を決めたり、点数稼ぎなどの目的で、教師は学年の総合的な戦闘レベルの査定、それに伴う授業の進路調整といった目的をもって、このトーナメントを開催する。
キヨ達Sクラスや、他のクラスもこのトーナメントには力を入れている。どのクラスも、メンバーは三人まで。そしてクラスは約30名で構成されている。
教師が適当に10名グループを編成し、その10名でサドンデス形式の戦闘を行う。最後の一人が選抜選手となる、そういう仕組みである。
場所は移り、フォイと戦った闘技場だ。あれ以降、フォイは絡んで来ない。絡んできたらそれはそれで問題なのだが。
闘技場も、今日は1年Sクラスの貸し切り状態。因みに昨日は、イツキのいる1年Cクラスが使用していた。
「なぁ、キヨ」
「なんだ?」
話しかけてきたのは、マグナだ。例の話をして以来、キヨに絡むようになっていた。
「お前はどのグループだっけ?俺はAグループなんだけど」
「ん?俺は確か……Cグループだったな」
マグナは自身の武器である、剣を担いでいた。特に装飾はなく、武骨なイメージはするが、魔物の素材がふんだんに使われていた。戦闘するに際しては、下手に装飾されているよりは武骨なこの剣の方が使いやすいのだろう。
魔物の素材は、鉱物による武器よりも性能が高くなるが、加工が難しい。よって、値段は高くなるのだが、そこは貴族。お金はたくさんある。
値段よりも質。なかなかの業物であるとキヨは見た。が、それをわざわざ言うつもりはないようだ。
そして、キヨの出番はまだなので、武器は麻の袋に入れっぱなしである。が、マグナは少し気になるらしい。
「その袋に武器あんだろ?見せてくんねぇか?」
「ん?……あぁ、まぁいいぞ。ほれ」
無造作に麻袋を投げつける。マグナがそれをキャッチすると、わりと重い感覚がした。麻袋から武器を取りだし、マジマジと観察する。
「結構重いやつ使うんだな……これ……機械剣?珍しいな……しかも二本……ダガーか……見たことない形してるな……」
「だろうな。俺のお手製なんだから」
機械剣とは、ある島国に存在する技術で作られた、機械を用いて作られた特殊な剣のことだ。一般にも流通はしているが、値が張るためにあまり普及はしていない。
因みに、珍しいから高いだけで、割りと原価は安い。作り方さえマスターすれば作った方が安い。もっとも、そう簡単に作り方はマスターできないのだが。
そのことを知っているマグナは、キヨを凝視してしまう。
「……なんだ?……何かおかしいか?」
「いや……お前、何でも出来んのな……」
「……別に……親父の知り合いに機械関連に詳しい人がいてな……その人に教わって作っただけだ」
「え~……それだけでこの完成度かよ……」
もはや呆れるマグナ。どうみてもこの機械剣はかなりの業物だ。機械に詳しい人に教わって作っただけ、なんて言葉で片付けるには高すぎる完成度なのだ。
「じゃあそろそろAグループの戦闘を始めるぞ~。さっさと集まれ~」
先生の声に、生徒が大人しく従い、闘技場のリングへと集まる。Aグループには、マグナの他にもキヨの知っている人物がいた。ルニアもAグループだったようだ。