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SUPPORTING ACTOR - 天落の魔術学園 1st-  作者: MIST・CAT
2nd episode 学生─ワキヤク─
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理解者はいつか現れる

しかしながら、悲しくも遅刻した。更には楽しみにしていた一時間目の特別授業の国史を受け損なってしまったのだ。



受け損なった理由も酷い。今日の遅刻者指導の先生がまさかのルニア信者だった。理由を話しても嘘だと決めつけられて一時間は説教を食らったことが原因だ。



「ちっ……あのビッチ教師め……」



せっかく間に合いそうだったのに、今日一番の楽しみが潰えてしまった。二時間目の授業にも集中出来ずに、三、四時間目と時が進む。



昼休みになり、購買で買ったパンを教室で食べようとした時だ。ルニアがキヨに近づいてきた。そして



「キヨ、なんで一時間目に来なかったの?」



「あ?」



「だから、なんで一時間目の授業、来なかったの?……ねぇぁぐっ!?」



「……黙れよ……胸糞悪い……」



ルニアの頬に一発。拳を容赦なく入れる。ルニアは派手にぶっ飛ぶが、ぶっ飛ぶだけで大したダメージはないだろう。



あまりにも鈍感で、あまりにも滑稽だった。ルニアの顔を見たくないので、さっさと教室から飛び出す。



そして、行き着いた先は屋上だった。そして冒頭に戻る。



「あ~……キヨ?済まないが……その~」

「あぁ、悪い。ほれ、出てこい」

「ありがとう」



生徒手帳からガルダスを出し、買ったパンの内の一つをガルダスに投げ渡す。パシャっと、袋にゆるい衝撃が走る。



ガルダスが受け取ったのは、焼きそばパンだ。ビリッと、袋を破いて焼きそばパンにかぶり付く。と、同時に屋上の扉が開く。



「キヨ!酷いよ。顔を殴るなんて」

「あぁ!大丈夫か?ルニア!」

「……大丈夫?……」

「大丈夫ですの?ルニア様?」

「痛むなら保健室行く?」



「…………」



こいつらは何なんだ?キヨからすれば堪ったものではない現状で、ルニアは話す。



「ねぇ、一緒にご飯食べようよ!」



「はぁ……」



ルニアを押し退けて、キヨは屋上を後にする。頭がおかしいのか、あいつ……と思う。正直な所、単なる異常者にしかキヨには見えない。あと、なんか取り巻きビッチが一人増えていた。朝にナンパされていた女子だろうと推測される。



上から何やら声が聞こえるが、無視して移動する。 行き着いた場所は、中庭だった。ちょうど人気もないので、そこで食べることにした。



「…………」

「うん、この焼きそばパンは上手いぞ!キヨ!」

「そうか、それはよかったな」



キヨはコロッケパンを完食。次のカツサンドを食べようとして、手を止める。人が来たからだ。場合によっては再び移動するつもりだからだ。



「んぁ?確か……キヨ……とか言うやつか」



現れたのは、赤髪赤目の男だった。キヨも、この男には見覚えがある。入試の時に目についた珍しい髪と目をした男だったからだ。



よく覚えていないが、同じクラスだったような気もしなくはない。



「……」



警戒は解かない。この男がキヨに何かしらの危害を加えないとも限らない。が、それは杞憂に終わった。



「お前、なんでこんな何もない所にいるんだ?いつもは教室で飯食ってなかったか?」



どうやら、偶然ここを見つけて、偶然キヨを見つけただけ。更には質問に悪意は無かった。この事からキヨは警戒を解く。



「非常に気分を害する人物がいてな。そいつをぶっ飛ばしてここに避難してきただけだ」



「あ~……成る程。なあ、少し聞いていいか?」



「なんだ?」



「なんでお前はルニアと一緒にいるんだ?確か親友って話だけどよ?」



「……誰が親友だ。……あのグズは親友なんて宣っているが、それはあのグズ視点の話だ。俺はあいつを友達だとすら思ったことはない」



そう答えると、何故か赤髪のそいつは掴みかかってきた。その赤い目は、怒りを露にしていた。



「親友じゃない?お前は、本気でそういってんのか?」



「放せ!!!」



「ガルダス、止めろ……生徒手帳に入っててくれ。さっきの問いの答えだが……本気だ。あれだけのことしといて親友なんてのは……な……」



「あ?」



キヨは、襟を掴む手を払い、ガルダスを生徒手帳に入れる。マグナは、やはりと言うか、ただでは帰してくれないらしい。



「あれだけのことって何だよ。それくらいは教えろよ!」



「……そうだな、少しだけ話してやる……」



そして、朝に起きたことを、赤髪の男に語る。キヨが言った『あれだけのこと』ではないが、嘘も方便、とキヨは思い、適当に話す。



「おいおい……そりゃあ……」



「分かったか?なら俺はもう行く」



キヨは話し終わるとさっさと歩いて行った。ガルダスもその後についていく。その後ろ姿には、何か得体のしれないものを感じさせるものがあった。



「……勘違いしてたのは……俺らかよ……」



赤髪赤目の男─マグナ・フレイム─は、拳を握りしめ、地面を見ながらそう呟いた。そして、彼への認識を改める。彼は『ルニアの腰巾着』でも、『ルニアのオマケ』でもない。彼こそ、努力の天才だと。



マグナには、出来るか分からない。自分の力で不良を一撃で沈められるものか。……分からない……不良のプライドを傷つけずに引かせられるか。



それは明らかに、経験がものを言う駆け引きのやり方である。あの不良も、そのやり方から、キヨが場数を踏んだ手練れだと判断して引いたのだ。



それに、今見えるキヨの背中には、七大貴族の歴代の党首の中でも最高と言われている、父の背中にあるものと似た、何かを感じる。



「くそっ……親父に少しでも近づいてたと思ったのに……いや、まずはキヨに追い付こう!」



マグナは、キヨの印象を改めると共に、彼を自身の好敵手(ライバル)としたのだった。

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