決闘2
床石を裂くように、魔法を発動させる。発動させたのは風の初級魔法【エアスラッシュ】。
これを3つ発動。フォイは魔法の範囲から逃れる。ここからは向こうの攻撃を見極めながらの攻防となるだろう。
「はっ……これでお前の勝機は無くなったな!……いや、元より勝機なんてなかったな、いや失礼」
「ニヤニヤ気持ち悪いな、お前。ご託はいいから、来いよ」
「っ……まぁいい。いたぶってやる!【サンダーランス】!!!」
フォイが数発の中級魔法を放つ。これを上手く利用していきたいキヨだが、現在これを活かす術はない。
キヨはすぐさま移動を始める。ガルダスの作った壁、もとい盾に向かって走る。
「無駄だ!」
フォイの魔法は、当然のことながらキヨを標的に発射される。発射された【サンダーランス】に対して、キヨは【アクアポール】を地面から、フォイの魔法へと発射する。
雷は水に強い。この特性を生かして、【サンダーランス】を形成する魔法の雷を地面に逃がす。が、意外と威力が高かったようで、石の床が僅かに砕けた。
因みに、あくまで雷は水に強い、というのは一般常識の中での話である。
「ちっ……【サンダーボール】!!!」
舌打ちしながらも、フォイは初級魔法を放つ。それについては、避けることにしたキヨ。キヨは、ガルダスの発動した盾を背後にしていた。
つまり、フォイの魔法はガルの盾に当たる。
キィィイイィィィン
バンッ
瞬間、盾に当たったフォイの魔法は、反射された。バスケットボール大だった、【サンダーボール】は、バランスボール大へと大きさを変化させて。
「なんだとっ!?こんな魔法があるのか!?」
とっさに防御魔法を唱えたフォイは、反射された自身の魔法だったものを防ぐことに成功した。
「あるから、こうなってんだろ?」
「…………」
フォイの動揺に対して、キヨはニヤリと笑みを浮かべる。それは余裕からくるものなのか、単なる演技なのか……フォイには分からなかった。
「ふん……」
フォイはこれを、些細なこととして切り捨てる。確かにあの盾が攻撃を反射したことは驚いた。しかし、いくらでもやり方はあるのだから、と。
その頃、ガルダスはというと……
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「ヌオッホッホッホォゥ!!!!」
「ガァ!!」
フォイの使い魔である、サンダーウルフに追いかけられていた。ガルダス、愉快に素敵に全力疾走である。
(時間を稼ぐだけでいいと言っていたではないか、キヨ!!!いつまで時間稼げばいいのだぁ!!!!)
あまりのガルダスの形相は、描写してるこっちが辛くなるほどに酷い。
ガルダスが何故逃げ回っているかというと、マシルドの維持に意識を回しているからである。未だ魔法に慣れていないガルダスに二つ以上同時に魔法を扱う技術がないこともないのだが、テンパったガルダスはそれを思い出せずにいる。
「ガァ!!」
「ウオッオゥッ!!!」
ガルダスは、サンダーウルフの放ってくるの魔法を左右にジグザグしながら走ることで回避する。それを幾度となく繰り返す。
「キヨォォォォォォ!!まだなのかぁぁぁぁぁ!!!」
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──
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「キヨォォォォォォ!!まだなのかぁぁぁぁぁ!!!」
「あぁ?なんだよ、ガルダスか……」
ガルダスの叫びに、反応の薄いキヨ。その為か、フォイに向けている目をそらさない。いや、正確にはそらせないのだ。
「ハハハハハッ!どうやら、お前の使い魔も終わりのようだな!」
「…………」
フォイがガルダスの声を聞いて、そうキヨにわざとらしく伝えてくる。しかし、キヨは答えない。
(さて、今までフォイの使ったと思われる魔力量はおよそ中級魔法5発と初級魔法10発。この学園の新入生の魔力総量の平均から考えれば……フォイの魔力はまだ最上級魔法一発分はある……そろそろ向こうも勝負をかけてくるか?)
キヨは、フォイの魔力量をおおまかに計算。そこから、どうフォイが動くかを予測していた。そして、おおよそガルダスの現状にも予想はしていたのだった。