恋人になれたあたし
「だって可愛いんだもん。明菜さん、大好きだよ」
キスは何度もしたけど、あたしからって初めてかも!
「ふぐっ」
阻止された。えっていうかなに、めっちゃ顔つかまれてる!? この顔恥ずかしい!
掴まれたままなんとか明菜さんを呼ぶと、顔から手を離してから明菜さんはずいとさらに顔を近づけてくる。
「沙耶」
「はい」
むー、そんな顔近づけても、ドキドキするけど許さない! なーんでキスさせてくれないのよー!
「生意気」
「はい? 、んんっ」
襟を捕まれた、と思うと乱暴に引き寄せられ、勢いよくキスされた。
「んっ、ふんっ、んん」
しかもただ唇を合わせるだけじゃなくて、なんか舐められたり噛まれたりしてる! なんかむず痒いけどなんか気持ちいい! 変な声でちゃう!
「沙耶」
「ふぁ、ふぁい」
ようやくキスが終わり、よだれたれつつも何とか返事をする。はうぅ、とろけそう。明菜さんの顔がぼやけちゃうよぅ。
あれ、何か明菜さん立っ、あ、ベッド? あ、わ。なんか気づいたら、明菜さんにベッドに押し倒されてた。ええ、な、なにこの展開。きゃー!
「沙耶、生意気」
「へ? な、なにが?」
え? 生意気? あたしが? あたし明菜さんにめちゃくちゃ従順だよね? 明菜さんのためならなんでもできるよ? 明菜さんラブ!
「さっき、私にキスしようとしたでしょ」
「え?」
あれ、怒りポイントそこなの? でも怒りって言ってもなんか明菜さん嬉しそうじゃない? と、とりあえず答えなきゃ。
「だ、だってそういう雰囲気だったっていうか…ていうか結局明菜さんからしてくれたんじゃ?」
「当たり前。年下のくせに、許可なくキスしようとするとか、生意気すぎ」
「う……ご、ごめんなさい」
そ、そこなんだ。うーん、別にどっちからでもいいような。キスできればいい。でも明菜さんがあくまでこだわるなら、これからは気をつけよう。
「駄目。許さない。だから、おしおき」
「え、っ」
腰を抱きしめられて、またキスされた。口をあけたまま噛みつくようにしてくるから、一瞬食べられるかもと思ったけど、そんな訳はない。明菜さんはあたしの口に舌をいれてきた。
「っ、んんっ、ーーっ」
思わず握ったままの明菜さんの右手に力をこめるけど、明菜さんは意に介さず、あたしを強く抱きしめて口の中をめちゃくちゃに舐めまわしてくる。舌と舌がぶつかるのも、歯や頬、歯茎が舐められるのも全部気持ちいい。気持ちよすぎておかしくなりそう。
「ふんんっ、んっ、んんぅっ、はぁっ」
息ができなくて、気持ちよさもあって意識がとびそうになるぎりぎりのところで、明菜さんは顔を離した。
「はぁ、はぁ」
激しく息をしながら、改めて正常になってきた視界の中で明菜さんに焦点をあわせる。
ああ、なんて、なんて綺麗なんだろう。明菜さんが綺麗で、大好きで、もう死にそうだ。
「沙耶」
「んっ」
頬にキスをされた。体全体が熱くて敏感になってるのか、それだけで体が震えた。
「はぁ、あ、明菜さぁん、やっ、んん」
頬にも口にも構わず明菜さんはあたしにキスの雨をふらすみたいにいっぱいキスしてきた。嬉しいけど、嬉しいけどなんだかドキドキしすぎて変になりそうで、ちょっと恐い。
「あき、あきなさ」
「沙耶」
名前を呼ばれたかと思うと、少しだけ長く唇にキスしてから、明菜さんは顔をあげる。
もうだめ、ああ、明菜さん、好きにして。ちょっと恐いけど、明菜さんとなら平気だから。
「どう? わかった?」
「へ?」
わ、わかった、って? 意味がわからなくてあたしは目をしばたかせる。
「え? え、な、なにが?」
あれ、えと? あ、キスの前、どんな話してたっけ? まだ頭くらくらしてるし、よく思い出せない。明菜さんの不安を払拭させてあげようとは思ったんだけど、それからなんでわかった? むしろ逆じゃない?
「もう、バカ」
罵倒しながらも明菜さんは優しい笑みでまたキスをした。はにゃーん。幸せだよぅ。
「キスは、私からするものなの。恋人になっても、調子にのらないでよね」
「えっ!? こ、ここっ、恋人!?」
な、ななな!? 恋人!? 今明菜さん恋人って言ったよね!? そ、それ! それってやっぱり!? あ、あき、明菜さんも、あたしを!?
「沙耶、一度しか言わないからよく聞きなさい」
「は、はいっ」
混乱するあたしに明菜さんは赤い顔のままあたしを見つめ、微笑みながら囁く。
「私も…沙耶が好きよ。だから今から恋人ね」
き、きたーーーー!!!
「〜〜っ、明菜さん大好き!!」
この瞬間をどれだけ夢みたか! 明菜さんが大々々好きで、ずっとずっと好きになってもらいたかった! 好き! 大好き!
たまらなくて、嬉しすぎて泣きそうで、勝手に体が明菜さんにキスしようとしてしまう。
だけどあたしの唇が届く前に、明菜さんがまたあたしを食べてしまうみたいに口をあけて、情熱的にキスしてくれた。
明菜さん大好き。明菜さんはきっと、あたしの言葉で納得して恋人になってくれたのだ。だからこれから頑張らなきゃ。明菜さんが偏見を恐れるなら、あたしがそれから守るんだ。
だって明菜さんはあたしを助けてくれた、あたしだけの王子様なんだから。明菜さんのためなら、今度はあたしが王子様にだってなるんだ。
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