恋する私
「ほれ、さっさとお入り」
枕を抱いたままもじもじしている沙耶はなんだか子供っぽくて、微笑ましい気持ちになる。促してあげると沙耶はちらちらと私の顔を伺いながら、ベッドに入ってきた。
恥じらっているのか枕を抱いたままで、私は笑いながら枕を並べた。沙耶はぱたんと枕につっぷす。
子供みたいで可愛くて、私は掛け布団の端を内側から掴んで、沙耶をくるむようにして抱きしめる。沙耶ぬくい。
ぎゅうぎゅうに抱きしめて、沙耶を見つめる。
近くで見つめると、ぽっと火がついたみたいに真っ赤になる沙耶。落ち着きをなくして、そわそわしだす。
それを見ていると、単純に可愛いというだけじゃなくて、悪戯心というか、ちょっかいをかけたくなる。
「……ねぇ、沙耶」
「なに?」
「……今も、私とえっちなことしたいって思ってる?」
告白をする時にキスやえっちなことをしたいといった沙耶。よく考えたらそうとう大胆なことを言っている。そのくせ、聞いてやると激しく動揺している。
「はっ、う……え、んと………うんって、言ったら、キス以上のこと、してくれる?」
「んー…とりあえず、いつも以上のキスくらいならいいよ」
どこまでかはわからないのでそう言うと、沙耶は耳まで真っ赤にして、目を伏せた。何も言わないけど、態度からして明白だ。私のキスを欲しがっている。
わかっているけど、言葉にさせたかった。きっと口にすれば、今よりもっと赤くなるんだろう。それが見たい。
「してほしい?」
「……ぅん」
「聞こえない。もうちょっとだけ、私にだけでいいから、聞こえるように言って」
「あ、明菜さんと、大人のキスが、したいです」
自分でも意地が悪いと思う。でもこうして泣きそうになりながら私を見ている真っ赤な沙耶はすごく可愛くて、だから沙耶が悪い。こんなに可愛いんだから、この顔を見るためなら少しくらい意地悪するのは仕方ないことだ。
「よくできました。いい子には、ご褒美をあげるね」
沙耶にキスをする。ご褒美なんて言ったけど、本当は私がしたかっただけだ。おねだりする沙耶が可愛くてしたくなった。沙耶も望んでるんだしいいでしょ。
「ん、んん」
唇をくっつけた瞬間にたまらなくて、すぐに舌をいれた。熱くて、ぞくぞくした。気持ちいい。なんだこれ。
「ん、はぁ、あ、よだれ」
「あ、はい」
気持ちよすぎて頭がぼーっとしながらも、長く続けると息が苦しくなるのでやめるとよだれが垂れた。
思わず、あ、と声を出すと間髪入れずに沙耶が私の唾を啜った。なんだいまの、自分から唾食べるとか馬鹿みたい。汚い。
ドキドキする。沙耶にもっと唾を飲ませたくなって、私は沙耶にキスをした。今度は上から若干覆い被さるようにして、私はわざと沙耶に唾液を流した。
「ん、こぼすな、よ」
「ふぁ、ふぁい」
いれすぎて、口を離した瞬間に私の口からよだれの橋ができたけど、沙耶は従順にそれすら飲み込んだ。その姿に何だかトイレに行きたくなった。
「あ、明菜さん」
「なに? 言ってごらん」
「…好きぃ」
ああ、もう、本当に
「…ばーか」
沙耶は馬鹿だ。私なんかのどこが好きなんだか。全然わからない。
ドキドキして、沙耶にもっと触れたいと思った。欲情してるなと思った。これが恋なのだろうか。よくわからない。沙耶のことをもっといじめたい。
そっと唇を合わせると沙耶は熱い息をもらす。
「沙耶」
「あ、明菜さん…」
うるんだ瞳で私を見つめる沙耶。すごくすごく可愛くて、もうこれが恋でいい気がした。
沙耶と恋人になって、ずっと一緒にいて、えっちなこともしたりして、そういうのもいい気がした。こんなに可愛い沙耶が私だけのものになるというなら、むしろそれはすごく良いことのように思えた。
「沙耶、」
好きだよ、恋人になろうか。と言おうとして、少し考える。でも本当にいいのかな?と頭の中でストップがかかる。
恋人になったら、どうなるだろう。
義理といえ家族だし、まして姉妹なわけで、隠さなきゃいけないだろう。
私も最初えっ?って思ったし、知られたら変に思われるかもしれない。ていうか生物的にはやっぱりおかしいし、絶対少数派だ。
それにもし別れたら? 私のどこが好かれてるのか全然わからないし、私が好きっていってもそのうちフラれるかも知れない。家族なのはやめられないし気まずすぎる。
「? あ、明菜さん?」
「……沙耶、寝ようか」
「え? あ、あの、あたし」
沙耶を抱きしめて、キスをする。軽く触れるだけのキスを何度か繰り返す。
「沙耶」
「は、はい…」
「今日はこれでお預け」
「そ、そんな」
「駄目。また今度、ね」
「……はい」
また、なんてあるのかな。あってほしいけど、何だか恐くもあった。
○
沙耶に告白しようと迷ってから、何だか私はおかしい。沙耶が可愛い。いやもちろん、最初から可愛かったけれど、今までより何だかきらきらしてるくらい可愛く見える。
無意識に沙耶を目でおって見つめてしまうし、その上、キスもしてないのにじっと見ているとドキドキしてくる。
いい加減、私も認めざるを得ないと思う。まだこれがそうだと自信はないけど、恋と十分に言えると思う。
沙耶が好きだし、抱きしめたい。キスしたい。ドキドキする。
「……沙耶」
「わっ、な、なに!?」
料理をしてる沙耶の後ろ姿を見ていると、後ろから抱きしめたくなって、でもそうして私の気持ちがばれたらどうしていけばいいのかわからなくて、我慢してお尻を撫でた。
柔らかい。うーん。いいなぁ、これ。癖になりそう。
「あ、明菜さぁん、ご飯つくれないよぅ」
「嫌?」
「い、いやではないけど…」
「じゃあ我慢して。料理の邪魔はしないから」
嫌がるように懇願する沙耶だけど、そんなふうにお尻を振っても私には余計触ってと言ってるようにしか見えない。
「うぅ、明菜さんのセクハラ」
「沙耶は私のこと好きなんでしょ?」
「う、うん」
「なら、ちょっとくらいいいでしょ?」
そう言いながらお尻を撫でると沙耶は諦めたのか赤い顔をしながら頷いた。
うー、でもこんなセクハラしてる場合じゃないよね、ほんと。沙耶のこと好きだけど、付き合っていいのかわからないし。
付き合わないなら、こういうことすべきじゃないかもしれない。でも、沙耶が好きすぎて触りたい。目の前に沙耶がいるとそれだけで意識が全部いっちゃって、どうすればいいのか考えられない。
「沙耶、卵焼き穴あいてるよ」
「わ、わかってるなら手をやめてよー」
「やだ」
○
今まで毎日更新を続けてましたが、しばらく休みます。具体的には三が日終わるまでは。休み中に完結まで書いてなんとか話をまとめようと思います。
読んでくださりありがとうございます。




