質問されるあたし
ついに告白してしまった。明菜さんは私に恋愛感情はまだないみたいだけど、キスしてくれたし、これは俄然期待が持てる。というかもはや確信!
明菜さんてば自分の感情もわからないとか幼い! でもそこがいい! あんなにカッコイイのに、恋愛には疎いとか可愛すぎる。
「じゃ、もうちょっと質問するから答えてね」
「どんとこい!」
明菜さんは何だかよくわからないけど、どこが好きかとか聞いてきた。恥ずかしいけど、それであたしの気持ちが伝わってくれるならいい。
「そもそも、なんで恋愛感情だと思ったの?」
「え……うーーん、普通の好きじゃなくて、こう……ドキドキするというか、近づきたいというか、一つになりたいというか」
「私を見てると発情するってこと?」
「あー……に、似てるかな」
全然ニュアンスは違うけど、まあ、最終的にはそういうことも望むし、ある意味普通の友達とかに対する
好きとの一番の違いだし肯定する。
「…なるほど」
あたしはものすごい恥ずかしいのに、明菜さんは平然と頷いた。うう、ひ、ひいてないよね?
「ところで私も沙耶も女同士だから、子孫はつくれないのになんで発情するの?」
「え、いや、うーん、ていうか別に子供がほしいとか関係なくて、単に明菜さんが好きだから、その、えっちな気持ちにもなるっていうか」
なに言ってるんだあたし。でもこういうこと言わないと、単に人として好きと思われたら嫌だ。恥ずかしいけど、本当のことだ。明菜さんが好きだ。好きだから、色んなことをしたい。
「ふむ……それって、私以外にはならないの?」
「ならない!」
「うーん……やっぱりよくわからないなぁ。例えば私と寝て、肉体関係ある姉妹じゃだめなの?」
「えーと、その関係が姉妹と言えるのかはともかく、嫌」
「なんで?」
「明菜さんを独り占めしたいから。姉妹じゃなくて、恋人として、私だけのもの明菜さんにしたいの」
答えると、急に明菜さんはあたしを抱きしめた。あまりに突然で明菜さんの匂いにつつまれて混乱しつつも、とりあえず抱きしめかえす。
うわー、明菜さんやっぱりあったかくて柔らかいー。胸が潰れてるけど痛くないのかな。
「生意気」
「え? な、何が?」
「もし恋人になっても、沙耶が私のものになるんだよ? 私をもの扱いとか、生意気」
「あ、そ、そういうつもりでは」
力を緩めた明菜さんがあたしを真正面から見つめてくるから、思わず顔をそらす。こんな距離だと、キスのこと思い出してしまう。
明菜さんは私の体に手をかけて、脅しているつもりだろうけど、私からしたらご褒美以外の何物でもない。
「こら、話の途中で目をそらすな。生意気」
「ひーん」
片手で顎、というか頬からかけての下顎全体をつかまれて無理やり正面をむかされる。
密着したままでただでさえドキドキしてるのに、こんな距離だと、ああ、キスしたい!
「あ、明菜さん!」
「なに?」
「き、キスしてください!」
「…だめ」
「ええっ、なんでですか!?」
もう何度もしてくれたじゃないですか! 明菜さんのけち!
「不満そうな顔しない。話聞いてた?」
「話?」
はて、なんの話してたってけ? 明菜さんへの欲望が漏れてしまったせいで前後の会話が曖昧だ。そもそも何で抱きしめられてるのかわからないけど、幸せだからいいや。
「沙耶が生意気ってこと。私のことを姉と思ってないとしても、年上なんだから。私のこと敬ってもいいんだよ?」
「えーっと、う、敬ってますよ?」
「本当に?」
「はい。だからキスさせてください」
「……」
あ、あれ、なんで離れ、あれ、え、なんでビニール紐で私の手を縛るの? ていうかなんでそんな紐あるの?
後ろ手に縛られた。さらに蹴り倒された。ベッドの上だからってひどい。せめてスカートでやってくれたらいいのに。
「あの、なんで?」
「ん? ああ、掃除の時、ビニール紐あると便利なんだよね」
いや、なんで机に都合よくあるか聞いてるんじゃなくてね。確かにそれも気になったけどね。
「何で縛られてるの?」
「いや、おしおきをしようと思って」
おしおき!? お、おしおきかぁ。
それで腕を拘束されてるのか。な、何だかドキドキしてきた。
「な、なにするの?」
「うーん、とりあえず、この部屋でだけでできるおしおきを考えようか」
なにするんだろう。ちょっと興奮して話を聞いてなかっただけなのに、とも思うけど、でもまあ二人きりだし、明菜さんのおしおきならいいか。えっちなおしおきとかだと色仕掛け兼ねられるからいいかも。
「とりあえず座るね」
「あ、うん」
って、え。なんで私の上に乗ってるの? 重いんだけど。ああ、でもあたしものってたしおあいこか。
ていうか明菜さんの重みだと思うと、なんというか、変な感じ。あー、今あたし明菜さん支えてるんだー、って感じだ。なに言ってるのか自分でもよくわからないけど。
「重い?」
「軽いよ」
「ほう。なかなか殊勝な心がけね」
重いんだけどね。でもいくら明菜さんがスタイルよくて、単純に体格的に重いだけでも、言われていい気はしないだろう。
……あれ、でもあたしは明菜さんになら重いって言われても全然気にならないなぁ。ていうかむしろ、あたしのこと受け止めてくれてる!って感じ。我ながら、明菜さんなら何でもいいんだなぁ。
「じゃあ、とりあえず起こしてあげます」
「ありがとうございます」
何だか知らないけど降りて起こしてくれた。もうちょっとのっててもよかったのに。
○
次回、この話の明菜視点です




